一部PCは「TPM 2.0をサポートしていないのにWindows 11がインストールされている」と判明、中国やロシア向けの製品か
2021年6月25日、MicrosoftがWindowsの次期メジャーバージョンとなる「Windows 11」を発表しました。Windows 11は「トラステッド・プラットフォーム・モジュール(TPM)のサポート」が必須システム要件とされていますが、「Microsoftの承認があればTPMをサポートしてなくてもWindows 11をインストールできる」ことが明らかになりました。TPMをサポートしないのにも関わらずWindows 11がインストールされるPCは、中国やロシア向けのプロダクトの可能性があると報じられています。
Windows 11 to Ship Without TPM Requirement for 'Special Purpose' Systems | Tom's Hardware
https://www.tomshardware.com/news/windows-11-to-ship-without-tpm-requirement-for-special-purpose-systems
Windows 11 processor requirements from Intel, AMD, Qualcomm • Pureinfotech
https://pureinfotech.com/windows-11-processor-requirements-intel-amd-qualcomm/
Windowsの次期メジャーバージョン「Windows 11」を導入できるPCの要件として、「1GHz以上で2コア以上の64ビット互換プロセッサまたはSoC」「4GB以上のメモリ」「64GB以上の記憶装置」といったスペックのほか、「TPM 2.0」も必須だと発表しました。TPMはマザーボードに組み込まれたないしはCPUに別途追加されたチップのことで、暗号化キーやユーザー認証などの機密データをハードウェア的に保護するという役割を果たします。
MicrosoftがWindows 11で必須にしている「TPM」とは?なぜ必須なのか? - GIGAZINE
しかし、Microsoftが公開した「Windows 11 最小ハードウェア要件」に記載された「3.6.1 Trusted Platform Module (TPM)」の項では、「A UEFI firmware option to turn off the TPM is not required. Upon approval from Microsoft, OEM systems for special purpose commercial systems, custom order, and customer systems with a custom image are not required to ship with a TPM support enabled.(TPMをオフにするUEFIファームウェアオプションは必要ありません。Micorosoftの承認を受けた場合、特別目的の商用システム向けOEMシステム・カスタムオーダー・カスタムイメージを有するカスタマーシステムについては、TPMサポートを有効化して出荷する必要はありません)」と、Micorosoftの許可を受けた一部のシステムではTPM 2.0が有効でないPCにWindows 11をインストールして出荷して良いと明記されています。
Minimum Hardware Requirements for Windows 11.pdf
(PDFファイル)https://download.microsoft.com/download/7/8/8/788bf5ab-0751-4928-a22c-dffdc23c27f2/Minimum%20Hardware%20Requirements%20for%20Windows%2011.pdf
このことから、IT系ニュースサイトのTom's Hardwareは「TPM 2.0なしでWindows 11をインストールできる特別なISOか、インストール中にTPM制限をバイパスする何らかの方法が用意されているに違いない」と指摘。こうした回避策は中国やロシアのような国のために用意されているのでは、と主張しました。
Tom's HardwareがTPM 2.0回避版のWindows 11が中国やロシア向けだと語る理由は、これらの国がTPMを禁止しているため。中国ではTPMの代わりに政府規定の「Trusted Cryptography Module(TCM)」を採用しており、TPMは違法。ロシアではTCMに相当する製品はないものの、特定の強度レベルを備える暗号化製品はTPMに限らずロシア当局によるレビューと承認が必須とされています。
もちろん中国やロシア向けではない何らかの目的のためにTPM 2.0回避版が用意されている可能性も考えられるため、Tom's HardwareはMicrosoftに問い合わせを行っていますが、2021年6月27日時点では「回答待ち」とのことです。
なお、「Windows 11 最小ハードウェア要件」からリンクされた「CPUに関する要件」は以下となります。
◆Intelプロセッサ
・第8世代Coffee Lake
・第9世代Coffee Lake Refresh
・第10世代Comet LakeおよびIce Lake
・第11世代Rocket LakeおよびTiger Lake
・Pentium GoldおよびSilver
・XeonのSkylake-SP、Cascade Lake-SP、Cooper Lake-SP、Ice Lake-SP
一覧は以下。
Windows Processor Requirements Windows 11 Supported Intel Processors | Microsoft Docs
https://docs.microsoft.com/en-us/windows-hardware/design/minimum/supported/windows-11-supported-intel-processors
◆AMDプロセッサ
・Ryzen2000、3000、4000、5000
・Ryzen Threadripper 2000、3000、Pro 3000
・EPYCの第2世代および第3世代
・AthlonのGold、Silver、3xxx、300x
一覧は以下。
Windows Processor Requirements Windows 11 Supported AMD Processors | Microsoft Docs
https://docs.microsoft.com/en-us/windows-hardware/design/minimum/supported/windows-11-supported-amd-processors
◆Qualcommプロセッサ
・Snapdragon 850
・Snapdragon 7c
・Snapdragon 8c
・Snapdragon 8cx
・Snapdragon 8cx(第2世代)
・Microsoft SQ1
・Microsoft SQ2
一覧は以下。
Windows Processor Requirements Windows 11 Supported Qualcomm Processors | Microsoft Docs
https://docs.microsoft.com/en-us/windows-hardware/design/minimum/supported/windows-11-supported-qualcomm-processors
これらのWindows 11公式対応CPUについて、Tom's Hardwareは「不思議なことにSkylake-XはTPMをサポートしているのにもかかわらず、リストに記載されていません」と述べています。
自分のPCがWindows 11に対応しているかどうかを調べるツールについては、以下の記事で解説しています。
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