サイエンス

世界初の「木製のトランジスタ」が開発される


スウェーデンのリンショーピング大学とスウェーデン王立工科大学(KTH)の研究者が、木材を組み合わせることで継続的に動作可能なトランジスタを作ることに世界で初めて成功したと発表しました。

Electrical current modulation in wood electrochemical transistor | PNAS
https://doi.org/10.1073/pnas.2218380120


The world’s first wood transistor - Linköping University
https://liu.se/en/news-item/varldens-forsta-tratransistor

トランジスタは電流を制御したり増幅したりする電子部品で、トランジスタを組み合わせることで論理回路を構築し、さまざまな計算を行うコンピューターを作ることができます。通常、トランジスタはシリコン結晶やゲルマニウムなど、電気を通す「導体」と電気を通さない「絶縁体」の中間の性質を備えた「半導体」で作られています。

リンショーピング大学とKTHの研究者は、3枚のバルサ材を十字架のように組み合わせることでトランジスタを開発したと発表しました。このバルサ材はリグニンという生体高分子を除去されており、さらにPEDOT:PSS(ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸分散体)と呼ばれる導電性ポリマーに浸されているのが特徴。長いセルロース繊維と導電性ポリマーが組み合わさることで、木材でありながら最大69S/mの導電性を得ることに成功しています。


以下が木製トランジスタの構成部品。


木材を使ってトランジスタを作るという試みはこれまでにも行われてきたそうですが、イオン輸送のみを調節可能で、イオンがなくなったら機能しなくなってしまったとのこと。しかし、今回の研究で開発された木製トランジスタは劣化することなく、継続的に電気の流れを制御することが可能です。

実際にこの木製トランジスタを使って電源のオン・オフを切り替える実験を行ったところ、オフにするのに1秒、オンにするのに5秒かかったものの、一定の出力レベルで継続的に機能することがわかったそうです。


現代においてトランジスタはナノメートルサイズにまで小さくなっており、1秒に何十億回もオン・オフを切り替えることができるほどに高性能なものとなっています。そのため、もちろんこの木製のトランジスタは即座に半導体業界に応用できるものではなく、革命を起こすようなものでもありません。

リンショーピング大学のIsak Enquist上級准教授は「私たちは、特定の用途を想定して木製トランジスタを作ったわけではありません。作ることができたから作ったのです。これは基礎研究であり、可能であることを示したもので、将来応用につながるようなさらなる研究のきっかけになることを願っています」とコメントしています。

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in ハードウェア,   サイエンス, Posted by log1i_yk

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