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結核を患いながら裁判所命令に違反して1年以上治療も隔離も拒否し続けた女性がついに拘束される可能性


結核はせき・たん・発熱・呼吸困難といった症状を引き起こす感染症であり、世界中で年間約1000万人が発病し、約160万人が死亡しています。結核は患者のせきなどで飛び散った細菌を通じて空気感染するため、患者には隔離措置が求められることがありますが、アメリカに住む女性は結核を患いながら1年以上にわたり裁判所の治療・隔離命令に違反し続け、ついに拘束される目前になったことが報じられました。

Pierce County TB patient given court order in January 2022 | Tacoma News Tribune
https://www.thenewstribune.com/article272052557.html

US woman has walked around with untreated TB for over a year, now faces jail | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2023/02/us-woman-has-walked-around-with-untreated-tb-for-over-a-year-now-faces-jail/

結核といえば過去の病気というイメージを持つ人もいるかもしれませんが、記事作成時点でも全世界で年間約160万人が死亡する危険な感染症であり、薬剤耐性を持った結核菌の発生も深刻な問題となっています。日本でも2021年だけで1万1519人が新規患者として登録され、1884人が死亡したとされており、アメリカでも2021年には約600人の死亡例が確認されています。

結核は無治療のままでは死亡率が高く、治療にも長い期間が必要です。合併症がない場合でも複数の抗生物質を4カ月~6カ月服用し続ける必要があり、薬剤耐性結核菌の場合は最大20カ月の治療が必要なケースもあるそうです。適切な治療を受ければ数週間で他人に感染させる危険性がなくなり、完治させることができますが、一部の患者は治療や感染力がなくなるまでの隔離を拒否することがあるとのこと。

2023年1月30日(月)、アメリカ・ワシントン州のタコマ-ピアース郡保健局(TPCHD)は「結核の治療や隔離を命じた複数の裁判所命令を拒否し続けた結核患者の女性を監視している」と発表しました。TPCHDの感染症部門でディレクターを務めるナイジェル・ターナー氏は地元紙であるニュース・トリビューンの取材に、「私たちは通常、このようなケースを発表しません。今回のケースではいくつかの問い合わせを受けたため、ケースについての文脈を提供するために情報を共有し、可能な限り透明性を保つことにしました」と述べています。


TPCHDは公衆衛生を保護するために、女性を治療・隔離しようと裁判所を通じて命令してきました。2022年1月26日、女性に対して自宅にとどまって隔離を指示する最初の裁判所命令が下され、結核の薬剤治療を提供しましたが、女性は隔離や治療に従わなかったとのこと。その後も2月14日・2月24日・3月24日・4月19日・5月17日・6月28日・7月27日・8月25日・9月27日・10月21日・11月18日・12月16日に命令が下されましたが、いずれの命令にも違反し続けており、結核の症状が進行したまま生活し続けているそうです。

そして2023年1月、女性は他人が運転する自動車に乗っていた時に事故に遭い、翌日に胸の痛みを訴えて救急科を受診しました。女性は医師に対して自分が結核であると伝えなかったため、診察に当たった医療関係者も危険にさらされました。また、X線写真で捉えられた肺の状態は、女性が結核であると知らない医師らが「肺がんではないか」と疑うほどひどかったそうで、結核の症状はかなり進行していたとされています。さらに、女性は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査でも陽性であり、隔離措置に従っていないことが強く示唆されたとのこと。


「結核であるにもかかわらず他人が運転する車に乗り、長時間同じ空間に居続けた」「隔離措置命令に従わなかった」といった点を問題視したTPCHDは、2023年1月11日にこれらの点についての補足請願書を裁判所に提出。そして1月20日に発行された裁判所命令では、女性が命令に従わなかった場合、「電子的な自宅監視やピアース郡刑務所での拘留、その他裁判所が発する合法的な命令によるさらなる措置」が命じられる可能性があると記されました。

保健局は公衆衛生上の危険がある患者に対し、強制力を持った裁判所命令を出す法的権限を有しているとのこと。TPCHDのメディア部門代表のケニー・ヴィア氏は、「非常にまれなケースですが、その人が他人を危険にさらさないようにするため、今回のような措置をとらなければなりません」「裁判所命令の一環として、確実に服薬させるために必要に応じて地元の法執行機関に支援を要請することがあります。このような措置は非常にまれであり、過去20年間では3件のケースでのみ法執行機関に支援を要請しました」と述べました。


ターナー氏はニュース・トリビューンに対し、感染症部門はあくまで刑務所での拘留を「最後の手段」と見なしていると主張。「私たちは誰かの自由を制限することと、コミュニティの健康を守ることのバランスを評価しています。また、その人が応じる猶予があることを確認し、誰かを拘留する必要がないよう、さまざまな選択肢を試したいと思っています」「強制的な拘留は私たちが取る最後の選択肢であり、軽々しく行うべきではありません。しかし、公衆に対するリスクがある場合、時にはそれが必要になることもあります」とコメントしています。

なお、ニュース・トリビューンは患者の弁護士と連絡を取り、患者に言語的な障壁や認知障害といった神経学的問題があるかどうかを尋ねましたが、弁護士はコメントを拒否したとのこと。ターナー氏も個別の事例についてコメントすることは避けましたが、「患者が薬を服用する上で課題を抱えているのであれば、できるだけ簡単に薬を飲めるよう対処するのは通常の慣行です。もちろん、言語の問題がある場合は通訳を手配して、結核に対応する際の問題にならないようにします」と述べました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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