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Google検索によって作られる「目に見えない地政学的な情報の境界」を視覚化する「Search Atlas」


普段から何気なく使っているGoogle検索は、ユーザーの使う言語や住んでいる地域によって検索結果を調整しているため、同じ言葉を検索しても国や地域が違うと検索結果も変わります。そんな地政学的な「情報の境界」を視覚化するため、マサチューセッツ工科大学とカーネギーメロン大学の研究者らが、「Search Atlas」という新たなツールを開発しました。

Search Atlas: Visualizing Divergent Search Results Across Geopolitical Borders | Designing Interactive Systems Conference 2021
https://dl.acm.org/doi/10.1145/3461778.3462032

Search Atlas: Visualizing Divergent Search Results Across Geopolitical Borders
https://searchatlas.org/

研究チームは、「インターネットは地理的、言語的、文化的、政治的な目に見えない境界線で一杯です。これは個々のユーザーが目にできる情報を制限します。検索エンジンは地域や言語、その他のユーザープロファイルに従って検索結果を調整することで、『情報の境界線』を形作ります」と指摘しています。

そこで開発されたのが、Google検索が生み出す目に見えない情報の境界線を視覚化するツール「Search Atlas」です。実際にSearch Atlasがどのようなツールになっているのかは、マサチューセッツ工科大学のKatherine Ye氏がTwitterに投稿した以下のムービーを見るとよくわかります。


例えば、アメリカに住む人が「god(神)」というワードでGoogle検索してみた場合……


検索結果にはキリスト教に関連するものが中心に表示されます。


画像検索の結果を見ても、キリスト教に関連するものばかりです。


ところが、検索する地域や言語が違えば、検索結果に表示される結果にも変動があります。「Search Atlas」を使用すると、1回の検索で3つの言語や地域の検索結果を並列で表示することが可能。左から「日本(日本語)」「アラブ首長国連邦(アラビア語)」「アメリカ(英語)」の検索結果を表示するように設定し、再び「god」というワードで検索してみると……


検索結果は以下のようになりました。日本語の検索結果には神道に関するものが中心に表示されていますが、アラビア語の検索結果にはイスラム教の神・アッラーに関するものとなっています。このように、Search Atlasを使ってさまざまな国の検索結果を表示することで、自分がアクセスしやすい情報が制限されていることが実感できます。なお、ムービーに表示されている検索結果は、いずれも英語に翻訳されたものです。


また、Search Atlasでは画像検索を行うこともできます。以下に表示されているのは、「god(神)」の画像検索結果でトップに表示された画像を、世界地図に対応するように並べたもの。中国のあたりには、ソーシャルゲーム・原神に登場するパイモンらしきイラストが見えます。


以下が、同一または類似した画像を表示した地域を集めたもの。キリスト教圏とイスラム教圏、仏教を含むその他で分かれているようで……


宗教ごとに色分けするとこんな感じ。Search Atlasを使うことで、「地政学的な情報の境界」という見方で世界地図を作ることも可能とのことです。


より多くの条件で検索してみた結果は、以下のムービーで紹介されています。

Search Atlas: Visualizing Divergent Search Results Across Geopolitical Borders - YouTube


ロシアは2014年、ウクライナの領土とみなされているクリミア半島をロシア連邦の領土に加えました(クリミア併合)。そこで、「ロシア(左)」「ウクライナ(中)」「オランダ(右)」という異なる地域で「Crimean annexation(クリミア併合)」を検索してみたところ、ロシアの検索結果だとクリミアは「Russian Federation(ロシア連邦)」の一部であるとの結果が、ウクライナだとクリミアは「occupation(占領)」されている状態だとの結果が、オランダだとクリミア併合に関するロシアへの「sanction(制裁)」に焦点を当てた結果が表示されました。


続いて、政治的にデリケートな単語であることが知られる「Tinanmen Square(天安門広場)」というワードで、「イギリス(左)」「シンガポール(中)」「中国(右)」の3カ国で検索してみた結果がこれ。イギリスとシンガポールでは、六四天安門事件(天安門事件)に関する画像が表示されていますが……


中国の検索結果には天安門事件に関する画像はなく、観光客向けの画像のみが表示されていました。なお、中国国内ではGoogle検索がブロックされていますが、規制を回避して利用することは可能だとのこと。


また、「god(神)」というワードで画像検索した結果を世界地図に対応して並べた図がこれ。キリスト教圏の国々では、主にキリスト教に関連する画像が表示されています。


イスラム教圏では神の姿そのものが描かれないのが特徴的。


なお、日本の画像は神道に関連するものとムービーでは説明されていましたが、これはピクシブ百科事典の「」の項目にあるイラストであり、神道とは関係ないと思われます。


画像検索を世界地図に対応させて並べると、離れた地域で同じ画像が表示されていることや……


隣り合った国でも全く違う画像が表示されることが確認できます。


また、「how to combat climate change(気候変動と戦う方法)」というワードで検索した結果を、単語の関連度で並べたものがこれ。ドイツやルクセンブルクといったヨーロッパの高所得国家では、「protection(保護)」「sensible(分別のある)」といった言葉が検索結果に並ぶ傾向がありましたが……


モーリシャスやトリニダード・トバゴといった島国では、「vital(致命的)」「signs(兆候)」「harmful(有害な)」「vulnerability(脆弱な)」「enormity(極悪な)」「daunting(気をくじく)」「dispiriting(落胆する)」といった、より差し迫った危機を示唆する言葉が並んでいます。このように、特定のトピックに対する主要な見方を国や地域ごとに知る上でも、「Search Atlas」は役に立つ可能性があります。


なお、記事作成時点では「Search Atlas」は一般に公開されていませんが、今後はサービスのプライベートベータ版のテストを行い、アクセスを拡大することを検討しているとのことです。

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in ソフトウェア,   ネットサービス,   動画, Posted by log1h_ik

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