ユネスコが「学校での電子機器やオンラインコンテンツの使用はもっと適切に検討されるべき」と呼びかけるレポートを発表

教育や文化の発展などを目的とする国際機関のユネスコが、教育現場におけるテクノロジーの適切な使用を呼びかけるレポートを発表しました。これを受けて、The Guardianなどの大手メディアは「ユネスコが学校でのスマートフォン使用を禁止するように呼びかけた」と報じていますが、こうした報道に対しては「単純化された不正確なもの」と指摘する声も上がっています。
Home - 2023 GEM Report
https://gem-report-2023.unesco.org/

UNESCO issues urgent call for appropriate use of technology in education | Global Education Monitoring Report
https://www.unesco.org/gem-report/en/articles/unesco-issues-urgent-call-appropriate-use-technology-education
ユネスコは2023年7月、教育現場におけるテクノロジーの使用について分析した「2023年グローバル教育モニタリングレポート」を発表しました。この中でユネスコは、教育現場におけるデジタルテクノロジーの採用によってデジタル文献へのアクセスが向上したり、一部の教育カリキュラムにプラスの効果がもたらされたりと、確かにテクノロジーが学習を改善するケースがあると認めています。しかし、教育におけるテクノロジー採用のメリットを示した研究の多くは業界の資金提供を受けており、証拠には公平性が欠けることも指摘しました。
ペルーでは適切な教育カリキュラムへの組み込みがないまま生徒にノートPCを配布したものの、学習は改善されなかったとのこと。さらに、アメリカの200万人以上の生徒を対象に行った分析では、学習がリモートのみで行われた場合、学習のギャップが拡大してしまうこともわかったとユネスコは述べています。教育現場でテクノロジーを活用するには生徒だけでなく教師側の準備も必要不可欠ですが、教師の情報技術スキルを開発する基準を持っている国は全体の約半数に過ぎないそうです。
また、オープンな教育リソースを備えた高等教育リポジトリの90%がヨーロッパと北米で作成されており、オープン教育リソース(OER)のグローバルライブラリに含まれるコンテンツの92%が英語であることも、公平性の点で問題となっているとユネスコは指摘。世界中では少なくとも5億人の子どもたちが、オンライン教育に必要な環境を持っていないとのことで、インターネットアクセスへの不平等が教育を受ける権利に支障を来す点も問題です。
ユネスコ事務局長のオードレ・アズレ氏は、「デジタル革命には計り知れない可能性が秘められていますが、社会における規制のあり方について警告する声が上がっているように、教育におけるデジタルの使用方法にも同様の注意が払われなくてはなりません。その利用は学習体験の向上や、生徒と教師の幸福のためでなくてはならず、不利益のためであってはなりません。学習者のニーズを第一に考え、教師をサポートするものであるべきです。オンライン上のつながりは、人間同士の交流に代わるものではありません」とコメントしました。

また、ユネスコは学校におけるスマートフォンをはじめとする電子機器の使用についても言及しています。ユネスコによると、世界14カ国における就学前教育から高等教育を調査した研究では、スマートフォンが近くにあるだけで生徒は集中力を失ってしまうことがわかったとのこと。アメリカの大学生を対象にした2018年の研究でも、スマートフォンやノートPC、タブレットなどの電子機器を使用することが許可されていただけで、学生の成績が下がってしまうことが示されました。
Smartphones in school? Only when they clearly support learning | UNESCO
https://www.unesco.org/en/articles/smartphones-school-only-when-they-clearly-support-learning

また、教育におけるデータプライバシーを明示的に保証している国はわずか16%に過ぎず、オンライン教育には子どもたちのプライバシーを侵害してしまうリスクもあるとユネスコは指摘しています。ユネスコによると、世界では4分の1の国で学校におけるスマートフォンの使用が禁止されているとのことです。
ユネスコのレポートを受けて、The Guardianなどの大手メディアは「ユネスコが学校でのスマートフォン使用を禁止するように呼びかけた」と報じています。しかし、こうした報道については、「スマートフォンのリスクのみに焦点を当て、過度に単純化している」という指摘の声も上がっています。
Banning cellphones in classrooms is not a quick fix for student well-being
https://theconversation.com/banning-cellphones-in-classrooms-is-not-a-quick-fix-for-student-well-being-210178

A global ban on smartphones in schools - do we need more evidence? - University of Birmingham
https://www.birmingham.ac.uk/news/2023/a-global-ban-on-smartphones-in-schools-do-we-need-more-evidence-1
カナダのウィンザー大学で教育学部准教授を務めるラナ・パーカー氏は、「ユネスコが微妙なニュアンスの提言を数多く出しているにもかかわらず、一部のメディアは『ユネスコが学校でのスマートフォン使用を禁止するよう求めている』と報じているだけです。そのため、各国政府が『学校でのスマートフォン使用の禁止』という最も単純であるものの効果的ではない解決策を、唯一無二で万能のアプローチとして求める危険性があります」と警告しています。
パーカー氏は、現代の若者はオンラインのつながりからメリットもデメリットも享受しており、単純にスマートフォンの使用を禁止するだけでは、複雑な現代の環境に対処できるないと指摘。「オンラインとの関わりに対処するための解決策は、若者が学校外のこれらのスペースにどのように関与しているか、そして若者のアイデンティティ形成のためにオンライン生活がどれほど普及しているかを無視してはなりません」と、パーカー氏は述べました。
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