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本当に殴っているようなパンチに見せるためアクションシーンはどのように工夫されているのか?


アクション映画の戦闘シーンや、恋愛ドラマで怒りにまかせて頬をビンタするシーンなど、実際には「当てるフリ」なのに勢いと迫力があって「痛そう」と思ってしまいます。このようなフェイクの攻撃がリアルな映像になる仕組みを、オンラインメディアのVoxがムービーで解説しています。

Why fake punches in movies look real - YouTube


Voxは「ミッション:インポッシブル/フォールアウト」でスタントコーディネーター兼アクションシーンの第二班監督を務めたウェイド・イーストウッド氏に、実際には肉体的接触のないアクションをリアルなアクションにするための手法を尋ねています。


イーストウッド氏によると、アクションシーンの撮影に入る前には、事前の準備とスタントチームによる事前の映像化を大量に行うそうです。


「アクションヴィズ」と呼ばれる事前のスタント映像は、多くの場合は箱で構成された安全なセットの中で、スタントマンが主役となって全てのアクションとカメラアングルを把握しながら撮影します。


実際の撮影では、メインの撮影班が俳優たちの演技シーンなどを撮影するため、アクション部分の撮影はすべて第二班が行うとのこと。


ムービーでは次に、実際のアクションシーンの作り方を解説しています。


「パンチ」で攻撃するシーンには、最高のパフォーマンスでパンチをくりだす「サイドA」がいます。


そして同時に、パンチを受けてみっともない反応をする「サイドB」も100%の力を発揮することで、アクションシーンが成立します。


これらの「アクションを重ねる」ということが、シンプルかつ効果的な手法の一つとなっています。パンチをくりだした拳とパンチを受ける顔が重なる位置で撮影し、拳と顔が重なったタイミングで「サイドB」がリアクションを取ることで、実際にヒットしたかのような映像になります。


また、「パンチの威力」もパンチをくりだす「サイドA」よりもパンチを受ける「サイドB」の動きが重要な影響を与えています。「サイドB」がほとんどリアクションしないと「弱いパンチ」のように見え、同じパンチの動作でも「サイドB」が吹き飛ばされて倒れるようなリアクションをすると、「強力なパンチ」としてパワーが伝わります。


このように「安全に倒れる」ためのスキルもアクションシーンの制作に重要です。


イーストウッド氏によると、前腕は肩よりも先に、肩は背中よりも先に、背中は体全体よりも先に、と順番に衝撃を少しずつ吸収していくそうです。そのため、スタントの落ち方によって前腕、肩、背中、体と5%ずつ衝撃を和らげるようにして接地します。


硬い床にたたきつけられたり、高い所から落下するようなアクションは、完成された映画で見るとヒヤリとするような緊張感があります。


しかし、撮影ではより接地しやすいセットとなっているため、スタントの活躍で安全に倒れることが可能。ただ、これでも時折失敗してケガをしてしまったり、あばら骨を骨折してしまうこともあるそうです。


そのようなスタントのケガを緩和するために、視聴者に気づかれないようにセットを工夫するケースもあります。以下の画像で紹介されているシーンでは、階段から転げ落ちる際に、硬いはずの階段が柔らかくゆがんでいるのがわかります。このように、床やコンクリートなどに似せた柔らかい素材を使って撮影することで、勢いよく倒れても安全な撮影をすることができます。


そして、撮影後の編集段階であるポストプロダクションに入ると、パンチが実際に当たっているように見せるためにさらに多くのトリックが使用されます。


そのままの映像だとパンチが当たっているようには見えないものでも、拳と顔が接触するはずのタイミングのフレームを切り取って前後を貼り付けるだけで、切り取られた部分を脳が勝手に補完するため、「パンチが当たって顔が動く」というシーンに錯覚します。


また、攻撃をくりだす手足を伸ばす方法を採用するケースもあります。以下の画像のシーンでは、点線で示されているのが俳優がくりだしたキックの本当の足先ですが、赤線のところまで編集によって足先が延長されています。同時に、スタントマンの位置も編集によって足先に近づけることで、より強いキックへのリアクションとなるように工夫されています。


そのほか、単純に「効果音」もアクションの印象に大きな影響を与えます。実際に攻撃がヒットするフレームがカットされているため、攻撃が空振りしたのかヒットしたのか無音だと脳が判断しにくい場合もありますが、空ぶった音、ヒットした音、ガードした音などによって、攻撃の結果や威力なども自然に伝わります。


最後に、「感情が賭け金となる」ことが良いアクションシーンに必要だとムービーでは語っています。


アベンジャーズ」シリーズのように多くのアクションシーンで感動を与える物語もあれば、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のようにたった一発のパンチで歴史の流れを変えるような構成もあります。イーストウッド氏は「心が躍るようなバトルには、なぜ戦っているのか、あるいはその戦いが何を意味しているのか、理由も理屈もないようなこともあります。それでも、正当な理由があり、旅や冒険を経て、そして少しの感情が入り込むことで、アクションシーンはエキサイティングになります」と語っています。

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in 動画,   映画, Posted by log1e_dh

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