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アニメ・映画・ドラマで見かけた「Emacs」いろいろまとめ


Emacsはオリジナルが1976年にリリースされ、50年経った記事作成時点でも脈々と更新が続いている古参かつ現役のテキストエディタです。歴史の長さゆえに根強い愛好者が多く、同じく長い歴史を持つviとの「エディタ戦争」に代表されるミームにも事欠きません。そんなEmacsは映画などのワンシーンを演出するツールとしても使われることがあり、目ざとく見つけたEmacs愛好家は思わずニヤリとさせることも。AWSのソフトウェアエンジニアであるIan Y.E. Pan氏もそんな一人であり、自身のブログにてEmacsが登場する数々のシーンについて解説していました。

Emacs Appearances in Pop Culture | Ian Y.E. Pan
https://ianyepan.github.io/posts/emacs-in-pop-culture/

◆映画「ソーシャル・ネットワーク」(2010年)
Facebookの創設を描いた映画「ソーシャル・ネットワーク」で、Facebookの元になった「Facemash」を若き日のマーク・ザッカーバーグが構築するシーンがあります。Facemashは女子学生の顔写真に投票するウェブサイトでしたが、大学の全ての寮のウェブサイトから在籍する女子学生の写真をスクレイピングして収集する必要があり、ザッカーバーグはEmacsを起動しながら「500ページも目を通して1枚ずつ写真をダウンロードするなんて絶対に無理だ、だからEmacsでPerlスクリプトを修正しないといけない」と語ります。


◆映画「トロン:レガシー」(2010年)
トロン:レガシー」は「トロン」シリーズの第2作目ですが、冒頭のワンシーンにEmacsが登場します。主人公サム・フリンがエンコム社のOSを攻撃するために起動したハッキングプログラムを、エドワード・ディリンジャー・ジュニアがgrepで検索して終了させようとしてEmacsのeshellを起動します。


◆映画「サイレント・ワールド 地球氷結」(2010年)
オーストラリアとカナダの共同制作によるSFディザスター映画である「サイレント・ワールド 地球氷結」の20分30秒あたりで、ジャックとゾーイという2人の科学者が凍結したハードディスクドライブから衛星写真を復元しようとしているシーンがあります。ほとんどすべてのファイルが破損していると落胆している様子の傍らで、彼らが使用しているコンピューターのモニターにEmacs Lispのスクロール表示がチラリと映っています。「;;;###autoload」「interactive」「save-excursion」といったキーワードが見て取れることから紛れもなく表示されているコードがEmacs Lispであることが確認できます。さらに表示されているEmacs Lispコードを詳しく見ると、xml-parseという実在のモジュールのソースコードであることがわかります。


◆テレビドラマ「シリコンバレー」(2014年~2019年)
米国のテレビドラマシリーズ「シリコンバレー」はハイテク業界の文化をパロディ化したコメディドラマであり、シーズン6まで放送された人気シリーズです。シーズン3・エピソード6のとあるシーンで主人公のリチャードが恋人のウィニーのアパートで一緒にコーディングをしていますが、二人はスペースとタブの使い分けについて意見が衝突します。タブ文字をインデントに使うべきだと頑なに主張するリチャードは「なぜタブの代わりにスペースを使う人がいるのか理解できない。そんなことをするぐらいならEmacsの代わりにVimを使えばいいじゃないか?」と言いますが、ウィニーは「私はVimをEmacsより使ってるわ」と言い返します。するとリチャードは「ああ神様、私たちを助けてください!」と叫んで泣き崩れてしまいます。このやりとりは「エディタ戦争」を知らないと理解しにくいかもしれません。


シーズン4・エピソード2ではチームが自社製品の機能案についてブレインストーミングを行っているシーンがありますが、「Emacsのキーバインド」と書かれた黄色い付箋があります。「指が絡まりそうな」Emacsのキーバインドは長年にわたりネタにされるほど有名で、いろいろな状況で何度となく使用する必要があります。


◆漫画「The Hacker Files」(1992年~1993年)
The Hacker Files」はフリーランスのハッカーが多国籍企業による陰謀を暴き悪の企業を打ち倒す様子を描いた、DCコミックスから出版された全12号のミニシリーズです。第1号に主人公のジャック・マーシャルがコンピュータウイルスと戦うためにEmacsを使ってソースファイルを編集するシーンがありますが、Emacsのユーザーインターフェース自体は描かれておらず「emacs cure.c」というコマンドのみが表示されています。


◆漫画「王様達のヴァイキング」(2013年~2019年)
王様達のヴァイキング」はとある高校生のハッカーが裕福なエンジェル投資家と手を組み、世界秩序を再構築しようとする物語を描いた日本の漫画です。ある章で敵のハッカーがEmacs Lispを使って防犯カメラに侵入するシーンがあります。コードは一見ありふれたLispの一変種ぐらいにしか見えませんが、よくよく読んでみると「pcase」や「seq-map」といったEmacs Lisp固有のキーワードが使われていることを確認できます。


