サイエンス

インドの新型コロナ患者の間で感染が増加している「ムコール症」とは?


新型コロナウイルスの新規感染者数が1日当たり36万人以上も確認されているインドでは、一部の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者が「ムコール症」と呼ばれる感染症を併発していることが明らかになっています。

Potentially fatal 'black fungus' infections on the rise in India's COVID-19 patients | Live Science
https://www.livescience.com/black-fungus-infection-coronavirus-india.html

In the midst of the COVID pandemic, India is battling a surge of mucormycosis, or 'black fungus' - ABC News
https://www.abc.net.au/news/health/2021-05-10/covid-19-explainer-india-black-fungus-mucormycosis/100127850

ムコール症は、葉っぱや木材などの有機物を腐敗させるムコール菌と呼ばれる真菌によって引き起こされる感染症です。インドのムンバイを拠点とする眼科外科医であるアクシャイ・ネア氏によると、「ムコール菌は至る所に存在しており、土壌や空気、健康な人の鼻や粘液にも存在します」とのことです。

ムコール菌は、皮膚の切り傷やその他の擦り傷、あるいは空気中から体内に侵入し、副鼻腔や肺に定着します。体内に侵入したムコール菌は血流を介して広がり、脳・目・脾臓・心臓といった臓器に影響を与える可能性があります。


アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によると、一般的にムコール症は糖尿病などの免疫活動を抑制する薬を服用している「免疫系が弱っている人」が感染する模様。インドでは多くの人々がCOVID-19に感染していますが、同時にムコール症も併発するケースが増加しているとのことです。

ムンバイにあるマハラシュトラ州では、COVID-19から回復した200人がムコール症に感染し、8人が死亡したと地元メディアが報じています。同じように首都のデリーやグジャラート州でもムコール症患者が増加しているため、州政府はムコール症を治療するために5000回分の抗真菌薬・アムホテリシンBを注文しているといわれています。

インドのCOVID-19タスクフォースで責任者を務めるVK・ポール氏は、記者会見の中で「一部の地域ではCOVID-19に感染した人、あるいはCOVID-19から回復した人がムコール症に苦しんでいると聞いていますが、多くの感染事例はありません」と語りました。


インドにおいてムコール症の感染者が増加している理由を、BBC Newsは「COVID-19患者にステロイドなどの免疫系を抑制する薬物を投与していることが理由かもしれない」と報じています。ネア氏は「糖尿病は体の免疫能力を低下させ、新型コロナウイルスはそれをさらに悪化させます。そして、COVID-19と戦うことを助けるステロイドは、火に対する燃料のように免疫系に作用します」と語り、ステロイドの服用により免疫能力が大きく低下すると指摘しました。

ネア氏は2021年4月にムコール症患者を数十人診察したそうで、その全員が糖尿病を患っていたそうです。なお、ムコール菌は目から脳に簡単に広がるため、ムコール症に感染した11人の患者が目を外科的に摘出しなければいけなくなったとも語っています。

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in サイエンス, Posted by logu_ii

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