ハードウェア

安価なゼンハイザーのヘッドホンを高級モデルのヘッドホンへとドライバー1本で改造した記録

by Philip Fibiger

ドイツの音響機器メーカーのゼンハイザーが販売していたヘッドホン「HD555」を「HD595」に改造した記録をブロガーのマイク・ボーシャン氏が公開しています。ボーシャン氏によると、199.95ドル(約2万8000円)のHD555を349.95ドル(約4万9000円)のHD595に改造するために必要な工具はドライバーだけだとされています。

Sennheiser HD 555 to HD 595 Mod – mike beauchamp
http://mikebeauchamp.com/misc/sennheiser-hd-555-to-hd-595-mod/


Sennheiser HD 555 to HD 595 Mod | Hacker News
https://news.ycombinator.com/item?id=36377875

大規模製造を行う業種では、ある価格帯に合わせるためにまったく新しい製品を設計するよりも、既存のハイエンド製品をダウングレードする方が結果的に安上がりになる場合があります。こうすることで、メーカーはハイエンド製品の特定の機能を省略しつつ既存の金型や部品、組み立てラインなどを流用することができます。


ボーシャン氏のブログを取り上げたソーシャルニュースサイト・Hacker Newsのスレッドへの書き込みによると、「差異のない製品の性能を意図的に制限したり、製品間の違いがないのに別のラベルを使用したりして、価格に違いを持たせることは『プロダクト・ビニング」と呼ばれています」とのこと。

ボーシャン氏自身が所有するHD555を分解した画像と音響機器コミュニティサイトのHead-Fiに掲載されたHD595の分解画像を比較した画像が以下。上のHD555と下のHD595の間にドライバーユニットの違いは確認できません。


振動板を比較すると、わずかなデザインの違いはあれど、HD555とHD595の大きな違いはありません。


一方でハウジングに着目すると、HD555の内側には長方形のスポンジのようなものが貼り付けられているのに対し、HD595では確認できません。ボーシャン氏によると、このスポンジによって外側に面した通気孔の約50%がふさがれているため、HD555とHD595では周波数特性がわずかに異なるとのこと。この点を除くと後は外観くらいしか違わないので、HD555をHD595に改造するためには分解してこのスポンジを取り除くだけでいいということになると、ボーシャン氏は指摘しています。


HD555の改造の方法としては、まず耳に当たるイヤーパッドの部分を引っ張って取り外します。その後ドライバーを使用してヘッドホンを開き、通気孔の背面に付着している黒いスポンジを取り除きます。スポンジを取り除いた後は、元どおりにヘッドホンを組み立て、イヤーパッドを装着したら完成です。ボーシャン氏は「イヤーパッドを取り外している間は、イヤーパッドやヘッドホンを清掃する良いタイミングです」と述べ、湿らせた布でヘッドホンを掃除することを推奨しています。

改造を終えたボーシャン氏によると、HD555とHD595の実際の音の違いはごくわずかですが、両者の違いは顕著とのこと。ボーシャン氏は「HD555に取り付けられたスポンジは、ヘッドホンの周波数特性をわずかに変化させ、HD555とHD595の2つのモデルにそれぞれ独自の音の特性と周波数特性を与えているようです」と推測。また「どちらのヘッドホンも良い音ですが、HD595は幅広い音域をよりフラットに再生ができます」と述べています。

by Lemsipmatt

ボーシャン氏は「ゼンハイザーはどの音域も強調しない、フラットな音を出すことができるヘッドホンにこそお金を使いたいと思う人が一定数存在することを認識しているので、HD555よりもHD595の方が高額になっているのだと思います」と語っています。

ボーシャン氏の元には「改造した際にHD595よりも高価なヘッドホンのドライバーを組み込んだのではないか」という疑念が多く集まりましたが、その後、ヘッドホンの話題を専門に扱うフォーラム・Head-FiのメンバーからHD555とHD595兼用のドライバーの画像が送信され、ボーシャン氏がスポンジの除去以外に手を加えていないことが明らかになりました。


またHacker Newsでは「改造を行うことで一見HD595と同じヘッドホンを作ることに成功したように見えますが、改造によってヘッドホン自体の品質が低下した可能性があります」との指摘や、「人間による聴覚的なチェック以外にも適切な周波数特性のテストを行った上で改造に成功したと報告すべきです」との指摘が残されています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
音響機器メーカー・ゼンハイザーがコンシューマー事業部門への出資を募集、部門売却も視野か - GIGAZINE

8ch入力でボイスチェンジャーやサウンドパッドも搭載したヤマハのオーディオミキサー「AG08」はライブ配信初心者にこそオススメの1台 - GIGAZINE

万能性と使いやすさを兼ね備えた「ロジクールG ASTRO A30」を実際に使ってみた - GIGAZINE

自分で修理可能なワイヤレスヘッドホン「Fairbuds XL Headphones」登場、大型ドライバー&ノイキャン搭載の本格モデル - GIGAZINE

ロジクールがグラフェン製ドライバーを搭載して前機種比で25g軽量化した「G PRO X 2 LIGHTSPEED ワイヤレス ゲーミング ヘッドセット」を発表 - GIGAZINE

in ハードウェア, Posted by log1r_ut

You can read the machine translated English article here.