WHOが「長時間労働が年間74万5000人を殺している」と発表
長時間労働は日本を代表する社会問題の1つで、「過労死(karoshi)」という単語は英語でも定着しています。近年は海外でも過労死が問題となっており、2021年5月には世界保健機関(WHO)が「長時間労働が年間74万5000人を殺している」と発表しました。
Global, regional, and national burdens of ischemic heart disease and stroke attributable to exposure to long working hours for 194 countries, 2000–2016: A systematic analysis from the WHO/ILO Joint Estimates of the Work-related Burden of Disease and Injury - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0160412021002208
Long working hours increasing deaths from heart disease and stroke: WHO, ILO
https://www.who.int/news/item/17-05-2021-long-working-hours-increasing-deaths-from-heart-disease-and-stroke-who-ilo
Long working hours kill 745,000 people a year, WHO/ILO study finds
https://www.cnbc.com/2021/05/17/long-working-hours-kill-745000-people-a-year-who/ilo-study-finds.html
Long working hours killing hundreds of thousands of people a year, WHO says - CNN
https://us.cnn.com/2021/05/17/success/who-long-hours-intl-scli-wellness/index.html
新たにWHOが国際労働機関(ILO)と合同で発表したのは、長時間労働(週あたり55時間以上)によって生じた脳卒中や心臓病に関する調査。WHOとILOは累計76万8000人以上の被験者が参加した虚血性心疾患に関する研究37件と83万9000人以上の被験者が参加した脳卒中に関する研究22件を分析し、長時間労働に晒されていると考えられる人数と長時間労働が脳卒中や心臓病を生み出すリスクを算定。その結果、「2000年から2016年にかけて長時間労働による心臓病に起因する死者は42%、脳卒中に起因する死者は19%増加した。2016年には4億8800万人が長時間労働を続け、この長時間労働によって70万5786~78万4601人が脳卒中や心臓病で死亡した」と推定されました。
2016年に長時間労働を続けた4億8800万人について、年齢層・性別ごとに可視化したグラフが以下。青色のグラフが男性、オレンジ色のグラフが女性を指しており、横軸は年齢、縦軸は人数となっています。長時間労働を行うのは性別的には男性が多く、年齢層的には30~34歳頃がピークだということが視覚的に把握できます。
国別に見ると、アフリカやアジア全域で長時間労働者が多いことがわかります。反面、ヨーロッパや北部アメリカ、オーストラリアなどでは長時間労働はあまり横行していない様子。
長時間労働によって命を奪われた人のグラフが以下。先ほど同様、青色のグラフが男性、オレンジ色のグラフが女性、横軸が年齢、縦軸が人数を指しており、左側が虚血性心疾患、右側が脳卒中のグラフです。男性がより多いという傾向は先ほどの長時間労働者に関するグラフと共通していますが、こちらは60~64歳の年齢層がピーク。いわゆる「定年」前後が長時間労働で亡くなりやすい時期だということが示唆されています。
WHOによると、長時間労働は増加傾向にあり、2021年時点では世界総人口の9%を占めているとのこと。WHOの環境・気候変動・健康局長のマリア・ネイラ博士は「週に55時間以上働くというのは深刻な健康被害を生み出します」と述べ、「政府・雇用主・労働者の誰もが『長時間労働は早死につながる』という事実に目を向けるときが来たのです」と語りました。
WHOは政府・雇用主・労働者に対する勧告として、「政府は強制的な残業を禁止し、労働時間の上限を確保する法律・規制・政策を導入することができる」「雇用者と労働者の二者間協議や雇用者と労働組合の団体交渉協定によって労働時間の上限を定めたり、フレキシブルな労働時間を導入したりできる」「労働者間で労働時間を均一化することで『週55時間以上』という制限に抵触しないようにできる」と記しています。
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