ハードウェア

IBMを超える「量子ボリューム128」の業界最高性能をうたう量子コンピューターシステム「H1」をハネウェルが発表


電子制御システムや自動化機器のメーカーであるハネウェルが、10量子ビットの次世代量子コンピューターシステムモデル「H1」を発表しました。H1で使われる量子コンピューターの量子ボリュームは128で、ハネウェルは「量子コンピューター業界で最高値だ」とアピールしています。

Honeywell Releases Next Generation Of Quantum Computer
https://www.honeywell.com/en-us/newsroom/pressreleases/2020/10/honeywell-releases-next-generation-of-quantum-computer


Honeywell Debuts Quantum System, ‘Subscription’ Business Model, and Glimpse of Roadmap
https://www.hpcwire.com/2020/10/29/honeywell-debuts-new-quantum-system-and-subscription-business-model/

Honeywell advances quantum computing with release of System Model H1 - TechRepublic
https://www.techrepublic.com/article/honeywell-advances-quantum-computing-with-release-of-system-model-h1/

量子コンピューターは、「0か1か」という2進数で情報を処理する従来のコンピューターと異なり、「0と1のどちらも取る」という量子力学の重ね合わせの原理を応用して情報を処理します。この情報処理単位が量子ビットで、量子ビットが増えれば増えるほど、並列して処理できる情報量が指数関数的に増大します。

そして、量子ボリュームは量子コンピューターの回路の長さや複雑さから、量子ビットの制御・読み出しに関わるエラー率やソフトウェアのコンパイラー効率を考慮した性能指標で、その数が大きければ大きいほど、量子コンピューターの性能が高いといわれています。


ハネウェルは、2020年3月に「量子ボリューム64の量子コンピューターを開発し、2020年半ばまでにリリースする」と発表していました。IBMやGoogleが開発する量子コンピューターは、液体窒素などで極低温に過冷却した回路を使った超伝導量子ビットを使う形式ですが、ハネウェルは、電磁場中でイオン粒子を捉えて制御するイオントラップ型量子コンピュータを開発しています。

当時IBMが2020年1月に量子ボリューム32を達成したばかりでしたが、ハネウェルの研究チームは「従来の量子コンピューターよりも少なくとも2倍は強力だ」とする論文を発表して話題となりました。

Demonstration of the QCCD trapped-ion quantum computer architecture
https://www.honeywell.com/content/dam/honeywell/files/Beta_10_Quantum_3_3_2020.pdf


その後、IBMが2020年8月に量子コンピューター業界最高値となる量子ボリューム64を達成したと発表しました。

IBM、量子ボリュームで自社最高の「64」を達成 - EE Times Japan
https://eetimes.jp/ee/articles/2008/24/news037.html


そして、ハネウェルが発表したH1に使われる量子コンピューターは量子ボリュームが128で、IBMの最高記録を上回りました。ハネウェルによれば、MicrosoftのAzure Quantumを介して、企業が量子コンピューティングに直接アクセスできるようなシステムモデルになっているとのこと。

ハネウェルは2020年から2030年までの長期的なロードマップを発表しており、今回発表したH1からH5まで、5世代にわたって量子コンピューターシステムを進化させていくと述べています。


ハネウェルの量子ソリューション部門トップであるトニー・アトリー氏は「ハネウェルの量子コンピューティングのロードマップは、量子コンピューティングビジネスの商業規模を達成するという当社の取り組みを反映しています」「ハネウェルの独自理論によって、量子ビット数の増加や機能変更を通じて、H1世代のシステムを体系的かつ継続的にアップグレードすることができます」とコメント。また、「2020年に需要が急増し、量子コンピューティングを介して実際のビジネス上の問題を解決しようとしている顧客と提携することに興奮しています」と述べました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
量子ビット数5000以上の商用量子コンピューターのクラウドサービスでの提供開始をD-Waveが発表 - GIGAZINE

「量子コンピューターのロードマップ」をIBMが公開、2023年にはついに1000量子ビットの大台に乗る計画 - GIGAZINE

量子コンピューターの性能を表す指標に「量子ボリューム」を用いることの危険性とは? - GIGAZINE

Amazonが量子コンピューティングサービス「Amazon Braket」の一般提供を開始 - GIGAZINE

量子テレポーテーションが電子スピンによる量子ビットで実現可能であると実証される - GIGAZINE

作物の成長を加速させる試みで「量子ドット」が注目されている理由とは? - GIGAZINE

in ハードウェア, Posted by log1i_yk

You can read the machine translated English article here.