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世界最大の仮想通貨取引所「Binance」は不透明な運営を続けており財務情報や本拠地をひた隠しにしてきたことがロイターの分析で明らかに


世界最大の仮想通貨取引所である「Binance」に対する不信感が高まっており、ユーザーによるBinanceからの資金引き出しが急増していることが報じられています。これを受け、Binanceは自社の財務状況が堅実なものであるとアピールしていますが、ロイターが独自に調査を行ったところ、Binanceは財務情報や本拠地といった重要な情報をひた隠しにしてきたことが明らかになっています。

Special Report: Binance's books are a black box, filings show, as it tries to rally confidence | Reuters
https://www.reuters.com/technology/binances-books-are-black-box-filings-show-crypto-giant-tries-rally-confidence-2022-12-19/

ロイターの調査によると、Binanceはメイン取引所である「Binance.com」がどこに拠点を置いているかを明言することを避けており、他にも収益・利益・手元資金といった基本的な財務情報の開示も行っていないそうです。さらに、Binanceは独自に仮想通貨を保有していますが、これが貸借対照表上でどのような役割を担っているかについても明らかにしていません。他にも、Binanceは顧客の暗号資産を借入資金として取引を行っているものの、それがどの程度のリスクになっているのかや、出金に必要な準備金の全容などについても明らかにしていなないとロイターは指摘しています。


なお、Binanceはナスダックに上場しているアメリカの競合企業とは異なり、公開企業ではありません。そのため詳細な財務諸表を公開することは義務付けられていません。また、業界データによると、Binanceは2018年以降に外部資本を調達していないため、これ以降に外部の投資家と財務情報を共有する必要もなかったそうです。


加えて、Binanceは積極的に会社に関する情報を隠してきたとロイターは指摘しています。ロイターがBinanceの元従業員、アドバイザー、仕事仲間にインタビューを実施したところ、同社のチャンポン・ジャオCEOはアメリカで仮想通貨取引所を設立するに際して、「Binanceの主要取引所を規制当局の監視から『隔離』する」という側近たちの計画を承認していたそうです。ただし、ジャオCEOはこの計画への同意を否定しています。

そんな謎に包まれたBinanceの帳簿を調べるために、ロイターはBinanceが仮想通貨取引ライセンスを所有している14の地域で提出した書類を調査しました。なお、Binanceが取引ライセンスを所有しているのは、アメリカの他、EUの複数の国、ドバイ、カナダなどです。Binanceは14の地域で自社の財務情報を含む書類を提出していますが、これらの書類にはBinanceのメイン取引所である「Binance.com」にどれだけの資金が流れているかなどの重要な情報はほとんど記載されておらず、各国に設置された取引所の中には「ほとんど取引が行われていない取引所」もあったことが判明しています。

これについて、過去に規制当局で働いていたという業界の有識者や、Binanceの元幹部は「これらのローカルビジネスは規制されていない主要取引所のための粉飾決済のようなもの」と表現しています。アメリカ証券取引委員会のインターネット執行部で主任を務めたことがあるジョン・リード・スターク氏は、Binanceの運営を「FTXよりもさらに不透明」と指摘しており、「Binanceの財務状況について、透明性は全くありません」と述べています。

一方、Binanceの最高セキュリティ責任者(CSO)を務めるパトリック・ヒルマン氏は「ロイターの分析は断じて誤りです。これらの市場で規制当局に開示しなければいけない企業情報および財務情報の量は膨大であり、しばしば6カ月にもおよぶ開示プロセスが必要となります。そして我々は民間企業ですが、企業財務を公表する必要はありません」と述べ、ロイターの分析内容は誤ったものであり、開示する必要のない情報を開示していないだけであると説明しています。


ジャオCEOの過去の発言によると、Binanceは1億2000万人以上のユーザーを抱えており、2021年の総取引量は合計34兆ドル(約4700兆円)にもおよぶそうです。また、ジャオCEOはインタビューの中で「Binanceの収益の90%超が仮想通貨取引に依存している」「かなりの額の準備金を用意している」と語っています。

調査会社CryptoCompareのデータに基づき、Binanceの取引量をベースに同社の収益を計算すると、Binanceは2022年10月までの12カ月で最大46億ドル(約6300億円)の収益を得ている可能性があるそうです。アメリカの投資銀行であるNeedham&Companyで仮想通貨を用いた資産運用を担当するアナリストのジョン・トダロ氏と、独立系投資コンサルタントのジョセフ・エドワーズ氏は、ロイターの試算がある程度正しい数字を導き出しているように思えると述べました。

ヒルマンCSOはロイターの試算についてコメントしなかったものの、「我々の収益の大半が仮想通貨取引における手数料から生み出されています」とコメントし、Binanceの収益源についての分析が正しいものであるとしました。さらに、「資本構造は無貸借であり、Binanceは取引手数料として集めた資金をユーザーのために購入・保有する資産とは別に保管しています」と述べ、安全な資金運用をアピールしています。


他にも、ジャオCEOらBinanceの幹部は主要取引所であるBinance.comの本拠地がどこにあるかを公にすることを避けてきました。しかし、2020年にケイマン諸島の仲裁裁判所に提出された書類の中で、Binanceのサミュエル・リムCCOが「Binance.comはケイマン諸島の企業・Binance Holdings Limitedが所有・運営している」と言及しています。なお、Binanceは14の地域の規制当局から仮想通貨の取引ライセンスを獲得していますが、ロイターがこれらの規制当局に問い合わせたところ、スペイン、ニュージーランド、オーストラリア、カナダ、フランス、リトアニアの6カ国は「主要取引所(Binance.com)の監督には関与しておらず、疑わしい取引の報告に関する現地要件を満たすことだけが求められています」と回答したそうです。

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in メモ, Posted by logu_ii

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