空気中から動物のDNAを採取する実験が成功、到達困難な環境での調査に役立つ可能性も
人間を含む動物は髪の毛や皮膚片、体液といった形で自身のDNAを生活範囲に残しており、犯罪捜査でも現場に残されたDNAが利用されています。新たな概念実証の研究では、「空気中から動物のDNAを採取する」という実験に成功したと報告されており、特殊な環境に生息する動物の調査に役立つ可能性があるとのことです。
eDNAir: proof of concept that animal DNA can be collected from air sampling [PeerJ]
https://peerj.com/articles/11030/
Researchers can now collect and sequence DNA from the air | Live Science
https://www.livescience.com/dna-collected-air.html
人間やその他の動物が周辺環境に残すDNAは「environmental DNA(eDNA/環境DNA)」と呼ばれています。すでに、水中からeDNAを採取して周辺に生息する動物種を推測することは一般的ですが、空気中から動物のeDNAを採取しようとする研究者はいなかったとのこと。
そこで、ロンドン大学クイーン・メアリー校で上級講師を務めるエリザベス・クレア氏らの研究チームは、空気中からeDNAを採取する実験を行いました。クレア氏は、「私たちが知りたかったのは、陸生動物の存在を追跡するために空気中からeDNAをフィルタリングできるかどうかでした」と述べています。
クレア氏が空気中からeDNAを採取する実験について解説する様子は、以下のムービーで見ることができます。
eDNAir: proof of concept that animal DNA can be collected from air sampling - YouTube
環境中に残されたDNAのことを「eDNA」と呼び……
すでに水中のeDNAを採取することは一般的となっています。
また、雪や土壌からeDNAを採取するケースもありますが……
空気中からeDNAを採取する試みは行われてきませんでした。なお、空気中から植物のeDNAを採取する実験はすでに行われているそうですが、これは花粉や胞子などを空気中に放出する植物を対象としたものであり、花粉や胞子を出さない動物のeDNAが空気中から採取できるかどうかは不明だったそうです。
「私たちは、洞窟や巣穴に住んでおり簡単に見つけたり捕らえたりできない場所に住む動物種を調べる方法として、この『airDNA』を使用できるかどうかに興味を持っていました」とクレア氏は述べています。
研究チームはモデル生物であるハダカデバネズミが1年以上飼育されているケージと、ケージを収容する部屋からフィルター付きの掃除機で空気中のサンプルを収集。
フィルターに付着したDNAを抽出してDNA配列を調査し、データベース内にある動物のDNA配列と比較しました。
その結果、ハダカデバネズミのDNAとヒトのDNAがサンプル中から発見されたとのこと。ヒトのDNAが空気中から発見されたことは驚きだったそうですが、ハダカデバネズミの世話をするために研究者らが頻繁に部屋を出入りすることを考えれば理にかなっていると、クレア氏は科学系メディアのLive Scienceに語りました。
空気中からヒトDNAが採取されたことは検出精度の高さを示すものですが、同時にヒトが持ち込んだDNAによってサンプルが汚染されやすいことも示唆しています。
今回の研究結果は、調査が難しい洞窟や巣穴に住んでいる動物種の調査に役立つ可能性があるとのことです。
直接研究には関与していないテキサス工科大学のマシュー・バーンズ氏は、植物や動物の調査にeDNAを収集する試みは過去10年間で発達したと指摘。自分たちが使う手法についてバーンズ氏は、「犯罪現場に残されたタバコからDNAを採取して犯罪者を見つけ出す探偵のようなものです。犯罪者の代わりに希少種や不明な種を探すために、eDNAを用います」と述べています。
空気中から比較的大きな動物のeDNAが採取できるという今回の発見は、空気中のeDNA分析の可能性を劇的に拡大するとバーンズ氏は期待しています。また、空気中のeDNAを採取する手法は、対象となる動物にストレスを与えることなく調査を行う上で役立つ可能性があるとのこと。
クレア氏らの研究チームは記事作成時点で、空気中のeDNAが移動する距離やスペースの広さがeDNAの検出量にもたらす影響を調査しているそうです。バーンズ氏は今後の課題として、研究室ではなく屋外の空気中からeDNAを収集することが重要だと主張しました。
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