セキュリティ

中国が「外国人ジャーナリストや留学生」をターゲットにした新たな監視システムの構築を進めている


中国は近年、監視カメラやAIなどの最新テクノロジーを採用して国民を監視するシステムを強化しており、監視カメラの映像からAIで個人を識別する天網(スカイネット)、地元住民が近隣の監視カメラをチェックして警察に連絡可能な「Sharp Eyes(シャープアイズ)」などが運用されています。新たに、アメリカに本拠を置く映像監視システム調査機関のIPVMが、「中国の河南省で外国人ジャーナリストや留学生をターゲットにした監視システムの構築が進められている」と報告しました。

Punishing Journalists PRC Province's Latest Mass Surveillance Project, Won by Neusoft Powered By Huawei
https://ipvm.com/reports/henan-neusoft


EXCLUSIVE Chinese province targets journalists, foreign students with planned new surveillance system | Reuters
https://www.reuters.com/technology/exclusive-chinese-province-targets-journalists-foreign-students-with-planned-new-2021-11-29/

China Reportedly Plans Extensive Surveillance of Journalists | PCMag
https://www.pcmag.com/news/china-reportedly-plans-extensive-surveillance-of-journalists

IPVMによると、河南省公安部は2021年7月29日に省全体で「疑わしい人物」を追跡する監視システムの入札を行ったとのこと。河南省の調達ウェブサイトに掲載された190ページに及ぶ(PDFファイル)入札文書では、さまざまな地域のデータベースに接続した3000台の顔認識カメラを使用し、河南省を訪れた人物のプロファイルを収集する計画について詳述されています。

そして9月17日には、「契約から2カ月以内にシステムの構築を完了する」という条件で、中国のソフトウェア開発企業・Neusoft(東軟グループ)が500万元(約8900万円)でこのプロジェクトを受注しました。IPVMは1週間にわたり東軟グループに何度も連絡を取ろうとしたものの、応答はなかったとのこと。なお、記事作成時点では河南省の調達ウェブサイトに掲載されていた入札関連の情報も削除されていますが、IPVMはこれに備えてアーカイブを取っていたそうです。

今回の入札において特徴的だったとIPVMが指摘しているのが、入札文書で「外国人ジャーナリストや留学生」などをターゲットにすることが示されていた点です。入札文書に含まれていた以下の画像を見ると、「外国記者」「外国留学生」「不法に居住している近隣諸国の女性」などが必要なデータライブラリとして含まれているのがわかります。


入札文書によると、システムに使われる監視カメラは顔が眼鏡やマスクで部分的に覆われている場合でも、個人の比較的正確なプロファイルを構築できることが求められています。また、ターゲットの画像や顔の属性をデータベースで検索するだけで特定可能であることも要件となっているそうです。

このシステムは少なくとも2000人の職員と警察官によって運営され、ターゲットとなる外国人ジャーナリストなどは「緑(懸念レベル:低)」「黄(懸念レベル:中)」「赤(懸念レベル:高)」の3段階にカテゴリー分けされるとのこと。ジャーナリストのラベルは旅行の理由、旅行の性質、旅行先などによって変化し、河南省の内部でジャーナリストがホテルに泊まったり、チケットを購入したり、省境を越えたりするとアラートが送信される仕組みです。入札文書には、「疑わしい人物は追跡・管理されて、動的な研究分析とリスク評価も行われ、ジャーナリストはそれぞれのカテゴリーに従って対処する必要があります」と記されています。

また、今回の監視システムではHuaweiのクラウドサービスやデータ分析プラットフォーム・FusionInsightが、重要な技術として文書に指定されているとIPVMは指摘。ところが、IPVMがHuaweiに連絡したところ、広報担当者は河南省のセキュリティプログラムについては何も知らないと主張し、他の主要なサービスプロバイダーと同様に一般的な業界標準に即したクラウドプラットフォームサービスを提供していると回答したとのこと。


新たな監視システムの入札は、2021年7月に中国で発生した大規模な洪水を取材する外国人ジャーナリストが「深刻な嫌がらせ」を受けたという報道の直後に行われています。この件では、ドイツのジャーナリストが地元住民に囲まれたり服をつかまれたりしたほか、イギリスのBBCやアメリカのロサンゼルス・タイムズの記者らは殺害の脅迫を受けたとのこと。

中国では2021年に習近平国家主席が就任して以来、外国メディアへの統制が強化されていることが指摘されており、中国外国人記者クラブ(FCCC)は2020年2月に「新型コロナウイルス防止措置やビザの短縮を使用して報道の自由が損なわれている」と報告しました。これに対して中国外務省は根拠がない主張だと反論し、中国は法律に従ってニュースを取材する全ての国のメディアやジャーナリストを歓迎するものの、「私たちは中国に対するイデオロギー的偏見と報道の自由の下で作られるフェイクニュースに反対しています」と述べています。

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in セキュリティ, Posted by log1h_ik

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