ソーシャルメディアは「反ユダヤ主義的な投稿」を公式フォームから報告してもほとんど対応しないとの指摘
ソーシャルメディアは世界中の人々がつながる重要なツールになっていますが、時には「ソーシャルメディアがヘイトスピーチの温床になっている」と非難されることもあります。非営利団体のデジタルヘイト対策センター(CCDH)が発表した新たなレポートでは、「Facebook・Twitter・Instagram・YouTube・TikTokは、公式の違反報告システムを介して報告された反ユダヤ主義的な投稿の大部分に対応していない」と指摘されています。
Failure to Protect | Center for Countering Digital Hate | United Kingdom
https://www.counterhate.com/failuretoprotect
Social media giants ignore reported antisemitism, digital watchdog warns | Jewish News
https://jewishnews.timesofisrael.com/social-media-giants-ignore-reports-of-antisemitism-digital-watchdog-warns/
A ‘safe space for racists’: antisemitism report criticises social media giants | Social media | The Guardian
https://www.theguardian.com/media/2021/aug/01/a-safe-space-for-racists-antisemitism-report-criticises-social-media-giants
CCDHの研究チームは2021年5月18日~6月29日の約6週間にわたり、Facebook・Twitter・Instagram・YouTube・TikTokの5つのソーシャルメディアにおいて、「反ユダヤ主義的な投稿を公式の違反報告システムで通知し、その対応をチェックする」という調査を行いました。今回の調査で報告されたのは、合計714件の「明らかにプラットフォームのポリシーに違反している投稿」であり、ナチスやネオナチ、白人至上主義に関するものなどが含まれていたほか、新型コロナウイルスのパンデミックに関してユダヤ人を非難するもの、ユダヤ人コミュニティを「イルミナティ」と呼ぶ陰謀論などが含まれていたそうです。これらの投稿は、合計で730万回も閲覧されていたとのこと。
調査の結果、公式のフォームから反ユダヤ主義的な投稿を報告したにもかかわらず、投稿の削除やアカウントの閉鎖といった対処が行われたのは全体の16%に過ぎず、84%は対処されなかったことが判明しました。研究チームが報告した件数や、各ソーシャルメディアが対応した割合は以下の通り。
・Facebook:129件の報告のうち、対処したのは14件(10.9%)。
・Twitter:137件の報告のうち、対処したのは15件(10.9%)。
・TikTok:119件の報告のうち、対処したのは22件(18.5%)。
・Instagram:277件の報告のうち、対処したのは52件(18.8%)。
・YouTube:52件の報告のうち、対処したのは11件(21.2%)。
Facebookは2020年10月に「ホロコーストを否定するコンテンツを全面的に禁止する」と発表していますが、CCDHの研究チームが「ホロコーストを否定する記事を宣伝する投稿」を報告したところ、投稿は削除されず「虚偽の情報」としてラベル付けされただけでした。この記事は合計で25万件以上のいいねや共有、コメントといった反応を受け取っているとのこと。
Twitterではホロコーストを否定する人々によって使われる「#holohoax」や、反ユダヤ主義的な陰謀論の主張者が使う「#JewWorldOrder」などのハッシュタグへの対応が弱いことが指摘されています。また、ハッシュタグへの対応はInstagramでもうまくいっていなかったと研究チームは述べています。
ショートムービー共有SNSのTikTokでは、反ユダヤ主義的な投稿が「ユダヤ人ユーザーが投稿した動画へのコメント」という形で多く見られましたが、報告した投稿の4分の3近くが対処されませんでした。対処した場合も「コメントの削除」がほとんどであり、アカウントを停止するといった厳しい対処はめったに行われなかったそうです。
さらに研究チームは、YouTubeで反ユダヤ主義的な41個の動画を特定しています。これらの動画は平均で6年間にわたって公開され続けており、合計で350万再生を記録していたとのこと。
CCDHのイムラン・アフメドCEOは、「ソーシャルメディアは人種差別主義者にとって、結果を恐れずに陰謀やヘイトに満ちた言葉を常態化できる『安全な空間』となっています」「これはアルゴリズムや自動化に関するものではありません。私たちの調査によると、人間のモデレーターに通知された場合であっても、ソーシャルメディア企業は偏見を持つ人のアカウントを放置して、ヘイトをオンラインに残しています」と指摘しました。
Facebookの広報担当者はThe Guardianへの声明で、「私たちは反ユダヤ主義との戦いで進歩を遂げてきましたが、この取り組みが終わることはありません。レポートは、Facebookがヘイトスピーチに対処する量が2017年から15倍も増加し、プラットフォームでヘイトスピーチが広がる割合が低下したことや、97%のヘイトスピーチを誰かが報告する前に発見しているという事実を考慮していません」「ヘイトの居場所はFacebookのプラットフォームにはありません」と述べています。
Twitterの広報担当者は、同社が反ユダヤ主義を非難しており、オンラインでつながるためのプラットフォームをより安全な場所にするための作業を行っているとした上で、「私たちはまだやるべきことがあると認識しており、これらの継続的な取り組みにおいて、利害関係者のフィードバックに耳を傾けて統合していきます」とコメントしました。
TikTokは声明の中で反ユダヤ主義を非難し、悪意のある表現を容認せず、ポリシーに違反するアカウントとコンテンツを積極的に削除すると主張。「私たちは、コミュニティを保護する方法を継続的に改善することにひたむきに取り組んでいます」と述べています。
YouTubeは声明の中で、悪意のある表現を削除する取り組みは過去数年間で大幅な進歩を遂げているとしています。「この作業は進行中であり、フィードバックに感謝します」と、広報担当者は述べました。
なお、InstagramはThe Guardianのコメント要請に対し、記事が公開される前に応答しなかったとのことです。
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