サイエンス

料理や加工食品に広く使われる「大豆油」が肥満につながる仕組みの一端が判明


大豆油はアメリカで最も多く消費されている食用油で、調理だけでなく加工食品にも広く使われています。大豆油の摂取が肥満にどのように関わるのかを調べるため、カリフォルニア大学リバーサイド校などの研究チームが、肝臓で脂肪の代謝を調節するタンパク質に着目してマウス実験を行いました。

P2-HNF4α alters linoleic acid metabolism and mitigates soybean oil-induced obesity: role for oxylipins | Journal of Lipid Research
https://www.jlr.org/article/S0022-2275(25)00195-6/fulltext

Study links America’s favorite cooking oil to obesity | UCR News | UC Riverside
https://news.ucr.edu/articles/2025/11/26/study-links-americas-favorite-cooking-oil-obesity

One of America's Most Widely Consumed Ingredients Linked to Metabolic Changes And Obesity : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/one-of-americas-most-widely-consumed-ingredients-linked-to-metabolic-changes-and-obesity


大豆油の主要成分の1つは、体内で合成できず食事から摂取する必要があるオメガ6脂肪酸の「リノール酸」です。少量のリノール酸は健康維持に欠かせませんが、アメリカでは大豆油の普及に伴って摂取量が大幅に増え、過剰摂取が問題視されています。

以下のグラフは今回の研究を率いたソニア・デオル氏がアメリカ農務省(USDA)、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)、アメリカ合衆国国勢調査局のデータをまとめたもので、横軸は年、オレンジ色の棒はアメリカにおける大豆油の総消費量、黒い棒は肥満の人の数を表しています。1952年から2024年にかけて両方が増えていますが、この並行した推移だけで大豆油が肥満の原因だと判断することはできません。


今回の研究にも参加した研究者らは2015年に、「大豆油を多く含む高脂肪食を与えた雄のマウスは、カロリー密度が同じココナッツ油主体の高脂肪食を与えたマウスより体重が増えやすい」という結果を報告していました。今回の研究ではその違いが生じる仕組みを調べるため、研究チームは肝臓で多数の遺伝子の働きを調節するタンパク質「肝細胞核因子4α(HNF4α)」の型が異なるマウスを使い、大豆油の成分が体内で変化してできる物質の役割を調べました。

HNF4αには、遺伝子の読み取りを始める位置の違いによって作られる「P1型」と「P2型」があり、通常の成体マウスの肝臓ではP1型が主に作られます。研究チームは遺伝子を改変していない野生型(WT)の雄マウスに加え、P2型だけを作るよう遺伝子を改変した「α7HMZマウス」を用意しました。そして、それぞれのマウスを「低脂肪食」、大豆油を多く含む「高脂肪食」、リノール酸が少ない「ココナッツ油主体の高脂肪食」を与える3グループに分け、生後3週から最大35週間にわたって体重や血糖値、肝臓の状態などを調べました。なお、各グループには少なくとも12匹のマウスが割り当てられました。


その結果、低脂肪食とココナッツ油主体の高脂肪食では、遺伝子を改変していないマウスと遺伝子を改変したマウスの体重増加にほとんど差がありませんでした。一方、大豆油を多く含む高脂肪食を与えたグループでは遺伝子改変マウスの体重が遺伝子を改変していないマウスほど増えず、遺伝子改変マウスではココナッツ油主体の食事と大豆油を多く含む食事で体重増加がほぼ同じでした。

以下のグラフは大豆油を多く含む高脂肪食を与えた2種類のマウスの体重推移を示しており、横軸は食事を与え始めてからの週数、縦軸は体重(グラム)を表しています。また、塗りつぶしたオレンジ色の点が遺伝子を改変していないマウス(WT)、白抜きの点が遺伝子改変マウス(α7HMZ)を表しており、食事を与え始めて10週を過ぎた頃から体重の差が広がっていることが分かります。


また、大豆油を多く含む高脂肪食を与えた遺伝子改変マウスは遺伝子を改変していないマウスよりも肝臓への脂肪蓄積が少なく、ブドウ糖を処理する能力の低下も抑えられていました。以下の画像は脂肪を赤く染める「オイルレッドO染色」を施した肝臓組織で、左が遺伝子を改変していないマウス、右が遺伝子改変マウスです。遺伝子改変マウスでは赤い脂肪滴が小さくなっています。


さらに、研究チームが肝臓に含まれる代謝物やタンパク質を網羅的に分析したところ、遺伝子改変マウスではリノール酸などの脂肪酸を「オキシリピン」と呼ばれる生理活性物質へ変換する複数の酵素が少なくなっていました。遺伝子改変マウスの肝臓にはリノール酸そのものが多く蓄積していた一方、肥満への関与が疑われる一部のオキシリピンは少なかったため、研究チームは大豆油やリノール酸そのものではなく、体内で何に変化するかが重要だと考えています。

研究チームは肥満に関わる可能性が高いオキシリピンを4種類まで絞り込みましたが、低脂肪食を与えた遺伝子改変マウスではこれらのオキシリピンが多くても肥満になりませんでした。この結果から、研究チームはオキシリピンの蓄積が肥満になる条件として必要ではあれど、それだけで肥満を起こすには不十分だと指摘しています。また、大豆油を多く含む食事を与えた遺伝子を改変していないマウスでは、クエン酸などの細胞内でのエネルギー産生に関わる代謝物が減っており、エネルギー消費の低下も体重増加に関与した可能性があります。

人間にもHNF4αのP1型とP2型が存在し、慢性疾患や絶食などで代謝に負荷がかかった時にはP2型が多くなる場合があります。しかし、今回の実験対象は雄のマウスだけで、詳しく分析した組織も肝臓に限られているため、人間でも大豆油が同じ仕組みで肥満につながることが確認されたわけではありません。

デオル氏は「大豆油自体が悪いわけではありません。しかし、私たちが摂取している量は、人間の体が対処できるようには進化してこなかった代謝経路を作動させています」と述べました。

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in サイエンス,   , Posted by log1b_ok

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