サイエンス

エネルギーを凍結して保存する「凍結融解バッテリー」が季節によらない電力供給を実現する可能性


電解質内のイオンの動きを凍結して長期間の電力保持を実現する「凍結融解バッテリー」の開発が、アメリカ合衆国エネルギー省(DOE)などの手で進められています。凍結融解バッテリーは実験段階において、12週間にわたって容量の92%を保てることが示されています。

‘Freeze-thaw battery’ is adept at preserving its energy: Molten-salt battery marks step toward seasonal storage of grid-scale energy -- ScienceDaily
https://www.sciencedaily.com/releases/2022/04/220405084551.htm


‘Freeze-thaw battery’ stores electricity long-term for seasonal release | E&T Magazine
https://eandt.theiet.org/content/articles/2022/04/freeze-thaw-battery-stores-electricity-long-term-for-seasonal-release/

DOEなどが開発を進める凍結融解バッテリーは、まず塩やアルミニウム、ニッケルなどの材料を加熱して溶融し、液体となった電解質にイオンを流すことで化学エネルギーを生成したあと、室温まで冷却してイオンの動きを止め、化学反応を停止させて保存するというものです。エネルギーが必要になったときは再び加熱すればいいという仕組み。


凍結融解バッテリーは実験段階において、12週間経過した時点で容量の92%が保たれた状態だったとのこと。研究を主導したGuosheng Li氏は「バッテリーのコストを削減すること」に重点を置いているとのことで、研究が進んで材料をニッケルから鉄に変えることができた場合、実験段階における「1kWh当たり23ドル(約2850円)」というコストから、既存のリチウム電池の約15分の1に当たる「1kWh当たり6ドル(約740円)」に押し下げることができると述べています。

また、理論上のエネルギー密度も既存の鉛蓄電池より高く、バッテリーをより大容量かつ小型なものにできることが期待されています。この凍結融解バッテリーを使うことで、これまで短期間しかエネルギーを保存できなかった風力発電所や水力発電所がより長期的にエネルギーを保存できるようになり、風が強い夏に電力を貯蓄し、電力需要がピークに達する冬まで保存できるようになる可能性があります。


DOEのエネルギー貯蔵ディレクターを務めるImre Gyuk氏は「この研究は、今日のバッテリー技術の限界を克服する、季節を超えたバッテリー活用への重要な一歩を示しています」と述べました。

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in ハードウェア,   サイエンス, Posted by log1p_kr

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