Appleの最強チップ「M1 Ultra」のGPU性能はRTX 3090以下であることがベンチマークテストにより明らかに
Appleは2022年3月18日(金)に、現行最上位モデルとなる「Mac Studio」を発売しました。このMac Studioに搭載されているM1 UltraチップのGPU性能は、NVIDIAのハイエンドグラフィックカードである「RTX 3090」ほど強力ではないことが明らかになっています。
Apple’s charts set the M1 Ultra up for an RTX 3090 fight it could never win - The Verge
https://www.theverge.com/2022/3/17/22982915/apple-m1-ultra-rtx-3090-comparison-specs-charts-cpu-gpu-performance
Appleは2022年3月9日に開催した新製品発表イベントの中で、Mac向けの現行最上位チップとなる「M1 Ultra」を発表しました。M1 UltraはM1 Maxのダイを2つ合体させたというチップで、CPUは20コア、GPUは最大64コア、Neural Engineは32コア、ユニファイドメモリは最大128GBという驚愕のスペックを誇ります。
2つのM1 Maxをウルトラフュージョンした最上位チップ「M1 Ultra」が登場、最大128GBのユニファイドメモリ搭載でメモリ帯域は800GB/sに到達 - GIGAZINE
M1 Ultraは、M1 MaxというCPU・GPU・メモリなどがまとめられたSoCを2つ合体させたチップです。また、M1 Ultraは独自の「UltraFusion(ウルトラフュージョン)」と呼ばれるテクノロジーを用いることで、2つのM1 Max間の帯域幅を2.5TB/sまで高速化することに成功。これにより、2つのチップを合体させるというアプローチにおける「遅延の増大」「帯域幅の減少」「電力消費量の大幅な増加」といった問題を解消することに成功したとAppleは豪語しています。
以下のグラフはAppleが発表会で公開したM1 UltraとハイエンドディスクリードGPUのパフォーマンス(縦軸)と電力効率(横軸)を比較したグラフ。ハイエンドのグラフィックカードと比較して、M1 Ultraはパフォーマンスは同等で、電力効率は圧倒的であるとAppleはアピール。そのため、海外メディアのThe Vergeは「M1 UltraはRTX 3090を打ち負かすことを目指している」と報じていました。
しかし、M1 Ultraを搭載したMac Studioが2022年3月18日に発売されたためベンチマークテストを実施したところ、M1 UltraはRTX 3090ほど高速ではないことが判明したとThe Vergeは報じています。
以下のグラフは実際にM1 Ultraを搭載したMac Studioや、RTX 3090を搭載したPCで、GPUのパフォーマンスを測定した結果をまとめたもの。なお、ベンチマークテストにはGeekbench 5が使用されています。結果は一目瞭然で、M1 UltraのスコアはRTX 3090の半分以下という結果に。
さらに、「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」をさまざまな解像度でプレイし、どの程度のフレームレートが出るかを実験した結果が以下のグラフ。M1 Ultra搭載のMac StudioはフルHD(1080p)画質でのプレイ時のフレームレートが108fpsであるのに対して、RTX 3090は同じ解像度でフレームレートが142fps出ています。
ただし、The Vergeは「M1 UltraとRTX 3090が互いに競合しているのは明らかであり、状況によってはM1 Ultraを使用した方がはるかに多くの利益を得られるということも事実です。Appleが公開したグラフでは明らかになっていなかった事実としては、M1 Ultraの上限がグラフ内で止まっている一方で、RTX 3090の方は消費電力を上げればより高いパフォーマンスを発揮できたという点です」と記し、パフォーマンスとしてはRTX 3090がはるかに優れているものの、M1 Ultraは驚くべきほどの電力効率を実現しており、その点ではAppleのグラフは確かに正しかったとしています。
また、他の半導体メーカーが実現できなかった「2つのチップを合体させ、ベンチマークテストのスコアを2倍に伸ばすこと」にAppleは成功しているとして、UltraFusionテクノロジーを称賛しています。NVIDIAは「NVLink」、AMDは「Infinity Fabric」というテクノロジーで2つのGPUを合体させることに挑戦していますが、それぞれGPU間の帯域幅は最大112GB/sと800GB/sとなっており、M1 Ultraほどの高速化を実現することができていません。実際、NVIDIAはRTX 30シリーズでマルチGPUのサポートを実質的に廃止しており、記事作成時点で利用可能なモデルはRTX 3090のみです。
また、AppleはOSからハードウェアまですべてを自社で開発しているため、M1 UltraとmacOSがシームレスに動作するのに対して、NVIDIAやAMDの場合はWindowsやゲーム側がNVLinkやInfinity Fabricをサポートする必要があるため、一部タイトルではマルチGPUでのプレイにパフォーマンスが低下してしまうケースが報告されています。
上記の利点に加え、RTX 3090は単体でMac Studioとほぼ同等のサイズであること、Mac Studioの最上位構成の3分の1ほどのコストがかかることなどを挙げ、M1 UltraはRTX 3090と競合できるチップに仕上がっているとThe Vergeは指摘しています。
・関連記事
2つのM1 Maxをウルトラフュージョンした最上位チップ「M1 Ultra」が登場、最大128GBのユニファイドメモリ搭載でメモリ帯域は800GB/sに到達 - GIGAZINE
NVIDIAがGeForce RTX 30シリーズを正式発表、最上位モデルは世界初の8K・60fpsゲーミングが可能に - GIGAZINE
M1 Ultra搭載で最大93万9800円のプロ向け「Mac Studio」とA13 Bionic&5K Retinaディスプレイ搭載の「Studio Display」が登場 - GIGAZINE
M1 Ultra・Mac Studio・第3世代iPhone SE・第5世代iPad Airなどが発表されたAppleイベントまとめ - GIGAZINE
・関連コンテンツ