乗り物

貨物船やタンカーの推進システムとして「風力」が見直されており円筒形や硬質の帆の設置が進んでいる

by Anemoi Marine Technologies/Vale

かつて商業輸送や漁業のための船はほとんどが風力を利用する帆船でしたが、19~20世紀の蒸気船や化石燃料の台頭によって徐々に衰退していきました。ところが近年、環境対策や燃料費の高騰、技術の発達などの影響を受けて、かつて商業輸送の現場から消え去った風力推進が見直されていると、海事・海運関連メディアのgCaptainが報じています。

The Return of Sail Power: Cargo Ships Are Turning Back to the Wind
https://gcaptain.com/the-return-of-sail-power-cargo-ships-are-turning-back-to-the-wind/

Wind-Assisted Propulsion Systems for vessels | bound4blue
https://bound4blue.com/esail/

風力推進補助装置・省エネ装置 | 船舶の省エネ装置|PBCF|商船三井テクノトレード株式会社
https://www.pbcf.jp/other/

商業航路では1世紀以上にわたり、帆船から燃料を用いた動力船への移行が進んでいました。それにもかかわらず、近年は貨物船・タンカー・コンテナ船などあらゆる船舶に、風力を利用した巨大な風力推進システムの導入が進んでいるとgCaptainは指摘しています。


近年導入が進んでいる風力推進システムは、貨物船を従来の帆船に戻すというものではなく、むしろ既存の動力源のサポートとして風力を利用し、燃料消費量を削減することが目的です。国際風力船協会によると、2026年9月時点では100隻以上の大型商船が最新の風力推進システムを搭載しており、その積載能力は500万載貨重量トン(船が安全に航行できる積載量)を超えているとのこと。

すでに風力推進システムは実証段階を超えつつあり、2026年9月にはロジスティクス企業のマースクが8700TEU級のコンテナ船に35mのローターセイルを設置する計画を発表しました。この事例はコンテナ船にローターセイル設置する初の試みであり、船は2027年に大西洋定期航路での試験運用を開始する予定となっています。

ローターセイルは従来の帆とは異なり、風が通過する際に甲板上に設置した円筒をモーターで回転させ、マグヌス効果による揚力を推進力に変えるというものです。マグヌス効果は「回転しながら進む物体にはその推進方向に対して垂直の力が生じる」という現象であり、野球のピッチャーが投げたボールにも発生しています。このローターセイルの原理自体は100年以上前から存在したものの、近年は制御技術の向上と素材の進歩により、かつては想像もできなかった規模の船舶でも実用可能となりました。

総合資源会社ヴァーレが運用する40万トン級の鉱石運搬船・Sohar Maxには、すでに5基のAnemoi Marine Technologies製35m級ソーラーセイルが設置されています。ヴァーレは将来的に、エタノールを燃料とする超大型鉱石運搬船にもローターセイルを採用する計画です。

by Anemoi Marine Technologies/Vale

また、日本の出光タンカー向けに建造中の2隻の超大型原油タンカーは、2028年の就航時にNorsepower製のローターセイルが搭載される予定です。これにより、世界最大級の船舶に風力推進システムがもたらされることになります。

液化天然ガス(LNG)輸送もそれに続く可能性があり、韓国船級協会HD現代重工業BAR TechnologiesLiberian Registryは、BAR Technologies製のウィンドウィングスを搭載した17万4000m3のLNGタンカーの研究計画について発表しました。ウィンドウィングスは「硬翼帆」とも呼ばれ、風の向きに合わせて帆の角度を調節することで風を推進力にします。

この計画では船の居住区画を前方に移動させることで、甲板上に大型の硬質帆を設置するスペースを確保しており、LNGタンカーに風力推進システムを適用する際の技術的・安全面・規制上の課題を検証するとのこと。gCaptainは、LNGタンカーは商業運航されている船舶の中でも特に高度な技術が用いられ、運航スケジュールが厳密に管理されている船舶のひとつであり、LNGタンカーにおける風力推進の実現は大きな一歩だと主張しました。

三菱商事の子会社であるMCシッピングが保有するPyxis Oceanは、甲板にBAR Technologies製のウィンドウィングスが設置されているのがわかります。

by BAR Technologies

風力推進システムにはさまざまなタイプがあり、Bound4blue製のeSAILという「吸引帆」は空気を吸い込むことでより大きな推進力を生み出すシステムです。以下はジュース運搬船のAtlantic Orchardに設置された26mのeSAILです。

by Bound4blue

また、2025年には全長76mの折りたたみ式カーボンファイバー製マストを備えた商用帆船・Neoliner Originが、フランスとアメリカを結ぶ大西洋航路で就航しました。Neoliner Originが帆を張った様子はこんな感じ。

by Solent Ships

ほとんどの新たな風力推進システムは高度に自動化されたシステムを採用しており、帆は風速・風向・船速・航路に基づいて自動的に調整されます。風力推進システムの搭載による燃料節約効果は1桁~2桁台前半といわれていますが、年間数千トンもの燃料を消費する大型外航船では、わずかな節約でもすぐに大きな効果が得られます。また、多くの貨物船に後から設置することが可能なのも利点のひとつです。

gCaptainは、「風力への依存から脱却しようと1世紀以上も努力してきた海運業界は、風が適切な方向に吹いているときには、無料のエネルギーを無視する理由はほとんどないことに気付き始めています」と述べました。

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in 乗り物, Posted by log1h_ik

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