老舗セキュリティソフト「ノートン」開発元が8800億円以上で「Avast」を買収か
by Tony Webster
セキュリティソフト「ノートン 360」などを提供するセキュリティ企業・ノートンライフロック(旧社名:シマンテック)が、アンチウイルスソフトウェア「Avast Antivirus」で知られるAvast Software(Avast)の買収交渉を行っていることが報じられました。この動きは、2019年に法人向けセキュリティ事業を売却し、民生向け事業を営む企業として再出発したノートンライフロックが、より消費者向けソフトウェアへ注力することを示唆しています。
NortonLifeLock in Talks to Buy Avast - WSJ
https://www.wsj.com/articles/nortonlifelock-in-talks-to-buy-avast-11626287085
UK-based cybersecurity firm Avast in merger talks with NortonLifeLock | Reuters
https://www.reuters.com/article/us-avast-m-a-nortonlifelock-idUSKBN2EK2C5
海外メディアのウォール・ストリート・ジャーナルによると、Avastは2021年7月14日に、ノートンライフロックとの間で現金と株式による買収交渉が行われていると認めたとのこと。チェコのプラハに本拠を置くAvastの株式はロンドン証券取引所で取引されており、市場価値は約72億ドル(約7900億円)です。買収時の上乗せ(買収プレミアム)を考慮すると、最終的な買収額は80億ドル(約8800億円)を超える可能性があると、ウォール・ストリート・ジャーナルは述べています。
Avastによると、ノートンライフロックはイギリスのテイクオーバー・コード(公開買付規則)に従い、2021年8月11日までに明確な買収提案を行う必要があるそうです。関係者はウォール・ストリート・ジャーナルに対し、買収交渉がスムーズに進めば、8月を待たず7月中に買収取引が完了する可能性があると伝えたとのこと。
Avastのルーツは1988年、当時まだ社会主義だったチェコスロバキア社会主義共和国で、Eduard Kučera氏とPavel Baudiš氏がアンチウイルスソフトウェアの協同組合「Alwil」を設立したことでした。その後、1989年のビロード革命で共産党独裁体制が崩壊して資本主義国家になると、1991年に共同経営企業へと移行しました。2人の創設者らは依然としてAvastの株式のうち35%を保有しており、取締役会に参加しています。
アンチウイルスソフトウェアの分野で存在感を増したAvastは、1997年にマカフィーから買収提案を受けるものの拒否し、代わりにウイルス対策製品をライセンス供与した経緯があります。2020年の時点では全世界に4億3500万人のユーザーを抱えており、年間収益は約8億9300万ドル(約981億円)だったとのこと。
一方、アメリカ・アリゾナ州に本拠を置くノートンライフロックは、かつてシマンテックとして知られていました。シマンテックは2019年に、ブロードコムへ107億ドル(約1兆1700億円)でエンタープライズ向け事業を売却。ノートンライフロックと社名を変更した後は、「ノートン 360」などの消費者向け製品を販売しており、市場価値は160億ドル(約1兆7600億円)となっています。
ノートンライフロックがAvastの買収に成功すれば、消費者向けソフトウェアの販売にさらなる弾みが付くと予想されています。なお、ウォール・ストリート・ジャーナルが今回の買収交渉について報じた後、ノートンライフロックの株価は4%下落したとのことです。
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