海底から高温の水が噴き出す「熱水噴出孔」の下にまったく未知の生態系が広がっていることが判明

人間はこれまでに地球上のさまざまな場所を探索してきましたが、依然として探索できていない場所も残されており、未発見の生物も数多く存在していると考えられています。新たに、海洋探査を行う非営利財団のシュミット海洋研究所が行った東太平洋の海底探査で、地熱で熱せられた水が噴出する「熱水噴出孔」の下に未知の生態系が広がっていることが判明しました。
Scientists Discover New Ecosystem Underneath Hydrothermal Vents - Schmidt Ocean Institute
https://schmidtocean.org/scientists-discover-new-ecosystem-underneath-hydrothermal-vents/

Life Has Been Found Beneath Hydrothermal Vents For The First Time | IFLScience
https://www.iflscience.com/life-has-been-found-beneath-hydrothermal-vents-for-the-first-time-70178
Scientists Find A Whole New Ecosystem Hiding Beneath Earth's Seafloor : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/scientists-find-a-whole-new-ecosystem-hiding-beneath-earths-seafloor
シュミット海洋研究所の調査船に乗り込んだオーストリア・アメリカ・ドイツ・オランダ・フランス・コスタリカ・スロベニアなどの国際研究チームは、中央アメリカ沖の東太平洋を探査する30日間の遠征調査を実施しました。海底探査の最中に、研究チームが水中ロボットで熱水噴出孔の地殻をひっくり返したところ、「熱水噴出孔の下」に存在する生態系を発見しました。
熱水噴出孔は火山活動が活発な海底で発見されている亀裂であり、地殻に入り込んでマグマによって加熱された海水が噴出しています。噴き出す熱水は時にセ氏数百度にも達することがありますが、水には重金属や硫化水素などの化学物質が豊富に含まれており、熱水噴出孔の周辺にはこれらを栄養源とする生態系が存在していることが知られています。研究者らは過去46年間にわたって熱水噴出孔や周辺に生息する微生物について調べてきましたが、熱水噴出孔の下を調べた試みはこれまでなかったそうです。
研究チームによると、熱水噴出孔の下は洞窟が存在しており、エネルギー源を太陽光ではなくミネラルに依存するチューブワームや巻き貝、化学合成細菌などが大量に生息していたとのこと。シュミット海洋研究所の事務局長を務めるJyotika Virmani氏は、「陸上では地下の空洞に、海洋では砂や泥の中に生息する動物がいることは古くから知られていましたが、私たちは初めて熱水噴出孔の下に生息する動物を探しました。ある生態系の下に隠された新たな生態系があるという実に驚くべき発見は、人間には信じられないような場所に生命が存在するという新たな証拠を提供します」と述べました。

さらに研究チームは、「熱水噴出孔で見つかるチューブワームは、地下を流れる海水を通って移動しているのではないか?」と考え、チューブワームが地下を移動するかどうかを調べる実験を行いました。研究チームがどのような実験を行ったのかは、以下の動画で説明されています。
Traveling through Vents | The Underworld of Hydrothermal Vents - Week 1 - YouTube

熱水噴出孔の周辺にはさまざまな生物が生息しています。

熱水噴出孔から噴き出す海水は、亀裂から地下空間に染み込んでマグマによって熱せられたものです。研究チームはこの地下を通る水路をチューブワームが移動するのかどうかを調べるため、実際の熱水噴出孔を利用した実験を行いました。

研究チームが考案した実験は「メッシュボックス染色ガジェット」というものです。

まずは、海底の一部分を掃除して動物を取り除き、その上にメッシュボックスを配置します。さらにメッシュボックスと海底の隙間をふさぎ、海底を移動した動物が中に入ってこれないようにします。

さらにメッシュボックスの外側を染色ボックスで覆い、内部に動物を染色する無毒の染色体を注入。

これにより、以前からこの領域にいた動物は染色されます。一方、地下にある熱水噴出孔の水路を通って新たにこの領域に入ってきた動物は、染色されていないので見分けが付くというわけです。

実験の結果、チューブワームは熱水の通り道を移動して新たな生息地に定着することが確認されました。チューブワームの幼体が熱水噴出孔の上部であまり見られないのは、地下にある水路で成長しているためである可能性があるとのこと。
シュミット海洋研究所の共同創設者であるウェンディ・シュミット氏は、「シュミット海洋研究所の各遠征での発見は、深海に何が存在するのかを知るために、海を完全に探索することの重要性を高めるものです。新しい生き物、風景、そしてまったく新しい生態系の発見は、私たちが海についてまだ発見していないこと、そしてまだ知らないあるいは理解していないものを保護することが、いかに重要なのかを強調しています」と述べました。研究チームは一連の調査結果について、今後数カ月以内に発表する予定です。
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