サイエンス

「集中力を失う」ことが学習において重要かもしれないという研究結果


物事を学習したりタスクを遂行したりする上で「集中力」は重要であり、集中力を保つためのさまざまな方法が考案されています。ところが、学習において集中力を失うことは必ずしも悪いことばかりではなく、時には集中力を失うことが学習を後押しする可能性があるという研究結果が発表されました。

Pay attention and you might miss it: Greater learning during attentional lapses | SpringerLink
https://doi.org/10.3758/s13423-022-02226-6

Losing Focus May Actually Boost Learning, Study Finds : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/losing-focus-may-actually-boost-learning-study-finds

学習やタスクの実行においては、対象に深く没頭するフロー状態に入ることが重要ということがわかっていますが、創造的な活動においては集中力をそらすことも必要だという声もあります。いくつかの研究では、衝動性が高く認知的制御能力が低い人々が、「無視するように」と指示された一見すると無関係な情報同士の関係を学ぶ能力に優れていることが示されています。

そこで、マサチューセッツ工科大学(MIT)の認知神経科学者であるアレクサンドラ・デッカー氏らの研究チームは、集中力を失うことが学習にメリットをもたらすのかどうかを調べるために実験を行いました。

研究チームは53人の大学生を対象に、コンピューターに表示された複数の記号のうち両端にあるもの(フランカー)を無視し、中央に表示された記号や数字(ターゲット)のみに注目して分類するフランカー課題というタスクを行わせました。そして、タスクに取り組んでいる学生の反応時間の変動を記録し、どのタイミングで集中力が失われたのかを測定しました。実はこのタスクにおいて、注目するべきターゲットと気をそらすために配置されたフランカーには、隠された規則性があったとのこと。


実験結果を分析した結果、タスクの最中に集中力を失った人々は実際のところより速く、より正確な反応を示したことが判明しました。これは、集中力を失ったことでターゲットの周囲にあるフランカーに注意が向き、隠された規則性を学ぶことができたためとみられています。研究チームは論文で、「ターゲットとフランカーのペアを最も多く学習した人は、学習量の少ない人に比べ、より頻繁に注意力が低い『ゾーンから外れた』状態になりました」と述べています。

デッカー氏はTwitterで、「私たちの研究結果は、少し集中力を失うことは時に良いことかもしれないと示唆しています。しかし、集中している時間と集中していない時間を切り替えることが、全体的には最善かもしれません」「集中することで目標を絞り込むことができますが、焦点を失うと注意の範囲が広がり、関連性の低い情報を取り入れることができます。これにより、環境における規則性を学習したり、遠く離れたアイデアや概念を統合したりすることができます」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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