サイエンス

地球に近い小惑星に居住空間を作り上げるアイデアを研究者が提唱


月や火星への移住は人類が昔から抱いてきた夢の一つですが、新たに「小惑星」への移住が可能だとする論文が提出されました。著者によると、わずか41億ドル(約5900億円)という費用で、12年の月日をかければ完成するそうです。

Autonomous Restructuring of Asteroids into Rotating Space Stations
https://doi.org/10.48550/arXiv.2302.12353

A New Paper Shows How To Change An Asteroid Into A Space Habitat - In Just 12 Years - Universe Today
https://www.universetoday.com/162697/a-new-paper-shows-how-to-change-an-asteroid-into-a-space-habitat-in-just-12-years/

かつて航空機・防衛大手のロックウェル・コリンズで技術者として働いていたデビッド・ジェンセン氏は「小惑星移住計画」を提唱する論文を執筆し、移住先や移住の方法について「どこに」「どんなものを」「どのように」という3つの論点に分けて説明しています。

まず「どこに」という点について、ジェンセン氏は「小惑星が何でできているか」「地球からどれほどの近さなのか」「どれほど大きいのか」という点を考慮する必要があると指摘しています。こうした要素を基にジェンセン氏が候補としてあげたのが「アティラ」という小惑星です。


アティラは地球の軌道の内側を周回する小惑星で、直径はおよそ4.8kmほど。直径1kmの小さな小惑星を伴い、太陽を中心におよそ0.5~0.9天文単位の距離を約233日かけて周回しています。アティラが地球と最も接近するポイントにおける両天体間の距離(最小交差距離)はおよそ3080万kmで、これは地球から月までの距離の約80倍に相当します。

こうした小惑星に人を住まわせるためには、人が生活するのに適した居住空間が必要になります。提唱される居住空間の形はさまざまで、ダンベル型であったり、球体であったり、円柱であったり、はたまたトーラス(ドーナツ状の形)であったりと、これまでにいろいろな種類が考えられてきました。


ジェンセン氏いわく、居住空間の形を決める上で最も重要な検討事項のひとつは「向心力」を働かせること、つまり人工的に重力を作り上げることだといいます。しかし、向心力を働かせるためには居住空間を回転させる必要があります。こうした点からジェンセン氏は「トーラス」が最適だと考えており、アティラそのものを回転させることも視野に入れているとのこと。

こうした居住空間を構築するには、その分労働力や資源を確保する必要があります。この点において、ジェンセン氏は労働力として「ロボット」を使うこと、さらに材料は小惑星にある岩石を利用することを提案しています。

ジェンセン氏によれば、ひとつの基地と4台のクモ型ロボット、それから現地で3000台のクモ型ロボットを製造するのに十分な高度な電子機器を搭載した「シード」カプセル、合わせて8.6トンをアティラに送る必要があるとのこと。基本となるこれらの物資さえあれば、地球からの追加物資は必要ないそうです。


少なくとも理論上は、10億平方メートルの居住空間を、41億ドルで作り上げられるとのこと。ジェンセン氏によれば、この建設プロジェクトは最短で12年で完了するそうです。ただし、居住区に空気と水を満たし、適温に調節するなどの環境を構築するにはさらに時間がかかります。それでも、このようなプロジェクトとしては比較的短いスケジュールであり、ジェンセン氏は「完成すれば70万人以上の人口を支えることができる」との展望を示しています。

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in サイエンス, Posted by log1p_kr

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