サイエンス

50種類以上のがんを検出できる画期的な血液検査がいよいよ大規模テストの段階へ


血液検査でがんを診断する技術の開発を行うアメリカのスタートアップ・Grailは、2020年に「AIを用いて50種類以上のがんを検出できる血液検査」を開発したと発表しました。新たに行われた4000人以上を対象にしたテストでも、Grailの血液検査が良好な結果を収めたことが報告され、2021年の秋には14万人規模の大規模なテストも始まると報じられています。

Clinical validation of a targeted methylation-based multi-cancer early detection test using an independent validation set - Annals of Oncology
https://www.annalsofoncology.org/article/S0923-7534(21)02046-9/fulltext

Blood test that finds 50 types of cancer is accurate enough to be rolled out | Cancer | The Guardian
https://www.theguardian.com/society/2021/jun/25/blood-test-that-finds-50-types-of-cancer-is-accurate-enough-to-be-rolled-out


Grailは、がん細胞が免疫に破壊された際に血中へ流れ出すセルフリーDNAにおけるDNAメチル化のパターンに着目し、がんの有無を判別する血液検査手法を開発しました。2020年3月には、がん患者から採取した血液サンプルでAIを訓練し、乳がん・食道がん・胃がん・卵巣がん・肺がん・多発性骨髄腫・すい臓がんなど、50種類以上のがんを検出することができたと発表しています。

50種類以上のがんをAIによる新たな血液検査で簡単にスクリーニング検査できるとの研究結果 - GIGAZINE


新たに行われたテストでは、がんを持つ2823人の被験者と対照群となる1254人、合計4077人の被験者を対象に、Grailが開発した血液検査の精度が分析されました。被験者はアメリカに住む人々であり、いずれのグループも21歳~85歳の年齢層で構成されていました。また、平均年齢はがん患者のグループで62.6歳、対照群のグループで56.2歳となっており、がん患者のグループの方がわずかに年齢が高かったとのこと。

分析の結果、Grailの血液検査はがん患者全体で、平均51.5%の感度(真陽性率)でがんの存在を検出することがわかりました。また、対照群のグループでは99.5%の特異度(真陰性率)でがんではないと診断したとのことで、非がん患者をがんであると誤診する可能性が非常に低いことも明らかになりました。

感度はがんのステージによって変動し、ステージIでは16.8%、ステージIIでは40.4%、ステージIIIでは77.0%、ステージIVでは90.1%でした。さらに、「一般的なスクリーニング検査の手法がない固形腫瘍(食道がん・肝臓がん・すい臓がんなど)」の感度は65.6%であり、「一般的なスクリーニング検査の手法がある固形腫瘍(乳がん・大腸がん・子宮頸がん・前立腺がん)」の感度は33.7%、「血液がん(悪性リンパ腫・骨髄腫など)」の感度は55.1%でした。


論文の筆頭著者でありクリーブランド・クリニックのGlickman Urological and Kidney Instituteで所長を務めるエリック・クライン博士は、がんの早期発見によって治療が成功する可能性が高まり、がん患者の負担を軽減することができると主張。「これらのデータは、複数のがんを検出できる検査と既存のスクリーニング検査を併用することで、がんの発見方法や究極的には公衆衛生に大きな影響を与える可能性を示唆しています」と述べました。

今回のテストは既にがんであると診断された人々を対象に行われましたが、国民保健サービス(NHS)のがん臨床ディレクターであるピーター・ジョンソン博士は、「最新の研究は、『治療できる可能性が高い早期段階でがんの4分の3を検出する』というNHSの野心的な目標を達成するために、このような血液検査が役立つというさらなる証拠を提供します」とコメント。2021年の秋にも、NHSはGrailと共同で14万人もの被験者を対象にしたテストを行うとのことで、結果は2023年に報告される予定です。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
50種類以上のがんをAIによる新たな血液検査で簡単にスクリーニング検査できるとの研究結果 - GIGAZINE

20種類以上のがんを特定できる血液検査が開発される - GIGAZINE

血液からガンを見つける新会社「Grail」にゲイツ、ベゾスなどの著名人が出資 - GIGAZINE

胃がんや大腸がんを「症状が出る4年前」に発見する血液検査手法が開発される - GIGAZINE

がんの兆候は症状が出る数年以上前から遺伝子に現れることが判明、がんの早期発見につながる可能性あり - GIGAZINE

血中のがん細胞をレーザーで破壊する新しい治療法、がん転移を大幅に抑制する可能性 - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.