【訃報】Adobe共同創業者でDTP革新に貢献したチャールズ・ゲシク氏死去
「全く新しいパブリッシングとグラフィックの制作の方法を実現することにより、人と情報との関係を革新したい」というビジョンを抱いて会社を設立したという、Adobeの共同創業者、チャールズ・ゲシク氏が、2021年4月16日(金)に亡くなりました。81歳でした。
Adobe - Adobe Co-Founder Dr. Geschke Passes at 81
https://news.adobe.com/news/news-details/2021/Adobe-Co-Founder-Dr.-Geschke-Passes-at-81/default.aspx
Dr. Charles M. Geschke
(PDFファイル)https://www.adobe.com/content/dam/cc/en/leaders/pdfs/geschke.pdf
アドビの共同創設者であるDr. チャック・ゲシキが亡くなりました。チャックは、テクノロジー業界において様々な業績を残してくれました。チャックと共に働けたことを誇りに思います。 pic.twitter.com/bhLBdrmMYC
— アドビ (@AdobeJapan) April 19, 2021
ゲシキ氏は1939年9月11日、オハイオ州クリーブランド生まれ。ザビエル大学で西洋古典学の学士号と数学の修士号を取得し、1963年から1968年まで、ジョンキャロル大学で数学を教えていました。
その後、同い年のウィリアム・ヴルフ氏から助言を受けて、1972年にカーネギーメロン大学のコンピューターサイエンス博士課程を終了し、1972年10月、ゼロックスのパロアルト研究所で働き始めます。ヴルフ氏はプログラミング言語「BLISS」の開発者で、1975年にゲシキ氏との共著「The Design of a Optimizing Compiler」を出しています。
ゲシキ氏はパロアルト研究所でメインフレームコンピューターの構築や、ワークステーション・Xerox Star構築用のツール開発などを手がけ、1978年にグラフィックスや光学、画像処理などの研究を行う「Imaging Sciences Laboratory(画像科学研究所)」を社内に設立しました。このとき、ゲシキ氏が雇い入れたのがジョン・ワーノック氏です。
2人は活字のように複雑な形態でも記述できるページ記述言語(PDL)・Interpressを開発しましたが、当時のXerox経営陣に商業的価値を認めさせることができなかったため、独立して自分たちの会社を作りました。これが「Adobe」です。
2人はInterpressを「Adobe Postscript」へと進化させました。それまで、グラフィックデザイナーは、実際に印刷するか、印刷プレビューを使わない限り、結果をテキストのみでしか見られませんでしたが、WYSIWYG(What You See Is What You Get:見たままのものが出力される)を実現。DTPに革新をもたらしました。
1986年12月からAdobeのCEOになったゲシキ氏は、1992年5月に会社の駐車場で銃を突きつけられて誘拐されるという事件に遭遇。4日後に無事解放され、1994年7月までCEOを勤め上げました。容疑者2人は逮捕され、終身刑を宣告されています。
Adobeの共同創業者であるワーノック氏は「こんなにも優れた、好感が持てる、有能なビジネスパートナーがいるなんて思いもしませんでした。チャックのいない人生は大穴が開いているようなものだということは、彼を知っている人なら同意してくれるでしょう」とコメント。
また、Adobeのシャンタヌ・ナラヤンCEOは、全社員宛のメールでワーノック氏と同様に「心に大きな穴が開いた」と表現。「ゲシク氏と知り合ってともに仕事ができたことを感謝する」と述べた上で、ゲシク氏が望んでいた「Adobe最高の日々」が待ち受けていることこそ慰めである旨を表明しています。
なお、姓の「Geschke」は日本では「ゲシュケ」とも書かれますが、Adobeのツイートや会社概要に従って「ゲシキ」表記としています。
会社概要 - Adobe Systems Incorporated(アドビ システムズ社)
(PDFファイル)https://www.adobe.com/jp/aboutadobe/pdfs/CorpOverview_J.pdf
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