エスプレッソにはまりすぎてエスプレッソマシンを自作したエンジニアがその開発過程を公開中
エスプレッソは「細かく挽いた豆に100℃に近い湯を注ぎ、大気圧のほぼ9倍という非常に高い圧力をかける」ことで抽出することができます。ただし、高い圧力をかけるためには専用のエスプレッソマシンが必要となります。Metaのプロダクトデザインエンジニアであるエリック・チャン氏が、自作のエスプレッソマシンの開発過程をブログで公開しています。
Four Bar Design: DIY Espresso
https://www.fourbardesign.com/2020/10/diy-espresso.html
チャン氏の職場にはコーヒー愛好家が多く、エスプレッソマシンを含むコーヒーメーカーが多く設置されているとのこと。チャン氏は当初エスプレッソとコーヒーの違いを知らなかったそうですが、エスプレッソの淹(い)れ方を学ぶごとに抽出の基本や豆の種類、挽(ひ)き方を理解していったそうです。
しかし、新型コロナウイルスの流行によって在宅ワークが増えると、エスプレッソマシンが自宅にないため、「エスプレッソがどれだけ恋しかったかに気付いた」と、チャン氏。そこで、コーヒーの豆をひくグラインダーを友人から譲り受け、コーヒーショップで豆を買い、手持ちのザルと安いコーヒーフィルターを使ってコーヒーを淹れていたとのこと。
次にチャン氏が入手したのが、空気の力でコーヒーを淹れる「AeroPress」でした。AeroPressがどんなコーヒーメーカーなのかは以下の記事を読むとよくわかります。
空気の力で豆のうまさを最大限に引き出すというコーヒーマシン「AeroPress」を使ってコーヒーを淹れてみました - GIGAZINE
また、陶器製ドリッパーやメリタのコーヒーフィルターなど、道具を買いそろえることで、客人に出すことができるレベルのコーヒーを淹れられるようになったとのこと。しかし、いずれも淹れられるのはコーヒーであり、エスプレッソではありません。しかし、エスプレッソマシンは非常に高価であるため、チャン氏は自らエスプレッソマシンを自作することを思いついたそうです。
チャン氏は約9気圧という高圧を生み出すために、自作のエスプレッソマシンで圧縮ガスを利用する方法を考案しました。大きく長いレバーを押し下げるのではなく、小型で安価な炭酸ボンベを使い、エスプレッソを抽出するために必要な圧力を生成するというアイデアです。
しかし、チャン氏が通販で購入した部品と3Dプリンターで出力したキャップを組み立て、エスプレッソをさっそく入れてみたところ、最初は大失敗で終わってしまったとのこと。一応エスプレッソらしいものが抽出されたものの、飲んでみると単に濃いコーヒーというだけで、エスプレッソというほどではなかったそうです。つまり、十分な圧力がかからなかったと予想されます。
そこで、チャン氏は自作エスプレッソマシン第2号の製作に取り掛かるため、エスプレッソ用の豆粉とフィルターを受け止めるフィルターバスケットを25ドル(約3600円)で購入しました。
さらに、構造を再度見直し、フィルターバスケットを固定する器具には3Dプリンターではなく海外の業者に依頼してステンレス鋼から機械加工したものを取り寄せました。ステンレス鋼製の部品は全部でわずか102ドル(約1万5000円)とかなり安価で、チャン氏は「アメリカの業者であれば、少なくともこの4倍の料金がかかっていたことでしょう」と述べています。
何度も試作を繰り返し、チャン氏が設計したエスプレッソマシンが以下。コーヒーとフィルターと湯が入るフィルターバスケットは、キャップ(TOP CAP)とホルダー(HOLDER)で固定され、ネジ止めされています。キャップには炭酸ボンベと圧力計が装着されています。
強い圧力がかかっても部品が壊れないように、シミュレーションによる検証を重ねたとのこと。
キャップとホルダーは自分で3Dプリンターで出力。
組み立てて完成したエスプレッソマシンが以下。
エスプレッソマシンは強い圧力をかけるので、密閉性が重要になります。チャン氏が密閉性をチェックするために石けん水を入れて圧力をかけたところ、あらゆる場所から石けんの泡がぶくぶくとあふれてきたとのこと。そのため、チャン氏は部品の精度をもっと上げるため、再設計を余儀なくされたそうです。
何度もチェックを重ねて、ついに十分に密閉されたエスプレッソマシンが完成。
実際にチャン氏が自作のエスプレッソマシンでエスプレッソを淹れるところを以下のムービーで見ることができます。
DIY 3D Printed Espresso Machine - Workflow Demo - YouTube
フィルターバスケットからエスプレッソが抽出されるところはこんな感じ。1回の抽出で約2.6gの炭酸ガスが消費されるそうで、そのコストは1杯あたり0.15ドル(約22円)。
DIY Espresso - Slow Motion Extraction - YouTube
チャン氏は「結果にはかなり満足していますが、改善すべき点はまだたくさんあります」と述べており、圧力を加えるための炭酸ガスがエスプレッソに溶け込んで味にどのような影響を及ぼすかが不明であることや、炭酸ガスの消費量をもっと抑えることができるかどうかなど、改良すべき余地は残されていると論じています。
なお、チャン氏は将来的に自作エスプレッソマシンの3Dデータを公開し、必要な金型パーツも有償で頒布する予定だとしています。
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