Qualcommがスマホ向け次世代フラッグシップSoC「Snapdragon 8 Gen 1」を発表
半導体メーカーのQualcommが2021年11月30日から2日間にわたって開催しているプライベートイベント「Snapdragon Tech Summit 2021」で、モバイル向けの次世代フラッグシップSoCとなる「Snapdragon 8 Gen 1」を発表しました。
Snapdragon 8 Gen 1 Mobile Platform | Qualcomm
https://www.qualcomm.com/products/snapdragon-8-gen-1-mobile-platform
Qualcomm Announces World’s Most Advanced Mobile Platform, the Snapdragon 8 Gen 1 | Qualcomm
https://www.qualcomm.com/news/releases/2021/11/30/qualcomm-announces-worlds-most-advanced-mobile-platform-snapdragon-8-gen-1
Qualcomm Announces Snapdragon 8 Gen 1: Flagship SoC for 2022 Devices
https://www.anandtech.com/show/17091/qualcomm-announces-snapdragon-8-gen-1-flagship-soc-for-2022-devices
Qualcomm’s new Snapdragon 8 Gen 1 chip is here to power the Android flagships of 2022 - The Verge
https://www.theverge.com/2021/11/30/22809687/qualcomm-snapdragon-8-gen-1-chip-smartphone-processor-specs-details
Snapdragon 8 Gen 1はSnapdragon 888・Snapdragon 888 Plusの後継で、SoCの命名法則が3桁の数字から変更された初のモデルとなります。
Snapdragon 888との構成比較表が以下。
Snapdragon 8 Gen 1 | Snapdragon 888 | |
CPU | Cortex-X2:1コア (最大3.0GHz、1024KB 占有L2キャッシュ×1) Cortec-A710:3コア (最大2.5GHz、512KB 占有L2キャッシュ×3) Cortex-A510:4コア (最大1.80GHz、サイズ不明の共有L2キャッシュ×2) 共有L3キャッシュ 6MB | Cortex-X1:1コア (最大2.84GHz、1024KB 占有L2キャッシュ×1) Cortex-A78:3コア (最大2.42GHz、512KB 占有L2キャッシュ×3) Cortex-A55:4コア (最大1.80GHz、128KB 占有L2キャッシュ×4) 共有L3キャッシュ 4MB |
GPU | Adreno | Adreno 660 |
NPU | 次世代Hexagon | Hexagon 780 |
メモリコントローラー | 16bitチャネル×4 LPDDR5 最大3200MHz システムレベルキャッシュ 4MB | |
ISP | 18ビット対応×Spectra ISP | 14ビット対応×Spectra 580 ISP |
搭載モデムチップ | Qualcomm X65 | Qualcomm X60 |
製造プロセス | Samsung 4nmプロセス(詳細不明) | Samsung 5LPE |
Snapdoragon 8 Gen 1のCPUは「Qualcomm Kryo CPU」で、Cortex-X2を1コア、高性能コアであるCortex-X710を3コア、高効率コアであるCortex-A510を4コアと、Qualcomm製SoCとしては初めてArmv9アーキテクチャコア3種を搭載しているのが特徴。Cortex-A510は2つのL2キャッシュを4コアで共有しており、前モデルから設計が見直されています。QualcommはCortex-X2の採用によって、前モデルからパフォーマンスが20%向上し、電力効率が30%向上したと述べています。
また、GPUには前モデルと同じArdenoアーキテクチャのコアを採用していますが、「Qualcomm Adreno GPU」という名前になっており、ナンバリングが排除されています。ハードウェア関連のニュースサイトであるAnandTechは、これまでのAdrenoシリーズからマイクロアーキテクチャが大きくシフトしようとしているかもしれないと予測しています。なお、GPUのパフォーマンスはピーク時で前モデルから30%向上し、電力効率も25%向上しているとのこと。Qualcommは、Snapdragon 8 Gen 1はQualcomm製SoCとして初めてゲームエンジンのUnreal Engine 5が動作するとアピールしています。
そして、スマートフォンのカメラで撮影した画像処理に関わるISPは、前モデルでは1チャネル当たり14ビットの色深度入力に対応していたのが、Snapdragon 8 Gen 1では18ビット入力に対応できるようになったのが大きなポイント。対応する色深度入力が増えたことで、より広いダイナミックレンジによる撮影が可能となります。また、キャプチャ速度もSnapdragon 888では毎秒2.7ギガピクセルだったのが、Snapdragon 8 Gen 1では毎秒3.2ギガピクセルにまで向上。さらに8K HDR・6400万画素による撮影も可能となりましたが、コーデックは前モデルから変更はなく、YouTubeやNetflixで積極的に採用されているAV1コーデックは追加されていません。
Qualcommは、AIパフォーマンスが前モデルと比べて2倍になり、より大規模な機械学習モデルのパフォーマンスが向上したと述べており、電力効率は「同世代と比べて70%優れています」とアピールしています。
モデムチップはQualcommが2021年2月に発表した第4世代5Gモデム「Snapdragon X65」で、3GPP Release 16に世界で初めて対応。ミリ波では1000MHz帯を8キャリアあるいは2×2 MIMOで、サブ6GHz帯では300MHz帯を4×4 MIMOで通信可能となり、下り最大10Gbpsの通信速度が実現したとのこと。
Snapdragon 8 Gen 1の製造プロセスはSamsungの4nmノードを採用していますが、Samsungの4nm FinFETプロセスである4LPEなのか、それともQualcomm 8 Gen 1向けにカスタマイズされたものなのかは不明です。
Qualcommによれば、既にXiaomi、ZTE、ソニー、シャープなどのスマートフォンに採用されることが決定しており、2021年末から順次発表される見通しとなっています。
AnandTechは「全体的に見て、Snapdragon 8 Gen 1はSnapdragon 888の非常に堅実な後継モデルといえます。Qualcommにとって最も大事なのは、大多数のベンダーが信頼してデバイスに搭載できるチップの開発と提供を行うことです。競合他社は多様化し、特にゲーミング性能を強化していますが、業界ではQualcommを凌駕することは非常に難しく、Snapdragon 8 Gen 1が期待を裏切ることはないでしょう」と評価しています。
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