中国とロシアが海底ケーブルの敷設を強化中、アメリカからは通信傍受を懸念する声
中国およびロシア政府が、インターネットのインフラストラクチャ―として世界中の海底に敷設されている海底ケーブルの整備を強化したり関連企業を買収したりしていると報じられています。これにより「中国やロシアが海底ケーブルに通信内容を傍受するバックドアを仕込む可能性」も指摘されています。
Report: Beijing, Moscow step up efforts to control the Internet’s backbone - The Record by Recorded Future
https://therecord.media/report-beijing-moscow-step-up-efforts-to-control-the-internets-backbone/
Cyber defense across the ocean floor: The geopolitics of submarine cable security - Atlantic Council
https://www.atlanticcouncil.org/in-depth-research-reports/report/cyber-defense-across-the-ocean-floor-the-geopolitics-of-submarine-cable-security/
Sept. 11’s imprint on the U.S. surveillance apparatus - POLITICO
https://www.politico.com/newsletters/weekly-cybersecurity/2021/09/13/sept-11s-imprint-on-the-us-surveillance-apparatus-797557
The U.S. Should Get Serious About Submarine Cable Security | Council on Foreign Relations
https://www.cfr.org/blog/us-should-get-serious-about-submarine-cable-security
対中国の研究を主流とするシンクタンクの大西洋協議会が公開している海底ケーブルに関するレポートによると、世界中の海底ケーブルの過半数を超える約59%は、依然として民間企業により配備・保守されています。一方で、国有企業あるいは国営の事業体が配備・保守している海底ケーブルの割合は、全体の20%弱に達しているそうです。
世界中に敷設されている海底ケーブルの本数は年々増加しており、2016年には15本、2020年には28本が新しく敷設されました。「これは驚異的な成長率である」と語るのが、海底ケーブルに関するレポートをまとめた大西洋協議会のジャスティン・シャーマン氏。
シャーマン氏によると、中国企業は2021年だけで約44本の異なる海底ケーブルの敷設プロジェクトに参加しており、これらのプロジェクトは習近平国家主席が主導する1兆ドル(約110兆円)規模のインフラストラクチャプロジェクトの一部であるとのこと。
なお、海底ケーブルの敷設プロジェクトに参加している中国企業には、中国移動通信や中国電信、中国聯合通信、Huawei傘下で海底ケーブル事業を担当するHuawei Marineなどが含まれるそうです。
ワシントンD.C.にあるシンクタンクの戦略国際問題研究所で上級副社長兼技術公共政策プログラムのディレクターを務めるジェームズ・ルイス氏は、「誰もが知っていると思いますが、中国があなたの通信内容を傍受する可能性は十分にあります。中国が海底ケーブルにアクセスできるということに納得できるでしょうか?答えはノーです」と語り、海底ケーブルへの投資を進める中国がインターネット通信を傍受する可能性を危惧しています。
一方で、ロシアでは国営企業のRostelecomなどがロシアの離島と本土、ヨーロッパをつなぐ海底ケーブルの敷設を進めています。RostelecomのCEOは海底ケーブルの敷設を「始まりに過ぎない」と語っており、今後より多くの海底ケーブルの敷設を進めていく計画であることを示唆しています。ロシアのウラジミール・プーチン大統領との会談の中で、RostelecomのCEOは「世界中に海底ケーブルを敷設する」という野心的な計画を公にしており、2021年には少なくともロシア国内に3本の海底ケーブルを敷設するとしています。
アメリカ国内の放送通信事業の規制監督を行う連邦通信委員会(FCC)は、GoogleやFacebookといった企業がPacific Light Cable Networkと共に進めていた海底ケーブル敷設プロジェクトをキャンセルし、同社のライセンスを停止しました。これにはPacific Light Cable Networkの親会社が中国企業であることが関係しているとみられています。
FCCはPacific Light Cable Networkのライセンスを停止した理由を「国家安全保障上のリスクとみなしたため」と説明しており、アメリカ司法省は「中国政府が海底ケーブルを介してアメリカ人に関する情報を収集し、最終的に香港にあるデータを制御・悪用するためにトラフィックをバイパスしようとする可能性がある」と述べました。
なお、過去には海に潜りダイバーが海底ケーブルからデータを傍受するアイヴィー・ベルという盗聴作戦をアメリカ海軍と国家安全保障局(NSA)が実施しています。
インターネットを支える海底ケーブルを巡る知られざる盗聴戦争とは? - GIGAZINE
By Plarad Japan
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