◆OVA「KEY THE METAL IDOL」(1994年~1996年)
KEY THE METAL IDOL」は全15話からなる90年代の日本のアニメで、自分がロボット「キィ」であると信じ込んだ少女・巳真兎季子の物語です。第9話「リターン」に謎の男「D」がコンピュータ端末だけが置かれた独房に閉じ込められているシーンがありますが、「D」が端末のリターンキーを押すとターミナル画面にEmacs Lispのコードがスクロールして表示される様子が描かれています。ここでも「save-excursion」や「set-buffer」といったEmacs Lisp固有のキーワードが使用されていることが確認できます。


◆映画「インターンシップ」(2013年)
インターンシップ」は40歳の営業マン2人がGoogleへの就職をかけ、自分たちよりはるかに若く技術的にも優れた他の応募者たちと競い合う姿を描いたコメディ映画です。登場人物の一人であるニック・キャンベルがGoogleの幹部によるプレゼンテーションを行うシーンにおいて、好印象を与えようとして「UbuntuのデフォルトエディタとしてviではなくEmacsを使ってみてはどうですか?」と質問を投げかけています。幹部はそれに対して「それは実に良い考えだ」と答えていますが、Pan氏は「このシーンは現実離れしている、なぜならもし彼の隣に本物のプログラマーたちが座っていたならその場で全面戦争が勃発していたはずだからだ」とコメントしています。


◆TVアニメ「アルドノア・ゼロ」(2014年~2015年)
日本のSFアニメ「アルドノア・ゼロ」の第5話では、2機のメカが戦うシーンの中でEmacsとEmacs Lispがほんの一瞬だけ移りこんでいます。画面の右下をよく見るとパイロットが初期化ファイル「.emacs」の不具合をデバッグしているように見えます。Emacsユーザーであれば誰もが初期化ファイルが壊れた経験があるはずなのでその辛さはよく理解できますが、ただ戦闘の最中にデバッグするのは前代未聞です。


直後のシーンではスクリーンにEmacs Lispのスニペットが表示されています。よく見ると「progn」「insert」「beginning-of-line」「forward-char」といった特徴的なキーワードが確認できます。


◆ドキュメンタリー映画「AlphaGo」(2017年)
「AlphaGo」はGoogle DeepMindが開発したプログラム「AlphaGo」がAIによって囲碁を習得し、トップクラスの囲碁棋士であるイ・セドル氏と対局した経緯を描いたドキュメンタリー映画です。ナレーターが「ニューラルネットワーク」の意味を解説する冒頭のシーンで、カメラはEmacsでLuaをプログラミングしているソフトウェアエンジニアのUbuntuデスクトップを映し出しています。


デスクトップを確認するとターミナルアプリ・フォント・テーマと何から何までデフォルトのままとなっており、「このソフトウェアエンジニアが根っからのミニマリストかつ純粋主義者であることがよくわかる」とPan氏は指摘しています。


◆Netflixオリジナルドラマ「ドラッグ最速ネット販売マニュアル」(2019年~2025年)
ドラッグ最速ネット販売マニュアル」はドイツ発のNetflixドラマシリーズです。シーズン2第1話でEmacs愛好家のキラが「viには『絶え間なくビープ音を鳴らす』モードと『あらゆるものを壊す』モードの2つしかない」と冗談を言い、それに対してデート相手のレニーが「Emacsの方が断然優れているよ、ただしショートカットを連打しすぎて手がくたびれるまでは」と反論するシーンがあります。両者の応酬に対してPan氏は「私はEvil-mode(Emacs上でVimのキーバインドと高度な編集機能を再現する拡張機能)を有効にしたEmacsを使っているからviとEmacsのいいとこ取りだ!」と主張しています。


◆Huluオリジナルドラマ「マーダー・イン・ザ・ワールドエンド」(2023年)
マーダー・イン・ザ・ワールドエンド」は殺人ミステリー・サイコスリラーのテレビミニシリーズですが、主人公のダービー・ハートがある女性にいきなり「あなたはvi派?それともEmacs派?」と尋ねるシーンがあります。なぜそんな質問をしたかというと女性が明確な反応をするかどうかを確認し、「反応がなければおそらくハッカーではない」と判断するためでした。


◆映画「Haker」(2002年)
Haker」はハッキングへの情熱を共有する2人の高校時代の友人たちが次第に本物のギャングとのトラブルに巻き込まれていく様子を描いたポーランドのコメディ映画です。劇中で1人がファイアウォールの突破に苦戦しているところ、もう1人が「sendmail経由でEmacsを使ってみた?」と提案するシーンがあります。一見「Emacsやメールを介したハッキング」というのは荒唐無稽に聞こえるかもしれませんが、実は1980年代半ばに起きた実在の国際的ハッキング事件で実際に使用された手口であり、事件を元にしたノンフィクション小説「カッコウはコンピュータに卵を産む」が出版されるほど有名なエピソードです。

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