パンデミックによるロックダウンは野生動物の行動をどのように変えたのか?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが猛威を振るった2020年には、世界各地で外出や経済活動を制限する都市封鎖(ロックダウン)が実施されました。その影響は人間社会のみならず動物にも波及しており、飼い主がずっとそばにいるようになったことでペットの幸福度が向上したり、静まりかえった街で鳴く鳥の歌に変化が起きたりしたことが、これまでに報告されています。こうした変化が、野生で暮らす熊や鹿、象など幅広い動物にも起きていたことが、新しい研究により確かめられました。
Behavioral responses of terrestrial mammals to COVID-19 lockdowns | Science
https://doi.org/10.1126/science.abo6499
While humans were in strict lockdown, wild mammals roamed further – new research
https://theconversation.com/while-humans-were-in-strict-lockdown-wild-mammals-roamed-further-new-research-207351
COVID-19の感染拡大を食い止めるため、2020年には世界人口の半分以上に当たる44億人が厳しい制限下に置かれたと推測されており、歴史にも類を見ない世界的な社会活動の停止により「人類休止(Anthropause)」という造語まで作られました。商店や会社、学校が閉鎖されて人の姿が消えた街では、野生動物が我が物顔で通りを歩いており、その光景はSF映画「アイ・アム・レジェンド」のようだったと伝えられています。
ロックダウンされて人が消えた都市を野生動物が支配している光景が世界各地で目撃される - GIGAZINE
一方、ロックダウンを「人間が野生動物の行動に与える影響を学ぶ絶好の機会」だと考えた動物学者らは、2020年にCOVID-19バイオロギング・イニシアチブを設立し、ロックダウンの間に収集したさまざまな動物の行動の変化に関する情報を持ち寄りました。
動物の移動パターンは、人間や自動車などの影響を受ける可能性があり、通常は人と動物の行動の間にある密接な関係を分離することは不可能ですが、ロックダウンによりそれが可能になったと、イニシアチブのメンバーであるセント・アンドルーズ大学のロバート・パチェット氏は指摘しています。
そして、パチェット氏とオランダ・ラドバウド大学の生態学者であるマーリー・タッカー氏は、174人の科学者で構成された国際研究チームを率いて、パンテミック中に大型の陸生哺乳類の行動がどう変化したのかを分析しました。
研究チームが分析したデータには象、キリン、熊、鹿、クーガーを含む全43種、合計2300頭以上の個体のデータがプールされており、これにより2020年のロックダウン期間中の行動や移動パターンが1年前と比べてどう変化したかを調べることができました。
分析の結果、大型哺乳類が道路に近づく頻度はロックダウン期間中に36%増加したことがわかりました。また、1時間の移動量が平均12%減少したのに対し、10日間の移動距離は73%も長くなっていたことも判明しました。
パチェット氏は、動物が道路に近づくようになったのは、人間がいなくなったことで新しい地域を探索することができるようになったからではないかと考えています。
例えば、論文の共著者であるカリフォルニア大学のクリス・ウィルマーズ氏は別の研究で、通常は人間が住む地域を避ける慎重な動物であるクーガーが、ロックダウンが行われた2020年には例年に比べて市街地にかなり接近していたことがわかったと報告しています。
全体的な移動パターンには大きな変化がみられた一方、個々の反応はばらばらで、種によっても大きなばらつきがありました。これは、地域によってロックダウン政策が異なるからとも考えられますが、行動を変化させる能力が種によって異なるのが理由になっている可能性もあります。
パチェット氏は、今回の研究の成果について「これらの知見は、人間の行動が動物の行動に直接影響を与えていることを物語っており、大変重要です。この知識があれば、私たちは野生動物にいい影響を与えるような行動をとるよう習慣を変化させることができます。例えば、動物の移動に重要な場所での交通量を調整したり、夜行性の動物に配慮して国立公園の中では日中のみ自動車を走らせるようにしたりといったことができます」と述べました。
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