子どもの「デジタル依存」を防ぐ方法はあるのか?
現代では大多数の人々がスマートフォンなどのデジタル機器を所持しており、「デジタル機器依存症」という人も少なくありません。低年齢におけるデジタル機器所有率の増加とそれに伴う依存症の問題について、オーストラリアのニューサウスウェールズ大学で教育政策学について教えるパシ・サールバーグ教授らが解説しています。
Children own around 3 digital devices on average, and few can spend a day without them
https://theconversation.com/children-own-around-3-digital-devices-on-average-and-few-can-spend-a-day-without-them-159546
2020年のパンデミック中における子どものデジタル機器使用の実態について調べた「Growing Up Digital Australia」というアンケート調査では、5~17歳の子どもたち約5000人のうち80%以上がスマートフォンなどのディスプレイ付きのデバイスを有しており、平均すると「1人あたり3台」という所有台数に達していたことが判明しています。
このような現況について、83%の保護者が「自分の子どもはデジタル機器に気を取られすぎている」と、54%の保護者が「自分の子どもはデジタル機器なしで丸1日過ごすことはできないだろう」と答えており、子どものデジタル機器の使用率増加に伴って、子どもの「デジタル依存」を懸念する声が強まっています。
「Growing Up Digital Australia」によると、教え子がデジタルメディアやデジタルテクノロジーに気を取られている様子を目撃した経験があるオーストラリア人教師は83%に達しており、学校生活について問題を抱える子どもの約60%が「ベッドの中で好きなだけデジタル機器を使っていい」と保護者からの許可を受けていることがわかっています。さらに「低所得層ほどデジタル機器を使いつつ寝る子どもの比率が多い」という結果も得られています。
フィンランドの教育文化省の長官を務めた経歴を持つサールバーグ教授によると、保護者の半数以上が子どもに自分の面倒を自分で見るようにさせるためのベビーシッター代わりとしてデジタル機器を使用しており、デジタル機器の利用目的について「学習支援」を一番に挙げた保護者はわずか20%ほどとのこと。こうした問題に対し、保護者の65%が「子どものデジタル機器の使用に制限を設けるかどうかについて、パートナーと意見が一致していない」と回答しており、65%が「もし使用に制限を設けようとしたならば、家庭内紛争が勃発するだろう」と回答しています。
サールバーグ教授は「解決するのが簡単な問題ではありません」と述べつつ、問題解決に向けて誰にでも実践できるような、以下の3種の手法を最初に試すべきだと語りました。
・1:iPhoneならば「スクリーンタイム」、Androidならば「Digital Wellbeing」といったスマートフォンの使用時間を可視化するアプリのデータを家族全員で正直な気持ちで見つめて、ひとりひとりがデジタル機器の利用時間を減らすための具体的な行動に取り組むようにする。
・2:就寝時間の少なくとも2時間前からディスプレイを見ないようにする。スマートフォンなどのモバイル機器は寝室に持ち込まないように心がける。
・3:デジタル機器を使う時間と家族で過ごす時間のバランスを考える。週末や休日はできる限りデジタル機器を使わないようにする。
サールバーグ教授は「Growing Up Digital Australia」で得られた調査結果について、「ほとんどの保護者が子どもにデジタルメディアやテクノロジーと健康的に関われるようにさせるためには支援が必要だと感じている」と回答した点に触れて、「学校と緊密に連携することが大きな助けになる可能性があります」とコメントしています。
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