私立刑務所の関係者がホームレスを犯罪化しようとしている理由とは?
日本の刑務所は法務省の矯正局が所管する施設のみが使用されますが、オーストラリアやフランスなどでは、政府と契約した民間の第三者による私立刑務所も運用されています。アメリカでも私立刑務所は運用されていますが、その私立刑務所業界が「ホームレスを犯罪として罰する法律」を推進する全国的に最も強い力となっており、それが大きな人種差別につながっているという実態を、ホームレスの人々のために活動する非営利団体のInvisible Peopleが訴えています。
Private Prisons Are Behind the Push for Homeless Criminalization - Invisible People
https://invisiblepeople.tv/private-prisons-for-homeless-criminalization/
Criminalization of Homelessness is Racially Discriminatory - National Homelessness Law Center
https://homelesslaw.org/criminilzation-of-homelessness-is-racially-discriminatory/
Invisible Peopleでライターを務めるケイラ・ロビンス氏は、私立刑務所業界が営利のためだけにホームレスを犯罪とする法律の制定を推し進めていると警告しています。私立刑務所は収容者ごとに政府から援助金を受け取るため、「単純な計算で言えば、刑務所に閉じ込められる人が多ければ多いほど、私立刑務所を運営する営利団体はより多くのお金を稼ぐことができます」とロビンス氏は述べています。また、アメリカのホームレスの40%は黒人であるため、ホームレスを犯罪化する法律は、黒人および有色人種を不当に投獄する重大な人種差別にもなるとロビンス氏は語っています。
ホームレス犯罪法を推進する人々や組織は、「街中にホームレスの人々がいると不安」といった民衆の声を受けて活動しているように振る舞っていますが、これらの背後には億万長者のジョー・ロンズデール氏が設立した保守系シンクタンクであり、私立刑務所産業に多大な投資をしているシセロ研究所があるとロビンス氏は指摘しています。
「住まいは権利」の理念の元にホームレス状態にある人に住居を与えようとする「ハウジングファースト」という枠組みがありますが、シセロ研究所はこのハウジングファースト方式に対抗するために膨大な時間と資金を費やしているとのこと。ロビンス氏はこれを、「ハウジングファーストは人々を路上から、刑務所ではない場所に遠ざけることに成功しています。その事実は、億万長者にとっては利益が減ることを意味しています」と述べています。
また、シセロ研究所は強力なロビー活動も行っています。テキサス州やミズーリ州、テネシー州などの多くの州がシセロ研究所と協定を結んでおり、ホームレスを刑務所に入れることで街から排除する方の制定に近づいているそうです。この法律には、公共の場で寝ている人を犯罪者にするような特定の文言があり、さらには精神疾患を持つ人々を、刑務所もしくはそれに準ずる精神保健施設に強制収容することにもつながる内容も含まれています。
ホームレス犯罪化法は、国連の人種差別撤廃委員会によって、「ホームレスの影響を最も受けているのはマイノリティーであり、差別的な影響を永続させるものです」として非難を受けています。2022年8月には、人種差別撤廃委員会はホームレスの犯罪化に関する州法および地方法について公聴会を行った後、アメリカ政府に是正措置を講じるよう求めています。
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