チェスを学んだ子どもは「勝つためにリスクを負う」ことをためらわなくなる
チェスは論理的思考力が優れた人のためのゲームだと考えられてきましたが、論理的に考えるだけではなく、必要に応じてリスクを負うことも求められます。モナッシュ大学とディーキン大学の研究チームは、「子どもたちはチェスを学ぶことで、リスクを負うことへの嫌悪感を軽減できる」と報告しています。
The Effects of Chess Instruction on Academic and Non-cognitive Outcomes: Field Experimental Evidence from a Developing Country - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0304387820301905
Teaching children to play chess makes them more confident taking calculated risks
https://www.zmescience.com/science/teaching-children-to-play-chess-makes-them-more-confident-taking-calculated-risks/
仕事を辞めてやりたいことに挑戦したり、拒絶される可能性を承知した上で好きな人に告白したり、人生で価値のあることには、通常リスクが伴うもの。しかし、リスクを負うことが必ずしも正解ではなく、そのリスクと結果を比べて評価した上でリスクを負うべきかどうかを判断する能力が必要です。
チェスはあえて自分のコマを犠牲にしてより有利な戦略を展開することが求められるため、このリスクを評価する能力が求められる場面がよくあります。そこで研究者チームは、これまでチェスをしたことがない、イギリスの15歳から16歳の子ども400人を対象に、チェスを教えながら子どもたちの認知能力を評価する実験を行いました。
その結果、子どもたちはリスクを回避する頻度が減少したことがわかったとのこと。また、数学の成績が上昇し、論理的および合理的な思考スキルの向上が見られたそうです。また、チェスで学んだスキルは長続きするようで、研究終了後1年経っても、ほとんどの子どもたちのリスク評価能力は維持されていたとのこと。
研究チームは、チェスというゲームはあえてリスクを負うことで勝利に近づく場合があるため、子どもたちがリスクのある行動を取ることに自信を持つようになるのに適していると述べています。
一方で、子どもたちは無計画にリスクを負うことを避けることも学んでおり、リスクを意味なく負っても好ましい結果につながることはほとんどないことも理解していたとのこと。リスクがもたらす結果を評価する場面がチェスでは非常によく見られるため、チェスをプレイすればするほど、リスクを判断する技術が研ぎ澄まされていったそうです。
なお、「チェスを学ぶと知能が上がる」という現象は確認できず、数学以外の成績の向上や創造性の向上など、他の認知能力の変化を示す証拠は見られなかったと研究チームは報告しています。
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