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女性の性的画像がオンラインでさらされる「デジタル性犯罪」が急増していると人権団体が警鐘を鳴らす


インターネットの発達に伴って「相手がさらされたくない画像をSNSや掲示板でさらす」という嫌がらせが増加しており、リベンジポルノなどの事件は世界各国で発生しています。韓国では「女性の盗撮画像」がオンラインでさらされる性犯罪が急増しているとのことで、ニューヨークに本拠を置く人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチが、韓国における「デジタル性犯罪」に関する報告書を公開しました。

Digital Sex Crimes in South Korea | HRW
https://www.hrw.org/report/2021/06/16/my-life-not-your-porn/digital-sex-crimes-south-korea

South Korea: Internet Sexual Images Ruin Women’s Lives | Human Rights Watch
https://www.hrw.org/news/2021/06/15/south-korea-internet-sexual-images-ruin-womens-lives

South Korea's spy camera epidemic has women fearful they are watched wherever they go - ABC News
https://www.abc.net.au/news/2021-06-17/spy-cam-sex-crimes-in-south-korea-leave-women-fearful/100214532

Online sex crimes crisis in South Korea affecting all women, report finds | South Korea | The Guardian
https://www.theguardian.com/world/2021/jun/16/online-sex-crimes-crisis-in-south-korea-affecting-all-women-report-finds

韓国では以前から隠しカメラによる盗撮被害が社会問題となっており、違法な盗撮映像が多数公開されるポルノサイトがあるほか、ライブ配信で盗撮映像を公開する犯人もいるとのこと。そのため、用心深い女性が公共施設を利用する際には、隠しカメラのチェックを行うことが報じられています。

盗撮先進国の韓国では公共施設利用時に隠しカメラのチェックが欠かせない - GIGAZINE


人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチは、韓国におけるデジタル性犯罪の実態についての調査を行い、2021年6月16日にレポートを発表しました。デジタル性犯罪とは、隠しカメラなどを用いて被害者の同意なしに撮影されたり、無断で大勢に共有されたり、時には偽造されたりするデジタル画像または映像が関与する犯罪のことです。韓国では女性の性的画像がオンラインで共有・拡散される被害が相次いでおり、被害者の人生に深刻な悪影響を及ぼしたり、自殺に追い込んだりする事例が後を絶ちません。

韓国犯罪研究所のデータによると、2008年には隠し撮りに関連する起訴件数は585件であり、起訴された性犯罪全体に占める割合は4%未満でした。ところが、2017年には起訴件数が6615件と実に11倍に増えたほか、起訴された性犯罪に占める割合も20%に達しました。犯行に利用された隠しカメラはトイレや更衣室、ホテルなどに設置されたものが多く、中には映像や画像を販売してお金を稼ぐ犯罪者もいるとのこと。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査では、デジタル性犯罪の被害を受けた38人の女性へインタビューを行ったほか、その他の被害者に対するオンラインインタビューを実施しました。調査を率いたヘザー・バー氏は、「韓国ではデジタル性犯罪が非常に一般的になり、恐れられているため、あらゆる女性と少女の生活の質に影響を及ぼしています」とコメントしています。


インタビューを受けたチョイ・ジウン(仮名)という女性は2018年の深夜に警察官の訪問を受け、「ある男が2週間にわたり、近くの建物から窓越しに部屋を盗撮していた」と知らされたとのこと。警察が令状を取得して男の電子機器を調査したところ、同様の被害にあった女性は7人も存在したことが判明。また、男は数年前にも同様の罪で起訴されていたそうですが、執行猶予付きの判決を受けていたそうです。

別の匿名を希望した女性は、大学生の頃にパートタイムでヌードモデルの仕事をしていましたが、上司が露骨に性的な画像を要求してきたことで仕事を辞めました。すると、「モデルの最中に撮影した写真は公開されない」という契約だったにもかかわらず、700以上もの画像がウェブサイト上で公開されてしまったとのこと。女性は警察に助けを求めたものの、その後も女性の画像は引き続きオンライン上で見つかるそうで、自殺まで考えたと述べています。


また、イ・イェリン(仮名)という女性はある日、既婚の上司から置き時計を贈られました。当時は上司が自分にロマンチックな交際を求めているとは気付かなかったものの、やがて上司の行動がエスカレートしたことで好意を向けられていると気付き、はっきりと拒絶したとのこと。しばらく経過した頃、上司が「受け入れる気がないなら時計を受け取るべきではなかった」と語ったため贈られた時計を調べたところ、なんと隠しカメラ付きだったことが発覚。なんと上司は1カ月以上にわたりイェリンさんの部屋を盗撮し、スマートフォンに送信した映像を見ていたそうです。

「私は一晩中泣きました。眠れなかったので、私は自分を落ち着かせるために薬を服用しなければなりませんでした」とイェリンさんは述べており、事件から1年が経過してもまだ不眠に悩まされているとのこと。上司は盗撮で有罪となって懲役7カ月の刑が下されましたが、イェリンさんは「盗撮されていた時は寝室で何をしていたのか」といった警察官による取り調べや、審理や判決がいつ行われるのかが不透明だったことが苦痛であったと述べています。

上記の例以外にも、「ボーイフレンドのスマートフォンに女性の盗撮画像があったので警察に相談したものの、弁護士にも取り合ってもらえず、元ボーイフレンドが『名誉毀損(きそん)やスマートフォンやクラウドストレージへの不正アクセスで訴える』と脅してきた」という事例や、「チャットサイトで知り合った相手に『すぐ削除する』という約束で性的な画像を送ったら、断りもなくチャットグループで共有されてしまった」といった事例が報告されています。


ヒューマン・ライツ・ウォッチによると、韓国ではジェンダーの不平等が定着していることもあり、デジタル性犯罪の被害を受けた女性が刑事・民事訴訟を起こすことが困難だとのこと。警察はしばしば被害者の苦情を受け入れることを拒否するそうで、受け入れたとしても画像を無神経に扱ったり被害者の落ち度を非難したりする場合があるそうです。

2019年には、韓国の検察に送検されたデジタル性犯罪の43.5%が不起訴となっており、これは殺人事件の27.7%や強盗事件の19%と比較して明らかに高い数値です。また、裁判所が犯人に下す刑罰も軽いものが多く、2020年には同意なしに性的な姿を盗撮して有罪判決を受けた犯人のうち、79%に執行猶予や罰金という軽い罰が下されています。司法制度における問題は、女性警察官や検察官、裁判官の不足によって悪化しているとヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘しました。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア部門主任研究者であるリナ・ユン氏は、「デジタル性犯罪は韓国の女性と少女についてとって緊急の危機です」とコメント。女性の人生に壊滅的な影響を及ぼす一方、警察は物理的な接触がないことで事件を軽視しており、デジタル性犯罪の本当の恐ろしさを理解していないと非難しています。

バー氏はデジタル性犯罪の恐ろしさについて、「これらの合意に基づかない画像を1枚でも見たことがある人なら、スクリーンショットを撮影することが可能です。そして、スクリーンショットをどのウェブサイトでも共有できるため、制御不能に拡散してしまう可能性があります」と述べ、被害者が生涯にわたり犯罪の影響を受け続けてしまうと指摘。韓国政府はデジタル性犯罪を防止するため、より多くの努力を注ぐべきだと主張しました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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