気候変動の問題は二酸化炭素の増加だけではないという指摘
マイクロプラスチックや化学薬品などによる海洋汚染問題を考える団体・Goes Foundationが、「気候変動による環境問題は二酸化炭素の増加だけではない」と訴える文書を発表しました。
GOES summary document…Climate change is not just about Carbon Dioxide by Howard Dryden :: SSRN
https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=4151891
海中にはプランクトンと呼ばれる小さな生物が存在しており、植物性プランクトンは海中の二酸化炭素を酸素に変換してくれています。しかし、過去70年以上にわたってプランクトンの数が減少することで、プランクトンの50%以上が死滅してしまったとGoes Foundationは指摘。それによって、より多くの二酸化炭素が海水内に溶け込み、海洋の酸性化が進んでいると述べています。
by JesseClaggett
サンゴ礁を含む海洋生物の50%以上は炭酸カルシウムで構成されていますが、海水が酸性化すると炭酸カルシウムが溶解してしまうとのこと。Goes Foundationによれば、1940年代における海水のpHは8.2でしたが、2045年までに7.95になるとみられているそうです。Goes Foundationは、海水のpHが8.04を下回ると、炭酸塩ベースの海洋生物が溶解し始めてしまう可能性があると主張しています。
さらにGoes Foundationは、海洋生物の死滅は海水の蒸発にも影響を与えると指摘しています。Goes Foundationによると、珪藻(けいそう)などの海洋植物から分泌される油分が海面を覆い、海面からの水の蒸発を遅らせる働きをしているとのこと。海水の蒸発量が増えるということは、ハリケーンも起こりやすくなることを意味するとGoes Foundationは主張しました。
また、マイクロプラスチックのような物質や有害化学物質が海に放出されることもプランクトンの死滅につながっていると、Goes Foundationは述べています。さらに化石燃料を燃やした時に出る炭素の粒子が大気汚染につながり、雪や氷を黒く染めてしまうことで、太陽熱の吸収効率を上昇させてより多くの雪や氷の融解につながると主張しました。Goes Foundationによれば、毎年2000万トンもの炭素が海に流れ込んでおり、北極における炭素粒子の濃度は、雪1kg辺り10万粒子に及ぶそうです。
Goes Foundationは「二酸化炭素の濃度を下げるための一番の希望は、陸と海、特に海の植物や動物を再生し、復活させることなのです。海が死んでいくのは気候変動のせいではなく、人為的な汚染のせいです」と主張。有害な化学物質やプラスチックを大気や土壌、河川に流すのをやめ、汚染の原因を排除し、2045年までに海水のpHが7.95に達するのを防ぐべきだと訴えました。
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