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AIで診断の3年前に食道がんや胃がんを「予知」できる技術が登場


体重や既往歴など、特別な検査を必要としない基礎的な医療データを元に、診断の少なくとも3年以内にある種のがんを正確に予測できるAIツールの開発に成功したと、アメリカ・ミシガン大学の研究チームが発表しました。

Predicting Incident Adenocarcinoma of the Esophagus or Gastric Cardia Using Machine Learning of Electronic Health Records - Gastroenterology
https://doi.org/10.1053/j.gastro.2023.08.011

AI can predict certain forms of esophageal and stomach cancer | Michigan Medicine
https://www.michiganmedicine.org/health-lab/ai-can-predict-certain-forms-esophageal-and-stomach-cancer

「検診によってがんの前兆となる症状を早期発見できれば、患者はがんの予防手段を講じることができます。しかし、ある種のがんを発症する患者の多くは、そもそもがん検診を受けていません」と語るのは、ミシガン州にある退役軍人医療センターの研究者で、ミシガン大学医学部の教授でもあるジョエル・ルーベンスタイン氏です。

アメリカをはじめとする欧米諸国では食道がんや胃がんが急増しており、中でも食道腺がん(EAC)や食道から胃へつながる入り口に発生する胃噴門部線がん(GCA)はとりわけ致死率が高いがんです。


これらのがんは、胃酸が食道に逆流する胃食道逆流症などが原因となって発症するバレット食道が引き金となるケースが多いことから、検診によってこの症状を特定することが推奨されています。しかし、この診断は患者にも医療関係者にも浸透していないのが現状とのこと。

ルーベンスタイン氏は「私たちは、10年以上前にバレット食道の患者を特定するためのツールを開発しています。しかし、このツールは患者のヒップサイズやウエストサイズを測定する必要があり、これらの測定は日常的に行われるものではありません。しかも、医療者がこのツールを使うには、専用のウェブサイトを使って患者のリスクを計算しなければなりませんでした」と話しました。


そこで今回、ルーベンスタイン氏らの研究チームは、AIを用いてアメリカの退役軍人1000万人以上におけるEACとGCAの発生率に関するデータを分析し、医療情報からこれらのがんを特定するAIツール「K-ECAN(Kettles Esophageal and Cardia Adenocarcinoma predictioN tool)」を開発しました。

従来のがん診断ツールとは異なり、K-ECANは患者の体重や統計的な情報、過去の診断歴、日常的な検査結果など、電子カルテ(EHR)から容易に入手できるデータを用いて、EACとGCAのリスクを正確に特定します。


研究チームが実際にK-ECANの精度をテストしたところ、K-ECANは既存のガイドラインや以前検証されたことがある予測ツールより正確で、診断の少なくとも3年前にがんを正確に予測できたとのこと。しかも、K-ECANは電子カルテに組み込まれた自動化ツールとして機能するので、がんの特定がこれまでより容易になると期待されています。

ルーベンスタイン氏は「胸やけのような胃食道逆流症の症状は食道がんの重要な危険因子です。しかし、胃食道逆流症がある人の大半はEACやGCAを発症しませんし、このようながんの患者の半数は胃食道逆流症を経験したことがありません。ですから、胃食道逆流症の症状があるとないとにかかわらずがんのリスクが高い人を特定できるK-ECANは特に有用なのです」と話しました。

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in ソフトウェア, Posted by log1l_ks

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