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ロシア・中国・イランに親アメリカの印象操作をTwitter・Facebook・Instagramで行った大規模な影響力作戦の実態とは?


Stanford Internet Observatory(SIO)とSNS分析会社のGraphikaが報告した共同レポートによると、Facebook、Instagram、Twitterから削除された複数アカウントの大規模なネットワークを分析した結果、中東や中央アジアのユーザーがアメリカに対して良い印象を持つように、あるいはロシアなどに悪い印象を持つようにするためのキャンペーンが行われていたことが明らかになりました。レポートはその大規模キャンペーンの実態や、SNSを用いた印象操作の実現可能性について述べています。

FSI | Cyber | Internet Observatory - Unheard Voice
https://cyber.fsi.stanford.edu/io/news/sio-aug-22-takedowns

(PDFファイル)Unheard Voice: Evaluating five years of pro-Western covert influence operations
https://stacks.stanford.edu/file/druid:nj914nx9540/unheard-voice-tt.pdf

Facebook and Twitter take down u.s. influence campaign about Ukraine - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/technology/2022/08/24/facebook-twitter-us-influence-campaign-ukraine/

SIOによると、2022年7月から8月にかけて、FacebookやInstagramを運営するMetaとTwitterは、プラットフォームの利用規約違反を理由に重複するアカウントのセットを削除しました。Facebookは39のプロフィール、2つのグループを削除し、Instagramは26のアカウントによる活動を報告しており、Metaは「プラットフォーム上の発言や行動が『調整された不正な行動』に関与していました」と述べています。Metaの広報担当者のマルガリータ・フランクリン氏によると、アメリカの立場を促進するような影響力ネットワークを削除したのは、今回が初めてとなるそうです。また、Twitterは170のアカウントによる40万件のツイートを削除し、「アカウントが『プラットフォームの操作とスパム』に関するポリシーに違反しています」と述べ、削除理由を説明しています。このアカウント削除の後、さらなる分析のために、アカウントのアクティビティの一部がSIOとGraphikaに提供されました。


SIOとGraphikaの共同調査の結果、Twitter、Facebook、Instagram、その他5つのSNSにおいて、相互にリンクされたアカウントのネットワークが発見されました。これらのアカウント群は、中東および中央アジアに対して「親アメリカ的なニュース・話題・物語」を約5年間にわたって宣伝していたそうです。その内容は、ロシアや中国、イランと言った国々に反発しながら、アメリカおよびアメリカの同盟国の利益を促進するような構造になっていました。

今回のレポートは、SNSを用いて印象操作などを行う「影響力作戦」の広範なケースとして意義が高いとSIOは述べています。影響力作戦における民間団体の役割に関する研究は発展途上ですが、レポートによって、オンライン上での影響力作戦のために積極的な活動家の数がかなり多いことが明らかになったとのこと。

同時に、MetaとTwitterのデータから、活動家が選択する影響力作戦の戦術の範囲はごく限られているとも分かるそうです。今回削除されたアカウントが行っていた活動は、敵対的生成ネットワークで作成された架空の人物像を用いて、独立したメディアの発信者を装い、ミームと短編動画を作成し、ハッシュタグによるキャンペーンを開始するなど、過去に同様の活動家が行っていた作戦とほとんど同一だったとのこと。以下の画像は、左が実際に使われた架空の人物で、右が俳優のバレリア・メネンデス氏の写真となっており、実在の俳優の写真を加工したものが架空の人物像として用いられていたことが分かります。


また、以下は「SNSはイラン人が自由に世界にアクセスできる唯一の方法」と宣伝する投稿で、イラン政権のプロパガンダやロシアの情報統制を批判する内容になっています。


その他、直接SNSのユーザーと関わることで、オンライン上でのコミュニティを作る動きも見られました。以下の画像左はシズラーと呼ばれるイランのお祭りに関する画像で、右はかわいいネコの画像。このように、政治的な発言だけではなく、本物のユーザーであることを示して視聴者を増やそうとしたと思われる投稿も特徴として見られたとSIOは報告しています。


SIOは「重要なことは、オンラインでユーザーの反応を生み出し、影響力を構築するために、でっちあげた内容を戦術として使用することの限界を、データが示していることです」と述べています。実際に、SIOとGraphikaが調査した投稿で「いいね」やリツイートなどの反応を受け取ったものはほとんどなく、アカウント群のうち1000以上のフォロワーを獲得していたのは19%にすぎなかった結果が示されています。

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in ネットサービス, Posted by log1e_dh

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