サイエンス

人はTwitter上で「怒り」を過剰に読み取りやすい、ツイートの投稿者は読み手が思っているほど怒っていない可能性


TwitterなどのSNSではネガティブなコメントの方が注目されやすいことが知られており、実際にTwitterのタイムラインを見て「いつも誰かが何かに怒っているな」と感じた経験がある人も多いはず。ところが、ノースウェスタン大学のケロッグ経営大学院でマネジメントや管理の助教を務めるウィリアム・ブレイディ氏らの研究チームは、「人はTwitterに書き込んだ相手の『怒り』を過大評価する傾向があり、実際はそれほど怒っていないのに怒っていると勘違いしている可能性がある」という研究結果を発表しました。

Overperception of moral outrage in online social networks inflates beliefs about intergroup hostility | Nature Human Behaviour
https://doi.org/10.1038/s41562-023-01582-0


Are People on Social Media Actually That Outraged?
https://insight.kellogg.northwestern.edu/article/social-media-twitter-outrage

ブレイディ氏らの研究チームは、SNSにおいて読み手が感じる怒りと実際に投稿者が感じている怒りの差について調べるため、機械学習を使用してTwitterに投稿されたツイートをリアルタイムで分析しました。そして、アメリカの政治について言及したツイートを特定し、投稿から15分以内にダイレクトメッセージで投稿者と連絡を取り、当該ツイートを書いた時にどれほどの怒りまたは幸せを感じていたかを聞き取ったとのこと。


次に、投稿者の怒りの程度がわかっているツイートを約650人の被験者に見てもらい、「投稿した人がどれほどの怒りまたは幸せを感じていたのか」を評価してもらいました。また、被験者はアメリカの政治について学ぶ目的でソーシャルメディアを使う頻度についても報告しました。

これらのデータを分析したところ、ツイートを見た被験者は投稿者が実際に報告したものより、ツイートから感じる怒りを大きく評価する傾向がみられました。興味深いことに、投稿者の幸福度は過大評価されない傾向があったとのことで、否定的な感情の方が過大評価されやすかったとのこと。また、怒りを過大評価する傾向は、ソーシャルメディアを通じて政治について学ぶことが多い被験者の間で最も強いこともわかりました。

ブレイディ氏は、「この相関関係は、ソーシャルメディアに多くの時間を費やすと人々がどのように自分を表現し、どのように感じるかについての期待を形成することで説明できます」「一度これらの期待を形成すると、次に暴言と受け取れるものを見た時の判断に影響を与えることになります」と述べています。つまり、ソーシャルメディアをよく使う人は「きっと人々はこのトピックについて怒っているだろう」という期待を形成し、それに関連する投稿を見た時に投稿者の怒りを過大評価してしまうというわけです。


さらに研究チームは、個々の投稿やフィードだけでなく「プラットフォーム全体」の怒りの認識についても調べるため、最初の実験で用いたツイートを使って2種類のフィードを再現しました。2つのフィードは投稿者が報告した怒りの程度において同等でしたが、一方のフィードは被験者がより強い怒りを感じ取った「高過剰認識フィード」で、もう一方のフィードは被験者が感じ取った怒りが少ない「低過剰認識フィード」でした。

そして、新たに募集した600人の被験者に対してこれらのフィードをランダムで見せて、フィードおよびプラットフォーム全体のメンバーがどれほど怒っているかを1~7の7段階で評価するよう指示しました。

実験の結果、高過剰認識フィードを見せられた被験者はプラットフォーム全体の怒りを平均で「5.82」と評価し、低過剰認識フィードを見せられた被験者は平均で「3.53」と評価しました。高過剰認識フィードを見た被験者は、プラットフォーム全体の怒りを評価する際に「最も怒っているように見えるツイート」に大きく依存しており、特に扇動的なツイートがプラットフォーム全体の認識に影響することが示唆されたとのことです。


また、1200人の新しい被験者を対象とした別の実験では、前の実験で用いた2つのフィードのうち1つを被験者に見せた後、5つの「投稿者が強い怒りを持っていたツイート」と、5つの「投稿者が感情的に中立だったツイート」を見せました。被験者は、これら10個のツイートが先に見たプラットフォームにおいてどれほど社会的に適切なのか、そしてプラットフォームがどれほど二極化しているのかを評価しました。

高過剰認識フィードを見た被験者は、高レベルの怒りを表現するツイートを「中立的なツイートよりも適切」なものだと判断し、プラットフォームが政治的に二極化している傾向が強いと回答する傾向がありました。

ブレイディ氏は、「人々はソーシャルネットワークを実際よりも偏ったものとして見ています。規範は集団行動の強力な予測因子であることがわかっているため、これは重要です」「怒りが過剰に認識されたり、アルゴリズムによって過剰に表現されたりすると、人々は『怒りを表現するという規範』に従う傾向が強くなる可能性があると示唆されています」と述べています。

たとえツイートの投稿者らが実際にはそれほど怒っていなかったとしても、読み手はツイートからより強い怒りを感じ取る傾向があります。その結果、「この場所では怒りを表現した方が適切だ」と認識し、その規範に従う形で自らも怒りを表現してしまう可能性があるというわけです。

ソーシャルメディア上における怒りの過大評価を解決するには、プラットフォームの設計や表示の優先度を変える必要があるかもしれません。また、ブレイディ氏は一般ユーザーがソーシャルメディアの仕組み、そして偏見や誤解を理解することが重要だと考えています。ブレイディ氏は、自分のフィードに表示されるコンテンツが必ずしもソーシャルネットワークを代表するものとは限らず、画面の向こうの人々は自分が思っているほど怒っていない可能性があると指摘しました。

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in ネットサービス,   サイエンス, Posted by log1h_ik

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