サイエンス

線路の間に太陽光パネルを敷く計画をスイスのスタートアップがスタート


線路の間に太陽光パネルを設置するシステムを開発したスイスのスタートアップであるSun-Waysが、スイス連邦運輸省の許可を得て、長さ約42mの線路の間に太陽光パネルを敷き詰める計画をスタートさせています。

Switzerland is installing solar panels in train tracks | TechSpot
https://www.techspot.com/news/98944-switzerland-installing-solar-panels-gap-between-train-tracks.html

Quando il solare corre lungo i binari ferroviari - SWI swissinfo.ch
https://www.swissinfo.ch/ita/economia/quando-il-solare-corre-lungo-i-binari-ferroviari/48276616

Swiss startup makes first attempt to deploy solar on railways – pv magazine International
https://www.pv-magazine.com/2023/01/13/swiss-startup-makes-first-attempt-to-deploy-solar-on-railways/

温室効果ガスの排出削減の目的から、近年では太陽光や風力、水力といった再生可能エネルギーによる発電の普及が進んでいます。しかし、太陽光発電においては、太陽光パネルを設置するための物理的スペースや環境への影響といった問題があり、完全な普及にはさまざまな障害を抱えています。


そこで、スイスを拠点とするスタートアップ「Sun-Ways」が、線路間に着脱式の太陽光パネルを敷き詰める計画を検討しています。

Sun-Waysによる太陽光パネル敷設計画は、これまでに同様の技術を発表したイタリアやイギリスの企業と異なり、大型の太陽光パネルを使用しています。また、Sun-Waysの計画では、太陽光パネルの設置のプロセスとして、人間の作業員が手作業で設置するのではなく、特別な列車が線路上でパネルを展開して設置を行います。太陽光パネルの設置には、スイスの鉄道線路管理を行う「Scheuchzer」が開発した特別な貨物列車を使用します。


以下はSun-Waysによる太陽光パネルの設置のデモ動画です。パネルを敷設するための特別な工具を取り付けた列車を走行させ、まるでカーペットのように設置した太陽光パネルをピストン機構でレールに固定している様子を見ることができます。

Switzerland set to roll out carpet-like solar panels between railway tracks | SWNS - YouTube


また、Sun-waysによると将来的には太陽光パネルを保管する車両と、パネルの設置を行う2両編成の車両を走行させる予定とのこと。人間の作業員を用いないことで、太陽光パネルの設置が迅速かつ安価になります。また、鉄道会社が線路の定期的な保守や管理を行う場合や、太陽光パネルの修理を行う場合などに、一時的に太陽光パネルを撤去することが可能です。

スイスの連邦運輸省から敷設の許可を得たSun-Waysは、2023年5月からビュット駅近くの線路に太陽光パネルを設置する導入試験を開始しました。Sun-Waysによると、2023年秋までに完了するこの試験は、56万ドル(約7800万円)をかけて行われ、ヌーシャテル近郊の総距離140フィート(約42m)の線路の間に60枚の太陽光パネルを敷設する予定です。


また、この試験で発電された電力はすべて地元の家庭に供給されますが、将来的には発電した電力の一部を列車の走行に利用する事も可能です。Sun-Waysの共同設立者であるバティスト・ダニヒェルト氏は「約5000kmにも及ぶスイスの鉄道網全体に太陽光パネルを設置すれば、年間で最大1テラワットものエネルギーを生み出すことができ、スイス国内で使用される電力の約2%を賄うことが理論上可能です」と述べています。

再生可能エネルギーの普及を促進させるこのプロジェクトに対して、肯定的な意見もある一方、一部の有識者は慎重な反応を示しています。クリーンエネルギー推進団体「Freeing Energy」の創設者であるビル・ナッシー氏は「このプロジェクトは、列車がまき散らす石や砂、部品といった破片からの保護や、太陽光パネル間の距離などの問題を解決しない限り、成功することは難しいでしょう」と指摘しています。

また、国際鉄道連合は「太陽光パネルに反射した光が列車の運転を妨げる可能性がある」「豪雪地帯では発電が難しく、お金の無駄になる可能性がある」「レールが振動することで、パネルに微小なひび割れや破損、ホコリが付着する可能性がある」と言った懸念点を示しています。


しかしダニヒェルト氏はこれらの問題は解決可能だとして「ヨーロッパ全体で約26万km、世界には100万kmを超える鉄道網が存在します。そのうち半分に我々の太陽光パネルを敷設することができるはずです」と述べ、スイス国内にとどまらない、世界中への展開を示唆しています。

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in サイエンス,   動画, Posted by log1r_ut

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