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膨大なページ数を誇った往年のコンピューター専門誌「Computer Shopper」をデジタルスキャンして公開する試みが進行中


かつてアメリカで刊行されていたコンピューター専門雑誌「Computer Shopper」は、さまざまな製品レビューやコンピューター関連のニュースに加え、ありとあらゆるコンピューター関連部品の広告やBBSのリストなども掲載されていました。膨大なページ数を誇るComputer Shopperのアーカイブをスキャンするという壮大な試みに挑戦するジェイソン・スコット氏が、その意義や難しさについて自身のブログで説明しています。

Preparing for the Incoming Computer Shopper Tsunami « ASCII by Jason Scott
http://ascii.textfiles.com/archives/5543


Computer Shopperは1979年に刊行が開始されたコンピューター専門の月刊誌で、1980年代~90年代にかけてハードウェアやソフトウェア愛好家から強い人気を博しました。刊行当初こそ「楽しい小さなタブロイド紙」だったそうですが、やがて多くの人々が圧倒されるほどのページ数になり、時には1冊が800ページを超えることもあったとのこと。

さまざまなコンピューター専門誌がある中でComputer Shopperが際立っていたのが、ベンダーが個々の部品の最新価格表を載せた広告を掲載していた点です。コンデンサや電源、配線、スイッチ、フロッピーディスクなど、ありとあらゆるコンピューターに関連する価格がComputer Shopperには掲載されており、コアなユーザーにとって非常に有益だったとスコット氏は述べています。


また、巻末にはアメリカとカナダで運営されていたありとあらゆるBBSの連絡先が掲載されており、「オンライン版の電話帳」のような様相を呈していたとのこと。しかし、ウェブの普及によってさまざまな情報がインターネット上で手に入るようになると、印刷媒体のために情報伝達速度が劣るComputer Shopperの需要は減ってしまい、2009年には刊行終了となりました。


近年はさまざまな過去の印刷物がデジタルスキャンされて保存・公開される事例が増えていますが、Computer Shopperはその膨大なページ数と低品質の紙、通常のスキャナーに入りきらないページのサイズ、とじ目の部分であるのどの近くまで文字が印刷されているレイアウトなど、スキャンする上で障壁となる点が数多くあります。そのため、これまでComputer Shopperをデジタルスキャンした人はいなかったそうです。

スコット氏は2023年に、これまで誰一人としてComputer Shopperをデジタルスキャンしておらず、このままではComputer Shopperに掲載された情報が失われてしまうことについてインターネット上で愚痴をこぼしていたとのこと。その流れで、「もしComputer Shopperのある程度まとまったコレクションに偶然出会えたら、スキャンする方法を考える」と言ってしまったそうです。


すると、ちょうどいいタイミングでeBayに「200号近くに及ぶComputer Shopperのコレクション」を出品した人物が現れました。コレクションの総額は約3000ドル(約41万2000円)と決して安くはありませんでしたが、1号ごとに出品されるComputer Shopperは最大50ドル(約7000円)に達することもある一方で、このコレクションは1冊あたり13ドル(約1800円)とかなり安価でした。

スコット氏は自分で3000ドルを捻出するほどではなかったものの、「支援者から3000ドルの寄付が集まったらComputer Shopperのコレクションを落札してスキャンする」と発表したところ、わずか3時間で3000ドルが集まりました。


配達はオプションではなかったものの、数人のボランティアが箱詰めしたComputer Shopperを出品者からスコット氏の自宅まで輸送する役目を引き受け、無事に200号近いComputer Shopperがスコット氏の下に届いたとのこと。


また、タブロイド紙ほどのサイズの紙をスキャンできるスキャナーはかなり高額でしたが、3500ドル(約48万7000円)の富士通製業務用スキャナーを匿名の人物が寄付してくれたとのこと。スコット氏は、「私はスキャナーのためにクラウドファンディングをせずに済みました。この件について深く感謝しています」と述べています。

Computer Shopperのコレクションとプリンターを入手したスコット氏は、ついに雑誌を分解してデジタルスキャンする作業に取り組み始めました。スコット氏はウェブ上で公開されている「製本されている雑誌をスキャンするために分解する方法」についてのドキュメントを読み込み、ヒートガンで背表紙の接着剤を溶かしてページを慎重に引き剥がし、1枚ずつに分離しました。


実際にスキャンしてみたところ、Computer Shopperは非常に薄い紙を使用しているため、スキャンした際に裏面に印刷されたものまで写り込んでしまうことが判明。そのため、スコット氏はゲーム刊行物のスキャンをインターネット上にアップロードしている団体・Gaming Alexandriaと協力し、生のデータの可読性を向上させたバージョンも作ることにしたとのこと。

以下の画像は、実際にスコット氏がスキャンした生のデータです。表面だけでなく、裏面に印刷された線や文字までうっすらと見えているのが確認できます。


生のデータをGaming Alexandriaが処理した「読み取り可能バージョン」が以下。元の質感は失われているものの、OCRによる読み取りなどが可能になることで内容の調査が大幅に簡単になるとのこと。


そしてスコット氏とGaming Alexandriaは2023年4月に、インターネット上のあらゆる情報や過去に刊行された雑誌を保存・公開しているインターネットアーカイブで、Computer Shopperの1986年2月号を公開しました。

Computer Shopper February 1986 : Computer Shopper : Free Download, Borrow, and Streaming : Internet Archive
https://archive.org/details/computer-shopper-february-1986/Computer%20Shopper_February_1986_Aesthetic


1冊数百ページに及ぶComputer Shopperを分解してスキャンするには膨大な時間がかかり、スコット氏は今後も長い時間をこのプロジェクトに費やすこととなります。そのため、自身の作業がより有意義なものとなるように、過去のComputer Shopperに興味がある人物がこのプロジェクトに気づき、内容を調査して楽しめるように広めてほしいと述べています。

なお、スコット氏の手元にあるComputer Shopperには抜けた号がいくつかあるそうで、もしスコット氏に寄付または販売するつもりがあるのであれば、メールアドレス「[email protected]」に連絡してほしいとのこと。スコット氏が探している号は以下の通りです。

・1983年以前の全号
・1984年の1月号、10月号、11月号
・1985年の10月号
・1986年の12月号
・1988年の6月号、11月号
・1989年の4月号
・1994年の4月号、5月号、8月号、11月号
・1995年の2月号、3月号
・1996年の4月号、5月号、6月号
・1997年の7月号、9月号
・1998年の1月号、5月号
・1999年の4月号、7月号、8月号

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in メモ, Posted by log1h_ik

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