AIの登場でコンピューターのUIは「第3のパラダイム」にシフトした
AI技術の進歩によって、音声や手の動きでコンピューターを操作したり、人間の行動をある程度予測した上で自動で処理を行ったりすることができるようになりました。人間とコンピューターの接点となるユーザーインターフェース(UI)のデザインを手がける企業のニールセン・ノーマン・グループ(NN/g)がAIの登場によってUIがどのように変化するのかについて解説しています。
AI: First New UI Paradigm in 60 Years
https://www.nngroup.com/articles/ai-paradigm/
NN/gは、UIのパラダイムは「1:バッチプロセス」「2:コマンドベースのインタラクション」「3:意図に基づいた結果の指定」の3段階に変化してきたと論じています。
1945年頃にコンピューターが誕生して以来、最初のパラダイムは「バッチ処理」でした。このパラダイムでは、ユーザーはコンピューターに実行させたいすべてのワークフローを指定します。当時の主流はカードに穴を開けてプログラミングを読み込ませるパンチカード方式で、入力してからデータセンターで処理を行いました。
UIの観点から見ると、このバッチ処理ではユーザーとコンピューターが直接やり取りをすることがありません。強いて言えばパンチカードが人とコンピューターを結ぶUIではありますが、パンチ機でパンチカードの穴を開けて、そのパンチカードをリーダーに通して読み込ませて初めてプログラムを実行できるようになります。その作業はユーザーとコンピューターのインタラクション(相互作用)とはほど遠く、本当にただの接点に過ぎません。ユーザビリティは最悪で、処理を実行して望ましい結果が得られるまで何度も調整を行い、最終結果を手にするまで数日かかることも珍しくありませんでした。
by Matthew Ratzloff
1964年頃になって、1台のメインフレームに複数のユーザーがアクセスするという「タイムシェアリング」の考え方が生まれたことで、「コマンドベースの相互作用」というパラダイムに移行しました。このパラダイムでは、ユーザーとコンピュータが一度に1つのコマンドを交互に実行することになります。このパラダイムは非常に強力で、それ以来、60年以上にわたってコンピューティングを支配してきた、とNN/gは述べています。
バッチ処理に比べ、コマンドベースのインタラクションには「各コマンドが実行された後、ユーザーはコマンドを修正することで目的に近づくことが可能になる」という明確な利点があります。最初から完成された入力を求められるパンチカード方式と異なり、コマンドであれば結果を見て調整することが可能になります。さらに、1984年にMacintoshが発売されて以来、コンピューターからのフィードバックを視覚的に得られるグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)がユーザーエクスペリエンス(UX)の世界を席巻してきました。
by Antonio Marín Segovia
そして、生成AIの登場によって、UIの第3パラダイムは「意図に基づく結果の指定」に変化しました。コマンドベースのインタラクションでは、ユーザーはコンピューターに「何をすべきか」を入力していましたが、第3のパラダイムでは「何の結果がほしいのか」を入力するのです。
「自分が言ったことではなく、自分が意図していることをやってください」というのは魅惑的なUIパラダイムだとNN/gは評価していますが、その一方で「制御の主導権をすべてコンピューターに委ねることは、結果に誤った情報が含まれやすいという欠点があります」と指摘し、AIシステムが高いユーザビリティを実現できるかどうかはわからないとしています。
NN/gは、「スクリーン上のものをクリックしたりタップしたりすることは、ユーザーインタラクションの直感的かつ本質的な側面であり、見過ごすわけにはいきません。そのため、AIが進歩しても従来のGUIは生き残るでしょう。将来のAIシステムは、GUIの要素を置く残しつつ、インテント型とコマンド型の両方の要素を組み合わせたハイブリッドなUIを持つことになるでしょう」と論じました。
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