IBMが世界初となる商用量子コンピュータ「IBM Q System One」を発表

2019年1月8日、IBMはアメリカのラスベガスで開催されているCES2019で、統合型汎用近似量子コンピューター「IBM Q System One」を世界で初めて商用化することを発表しました。また、IBMは2019年にニューヨークに商用クライアント向けの量子コンピューティングデータセンター「IBM Q Quantum Computation Center」を開設する計画も発表しています。

IBM Unveils World's First Integrated Quantum Computing System for Commercial Use - Jan 8, 2019
https://newsroom.ibm.com/2019-01-08-IBM-Unveils-Worlds-First-Integrated-Quantum-Computing-System-for-Commercial-Use

System One - IBM Q - US
https://www.research.ibm.com/ibm-q/system-one/

IBM Q Sytem Oneのトレーラームービーは以下から見ることができます。

The World’s First Integrated Quantum Computing System - YouTube


IBM Q System Oneの実物がこれ。1辺9フィート(約2.7m)の立方体の中に、量子コンピューターの本体が収まったケースがぶら下がっています。厚さ0.5インチ(約13mm)のガラスで囲われた箱は気密性が高く、フレームはアルミとスチール製。イギリスの王冠を収めるディスプレイケースを設計したGoppionがそのデザインに協力しているとのこと。CES2019会場のIBMブースでは、IBM Q System Oneのレプリカが展示されているそうです。

IBM Q System Oneの中に収まっている量子コンピューターの本体。極冷ユニットと制御用の電子機器は分離されていて、メンテナンス性も重視されているとのこと。また、アルミとスチールのフレームで本体を囲っているのは機密性のほか、位相ノイズと量子デコヒーレンスによる潜在的な振動干渉を避けるためだそうです。

量子コンピューターでは、これまでのコンピューターには解決不可能なレベルで複雑な演算も可能です。

例えば新しい物質や薬品の発見や……

株式市場の複雑な計算

AI(人工知能)の研究開発など、高い演算能力を必要とする場面で活躍することが期待されます。

IBM Q System Oneは、「再現性があり予測可能な高品質な量子ビットを得るために自動較正されるよう設計された量子コンピューターハードウェア」「低温と孤立した量子環境を提供するための極低温工学」「多数の量子ビットを厳密に制御するための高精度な電子機器」「クラウドに安全にアクセスし、量子アルゴリズムのハイブリッドな実行環境を提供する従来のコンピューターシステム」という5つのカスタムコンポーネントで構成されています。

IBM Q System Oneは、IBMが2016年5月から提供している量子コンピューティングクラウドシステム「IBM Q Experienceの進化形にあたります。既にIBM Q Experienceでは670万件を超える実験を実行し、130を超えるサードパーティの研究論文に協力しているとのこと。2017年12月に発表された「IBM Q Network」には、欧州原子核研究機構(CERN)やアルゴンヌ国立研究所など、数多くの研究機関が参加しているそうです。

IBM Q System Oneの登場によって、これまでは企業や大学の実験室でしか扱えなかった量子コンピューターの実物を一般企業でも導入できることが期待されます。また、IBMは2019年後半を目標にニューヨークに「IBM Q Quantum Computation Center」を開設し、IBMの商用量子コンピューティングプログラムを拡張することで、IBM Q Networkの会員や研究機関、企業からのアクセスを可能にする予定としています。