ハードウェア

IBMが世界初の127量子ビット・量子プロセッサ「Eagle」を発表


量子コンピューターロードマップを公開しているIBMが、単一の量子プロセッサとしては初の127量子ビットを実現した量子プロセッサ「Eagle」を発表しました。

IBM Unveils Breakthrough 127-Qubit Quantum Processor
https://newsroom.ibm.com/2021-11-16-IBM-Unveils-Breakthrough-127-Qubit-Quantum-Processor

IBM Quantum breaks the 100‑qubit processor barrier | IBM Research Blog
https://research.ibm.com/blog/127-qubit-quantum-processor-eagle

2021年11月16日、IBMが独自に開催する量子コンピューター実現に向けたハードウェアやソフトウェアの発表を行うイベントIBM Quantum Summit 2021の中で、127量子ビットを実現する量子プロセッサ「Eagle」を発表しました。

「Eagle」は100を超える操作可能な量子ビットを含むIBMの量子プロセッサです。これはIBMが2020年に発表した65量子ビットの量子プロセッサ「Hummingbird」や、2019年に発表した27量子ビットの「Falcon」量子プロセッサに続くもの。エラーやアーキテクチャを減らし、必要なコンポーネント数を減らしながら、量子ビットの増量に成功しています。「Eagle」では量子ビットを単一層に維持しながら、プロセッサ内に複数の物理レベルで制御配線を配置することで、量子ビットの大幅増加に成功しているとのこと。


量子ビット数の増加により、ユーザーは機械学習の最適化やエネルギー産業から創薬プロセスまで幅広い分野で使用される新しい分子や材料のモデル化など、実験やアプリケーションを実行する際に、新たなレベルで問題を探求可能となるとIBMは説明しています。加えて、IBMは「従来のコンピューターでは確実にシミュレーション不可能な規模のシミュレーションが可能になる量子プロセッサです。実際、127量子ビットのプロセッサーでは、ビット数が現在生存している75億人の持つ原子の総数を超えます」とも記しました。

IBMの上級副社長兼研究部長のダリオ・ギル博士は、「Eagleの登場は、量子コンピューターが有用なアプリケーションにおいて古典的なコンピューターを凌駕する日に向けた大きな一歩です。量子コンピューターは、ほぼすべての分野に変革をもたらし、現代の最大の問題に取り組むのに役立つ力を持っています。これが、IBMが量子ハードウェアとソフトウェアの設計を急速に革新し続ける理由であり、量子コンピューターと従来のコンピューターのワークロードが互いに力を発揮する方法を構築し、量子産業の成長に不可欠なグローバルエコシステムを構築する理由です」と語りました。


IBMは2019年に世界初の統合量子コンピューティングシステムである「IBM Quantum System One」を発表しました。それ以降、IBMはクラウドベースの量子サービスの基盤として、IBM Quantum System Oneを活用しており、ドイツのフラウンホーファー研究機構や日本の東京大学、アメリカのCleveland ClinicなどでIBMのクラウド量子サービスが導入されています。

IBMが世界初となる商用量子コンピュータ「IBM Q System One」を発表 - GIGAZINE


IBMは新しい量子プロセッサの発表に合わせ、IBM Quantum System Oneの次世代システムとなる「IBM Quantum System Two」も発表しました。IBM Quantum System TwoはIBMが将来リリースする433量子ビットあるいは1121量子ビットの量子プロセッサで動作するよう設計されています。

このIBM Quantum System Twoについて、IBMの量子コンピューティング担当副社長を務めるジェイガン・ベッタ博士は「IBM Quantum System Twoは、システムインフラストラクチャーのモジュール性と柔軟性が継続的なスケーリングの鍵となる将来の量子コンピューティングデータセンターを垣間見ることができます」「IBM Quantum System Twoは、量子コンピューティングと従来のコンピューティングの両方におけるIBMの長い伝統を利用して、テクノロジースタックのあらゆるレベルで新しいイノベーションをもたらします」と説明しています。

IBMはIBM Quantum System Twoにおける最重要ポイントは「モジュール性」にあるとしています。IBMがハードウェアのロードマップに従い、新しい量子プロセッサを開発するにつれ、制御ハードウェアなども拡張していくことが必要となります。そこで、システムにモジュール性を持たすことで、制御電子機器や冷却機構などを必要に応じて変更したり拡張したりすることができるというわけ。

また、IBM Quantum System Twoでは次世代の量子ビット制御電子機器が高密度の極低温コンポーネントやケーブルと共に組み込まれることになるとのこと。IBMは「エンジニアがハードウェアにアクセスして保守できるように、必要なサポートハードウェアのスペースを最大化した、斬新で革新的な構造設計を持ちます」と説明しています。

IBM Quantum System Two: Design Sneak Preview - YouTube


なお、プロトタイプのIBM Quantum System Twoは2023年に稼働予定です。

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in ハードウェア,   動画, Posted by logu_ii

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