軍事作戦のコードネームはどのようにして決められているのか?
軍事作戦には湾岸戦争時の「砂漠の嵐作戦」やテロ組織ISILに対する「生来の決意作戦」などしばしば印象的なコードネームがつけられますが、リビアのトリポリで繰り広げられた2011年の「マーメイド・ドーン作戦(人魚の夜明け作戦)」など、どんな由来があるのか頭をひねらなければならないようなコードネームもあります。軍事作戦にこのようなコードネームをつけるようになった背景について解説した記事が公開されています。
How Military Operations Get Their Code Names | Mental Floss
https://www.mentalfloss.com/article/28711/how-military-operations-get-their-code-names
軍事作戦にコードネームを付ける習慣は第一次世界大戦中のドイツが始めたといわれており、ラジオが発達するにつれてメジャーなものとなっていきました。この習慣は第二次世界大戦中のナチスドイツにも継承され、例えばソビエト侵攻を目指す作戦は当初、計画者の息子の名前をとって「フリッツ作戦」と命名されていましたが、ヒトラーによって「バルバロッサ作戦」と改称されました。
バルバロッサとは神聖ローマ皇帝フリードリヒ1世のことで、「東方のスラブ人に対するドイツの権威を拡大し、新しいドイツ帝国を樹立するために眠りから覚めて再び立ち上がるだろう」という伝説が残されています。
一方連合国側に目を向けると、イギリスのウィンストン・チャーチルは作戦名から作戦内容が推測されることを危険視して、コードネームをつけるにあたって以下のようなガイドラインを作りました。
・多数の兵士が命を落とす可能性のある作戦は、自信や過信を意味するような、あるいは逆に作戦に悲壮感を漂わせるような隠語で表現してはならない。また、軽薄な名前であってはならない。生きている人間の名前、大臣や司令官の名前も避けるべきである。
・世間は広く、知的な人間もたくさんいるのだから、作戦の特徴を示唆するような名前や作戦をおとしめるような名前、夫や子どもを失った女性が「バニーハグ作戦」や「バニーホー作戦」で大切な人を亡くしたと言わずに済むような名前など、響きのいい名称をいくらでも思いつけるはずである。
・要するに、この分野では固有名詞が適している。古代の英雄、ギリシャ・ローマ神話の人物、星や星座、有名な競走馬、イギリスやアメリカの戦争の英雄の名前などは、上記のルールの範囲内で使用を可とする。
そんなチャーチルが自ら命名したというノルマンディー上陸作戦のコードネーム、「オーバーロード作戦」では、作戦名や上陸地点の名前がイギリスの新聞であるThe Telegraphのクロスワードパズルに入ってしまうという珍事が発生したことがあります。
当時The Telegraphでクロスワードパズルを作っていたレナード・ドーという人物は学校の校長でもあったので、よく子どもを書斎に招いてクロスワードパズルを解かせ、それをヒントに新しいクロスワードパズルを作成していました。そして、学校の敷地の隣には軍の基地があり、そこから漏れ出た作戦の情報を聞いた生徒の1人がクロスワードパズルにその言葉を使用したので、作戦に関する機密がクロスワードパズルに紛れ込んでしまったとのこと。なお、重要な軍事作戦の内容をそれと知らずに新聞に載せてしまったドーとその同僚は逮捕され、あやうく職を失いかけましたが、後に無実が証明されました。
第二次世界大戦後、コードネームを使う習慣はアメリカにも広まりましたが、朝鮮戦争やベトナム戦争での作戦名には「キラー作戦」や「リッパー作戦」、「マッシャー作戦」や「ムーラー作戦(moolahはお金を意味する俗語)」など、チャーチルのガイドラインに従うなら却下されてしまうようなものもありました。
ベトナム戦争が終わるころ、作戦開始と同時に公開される作戦名が不適切なせいで否定的な反応を受けることを危惧したアメリカ国防総省は、1972年に次のようなガイドラインを制定しました。
・伝統的なアメリカの理想や現行の外交政策と矛盾する好戦的な表現を使わないこと。
・良識に反する言葉や、特定の集団・宗教・信条を軽蔑するような言葉を使わないこと。
・同盟国や他の自由世界諸国にとって不快な意味合いを持つ言葉を使わないこと。
・外国語や陳腐な表現、有名な商標を使わないこと。
・全ての名前に2つの単語を使用すること。
また、1975年に作戦名を管理するNICKAというシステムが導入されると、アメリカ軍の各組織には2文字のコードが割り当てられ、関係する作戦名はその2文字で始まることが要求されました。例えば、アメリカアフリカ軍司令部には「JA~JZ」「NS~NZ」「OA~OF」が割り当てられたので、アメリカアフリカ軍司令部は3番目の条件に合致する「OD」を選択しました。Operation Odyssey Dawn(オデッセイの夜明け作戦)など、アメリカがリビアで実施した作戦に「Odyssey」で始まるコードネームが使われているのはこれが理由です。なお、「Odyssey」に続く2つ目の単語はなんでもよかったとのこと。
さらに、ケーブルテレビが台頭するようになると、アメリカ軍はコードネームを広報戦略の1つだと考えるようになりました。これにより、「Operation Restore Hope(希望回復作戦)」をはじめ、「Uphold Democracy(民主主義の擁護)」や「Shining Hope(輝ける希望)」など、大仰な言葉がコードネームに使われることが増えました。
こうした流れをくんで、2001年に始まった対テロ戦争におけるアフガニスタン侵攻作戦は、当初「Operation Infinite Justice(無限の正義作戦)」と呼ばれていましたが、イスラム教徒からの印象が悪くなるとして「Operation Enduring Freedom(不朽の自由作戦)」に変更されました。この作戦はまた、2003年に大統領報道官が「Operation Iraqi Liberation(イラク解放作戦)」と呼びましたが、頭文字が「OIL(石油)」だったので陰謀論者の格好の餌食となってしまいました。
なお、冒頭の「マーメイド・ドーン作戦」は、アラビア語圏におけるトリポリの愛称である「海の花嫁」、つまり人魚に由来しているそうです。
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in メモ, Posted by log1l_ks
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