サイエンス

遺伝子編集でHIVの複製能力を殺す治療法が人間でのテスト段階へ


アメリカの医薬品規制を司る食品医薬品局が、遺伝子編集技術「CRISPR」によってヒト免疫不全ウイルス(HIV)が有する「ヒトのDNAに入り込んで複製を生み出す能力」を殺すという治療法のヒト臨床試験を認可しました。

Excision Receives FDA Clearance of IND for Phase 1/2 Trial
https://www.globenewswire.com/news-release/2021/09/15/2297456/0/en/Excision-Receives-FDA-Clearance-of-IND-for-Phase-1-2-Trial-of-EBT-101-CRISPR-Based-Therapeutic-for-Treatment-of-HIV.html

FDA approves first trial investigating CRISPR gene editing as HIV cure
https://www.clinicaltrialsarena.com/news/crispr-gene-editing-hiv-cure/

Excision's CRISPR gene editing therapy for HIV is heading into human testing after FDA clearance | FierceBiotech
https://www.fiercebiotech.com/biotech/excision-hiv-crispr-gene-editing-therapy-cleared-for-human-studies-by-fda

HIVなどのレトロウイルスが治療困難とされる理由は、「宿主のDNAに侵入する」という点にあります。HIVは自分のRNAから作成したDNAをヒトのDNAに割り込ませる形で感染し、このHIVとヒトのDNAが一体化したDNAからウイルスRNAを産生するという手法で感染を拡大しています。

HIVの増え方
https://www.haart-support.jp/aboutHIV/3_2.htm


新たにアメリカの遺伝子治療技術開発企業Excision BioTherapeuticsが発表した「EBT-101」は、遺伝子編集技術CRISPRによって、HIVに感染されたヒトDNAから選択的にHIVのDNAの大部分を切除して、HIVを不活性化するという治療法。EBT-101による治療を施しても体内からHIVを完全除去することは不可能ですが、HIVの複製を抑えることは可能とのことで、同社は「既存の抗レトロウイルス療法に置き換えられる可能性がある」と主張しています。


2021年9月17日の発表では、アメリカ食品医薬品局がEBT-101に対して、人体で医薬品の効果や安全性を検証する第1相試験・第2相試験を承認したと明かされました。これまでのマウスや霊長類を使った実験で、その有効性や無害性が実証されたため、ヒトでの実験が認められた形です。

同社は「今回の承認は、HIV感染者のための機能的治療法の開発に長年取り組んできた結果です」「2021年内に第1相試験・第2相試験を行う予定です」と記しています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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