メモ

「スタジアムの経済効果は低く自治体はこれを新設するべきではない」という指摘


野球やサッカーなどの競技を開催できるスタジアムは、地域住民のみならず競技のファンも集う大型建築物であり、文部科学省によるとその新設や建て替えは2020年時点で(PDFファイル)52件行われているなど、国や自治体が力を入れている事業であることがうかがえます。しかし、ミシガン大学の経済学者であるロブ・ルーカス氏は「スタジアムの新設は価値のある経済的機会を生み出さない」とする持論を展開しています。

Cities Should Not Pay For New Stadiums – Michigan Journal of Economics
https://sites.lsa.umich.edu/mje/2022/01/15/cities-should-not-pay-for-new-stadiums/

ルーカス氏いわく、スポーツ業界に共通する傾向として公的資金を用いた新しい施設の要求」というものがあるとのこと。例えばアメリカではニューヨーク州バッファローで創設されたアメリカンフットボールのプロチームのバッファロー・ビルズが、本拠地を「テキサス州オースティンに移設する」と脅し、ニューヨーク州に対して14億ドル(約1700億円)のスタジアム新設を要求したことがあったそう。ただし、一般的に「スタジアムの新設は雇用機会を生み出し観光産業を発展させる」とみられていることもあり、スタジアムの新設はよく行われるとのこと。


しかし、スタジアム新設の経済効果を調べた研究によると、仮にスタジアムが新設されてスポーツイベントが開催されたとしても観光産業が発展することはなく、多くの場合スタジアムが存在する自治体の中でのみお金が回ることになり、実質的な純利益を自治体にもたらすことはないとのこと。これに加えてルーカス氏は「スタジアムへの予算の大部分が選手やコーチの給料に回る」とし、施設維持のために働くパートタイム従業員が低賃金となりがちで、従業員を集めにくいと指摘しています。

これらの理由のため、ルーカス氏は「都市とそこに住む住民の利益のためにスタジアムにお金を費やすよりは、インフラストラクチャの改善などの公共事業に費やす方がいい」と述べています。


もちろんスタジアムのための公的資金が一切なくていいというわけではなく、ルーカス氏は「スポーツは娯楽の一形態であり、地域の住居に経済的利益を超えた楽しみをもたらします。これは無視すべき要因ではありません」と述べています。ただし、一部の政治家は、自分たちの街のスポーツチームを失って住民からの人気を失うことを恐れ、スポーツチームの要求に素直に従っているとルーカス氏は指摘しています。

このようなことを改善する1つの方法として、ルーカス氏は「スポーツチームの増設」を提案しています。チャンピオンを決めることが良しとされるスポーツ業界においてチームを増設することは競争を激しくするかもしれませんが、一つの自治体が複数のスポーツチームを所有することは、少なくとも「チームの移設という脅威」を緩和することができます。


ルーカス氏は最後に「スタジアムの新設や資金提供が雇用創出や経済効果を生み出すというのは誤解を招く主張であり、それに公的資金を費やす自治体にとって賢明な投資とは言えません。都市がお金を使うためのより良い方法として、やはり市民の生活と雇用の見通しをより改善する教育とインフラへの資金提供があげられます」と述べました。

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in Posted by log1p_kr

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