意識して脳から「余計な思考」を払うことは可能なのか?
仕事中に余計なことを考えてしまうと能率が悪くなったり、自動車などの運転中に集中力が途切れると最悪の場合事故につながったりするので、できれば余計な考えは排除したいものです。また、布団に入ると考え事ばかりしてしまって眠れない人もいるかもしれません。このように、頭の中に次々湧いてくる思考をテーマにした最近の研究により、トレーニングをすることで意識的に特定の思考を頭から排除することが可能なことが分かりました。
If you don’t let it in, you don’t have to get it out: Thought preemption as a method to control unwanted thoughts | PLOS Computational Biology
https://doi.org/10.1371/journal.pcbi.1010285
Research probes how people control unwanted t | EurekAlert!
https://www.eurekalert.org/news-releases/957743
Is it possible to avoid unwanted thoughts? | Live Science
https://www.livescience.com/suppress-unwanted-thoughts
人の脳は日々膨大なデータを処理しており、その中には生きていく上で重要な記憶や社会生活の上で欠かせない判断も含まれている一方で、とりとめのない雑念もあります。例えば、ミネソタ大学の心理学教授であるエリック・クリンガー氏が1996年に発表した研究によると、人間は平均して1日に4000以上の思考をしていますが、各思考は平均5秒しか持続しないものだったとのことです。
このように次から次へと浮かんでは消えていく思考を抑制することができるのかを調べるべく、イスラエルのヘブライ大学で心理学を研究しているアイザック・フラドキン氏とエラン・エルダー氏の研究チームは、有償ボランティア80人を2つのグループに分けて連想ゲームに挑戦してもらう実験を行いました。
連想ゲームとは、例えばお題が「テーブル」なら「イス」という具合に、ランダムなお題を提示してそれに関連した言葉をできるだけ速く回答してもらうというもの。片方のグループは同じお題に繰り返し同じ答えをしてもいいことになっていましたが、もう片方のグループは2回目の「テーブル」には「食事」という具合に、最初の回答とは大きく違った回答しないと追加報酬がもらえないと案内されました。
このルールにより、例えば「テーブル」に対して「イス」と答えた後に、家具という点でイスと似ている「デスク」と回答すると減点されてしまいます。これは、最初に「イス」と答えたことを意識しつつもそれとは別の答えを考えないといけないように仕向けることで、「イスのことはもう考えないようにしよう」と余計な思考を頭から追い出そうとしている状況を再現するための仕組みです。
実験が終了してみると、研究チームの予想通り毎回違う回答をしなければならないグループはそうでないグループに比べて、連想に時間がかかりました。しかし、同じお題を見る度に連想に必要な時間はどんどん短くなっていったとのこと。これは、余計な思考を考えないように繰り返し努力した結果、お題と最初の回答、先の例で言うと「テーブル」と「イス」の結びつきが弱くなっていったことを示していると研究チームは考えています。
これについてフラドキン氏は「思考は自己強化的なので、ある思考をするとその記憶が強化されて同じことを考えてしまう可能性が高くなります。つまり、いったん思い浮かんでしまった余計な思考を拒絶すると、それをまた思い出してしまう可能性が高まります。しかし、今回の研究により、先手を打ってなるべく思い浮かばないように努力することで、特定の思考を回避できることが分かりました」と話しました。
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