スエズ運河の状況確認サイト「Is that ship still stuck?」の作者が閲覧数・サイト作成方法・収益化について語る
2021年3月23日に、スエズ運河でコンテナ船「エバー・ギブン」が座礁する事故が発生しました。この事故を受けて作成されたのが、エバー・ギブンの現在地や座礁の状況を表示するウェブサービス「Is that ship still stuck?」です。この作者であるトム・ネイル氏が、「Is that ship still stuck?」の開発経緯や収益化について解説しています。
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ネイル氏が作成した「Is that ship still stuck?」は、「Is that ship still stuck?(船はまだ立ち往生中ですか?)」という問いに対して「Yes」か「No」で答えるシンプルなサイトです。実際に、「Is that ship still stuck?」がどんなサイトだったのかは、以下の記事で解説しています。
スエズ運河で立ち往生しているコンテナ船の状況をリアルタイムで把握可能なサイト「Is that ship still stuck?」が登場 - GIGAZINE
◆閲覧数
ネイル氏によると、「Is that ship still stuck?」は5日間で約5000万回アクセスされ、ピーク時には1秒間に8404件のアクセスを記録したとのこと。また、Googleで「船はまだ立ち往生中ですか?(is the ship still stuck)」と検索すると、最上部に表示されるようになっていました。
ネイル氏は2011年からTwitterを利用していますがフォロワーは208人しかおらず、その大部分がボットか、既にTwitterを利用していない人のアカウントでした。しかし、「Is that ship still stuck?」の公開直後からフォロワー数が増加し、記事作成時点では、3000人以上にフォローされています。また、トム氏のツイートは、以前は月間1万5000人にしか閲覧されていませんでしたが、「Is that ship still stuck?」の公開後は100万回以上閲覧されたとのことです。
◆サイト作成
ネイル氏は、スエズ運河の座礁に関するニュースを知った後、Googleで「Is the ship still stuck?」と検索しました。しかし、検索結果からは、座礁の有無を容易に判断できなかったとのこと。そこで、ネイル氏は「Is the ship still stuck?」と検索する他の人々のために、サイトを作成することにしました。
サイトの作成には、ウェブフレームワークの「Next.js」が用いられました。ネイル氏はNext.jsを用いた理由について、「Next.jsは複雑なサイトの構築に用いるフレームワークです。今回作成したサイトは複雑なモノではありません。しかし、私はNext.jsを使い慣れているので、今回もNext.jsを用いてサイトを作成しました」と説明しています。
また、ネイル氏はニューヨーク・タイムズが提供するAPI「Article Search」を利用して、エバー・ギブンに関する新しい情報が公開される度に「Is that ship still stuck?」を更新できるようにしました。
公開当初の「Is that ship still stuck?」は非常にシンプルなデザインで、「Yes」と表示するだけのサイトだったとのこと。しかし、ネイル氏へ「船舶の位置」「座礁してからの経過時間」「推測される経済的損失」といった情報を表示するよう求められ、リクエストに応じて機能が拡充されていくこととなります。ネイル氏は、これらの機能は約20分程で実装できたと述べています。
◆収益化
ネイル氏は、「広告が好きじゃない」「シンプルなサイトにクッキーの許可設定を表示させたくない」「広告の承認に時間がかかる」といった理由から、広告による収益化は考えていなかったとのこと。広告を表示する代わりに、「Is that ship still stuck?」のNFTを販売することにしました。
ネイル氏はNFT取引サービスとして「OpenSea」を利用しました。「Is that ship still stuck?」のNFTは0.1192イーサリアム(約2万5000円)で売れたものの、さまざまな手数料が合計140ドル(約1万5000円)以上かかったとのこと。
「Is that ship still stuck?」のNFTは、「OpenSeaで最も閲覧されたNFTの上位8件」にランクインしていたとのこと。それでも約2万5000円しか手に入らなかったことから、ネイル氏は「OpenSeaでは1700万点以上の商品が販売されています。しかし、自分のアートを売ろうと考えている人が成功する可能性は低いでしょう」と述べています。
また、ネイル氏は別の収益化手段として、Amazonアフィリエイトを利用したとのこと。その結果、3日間で279ドル(約3万円)の収益を得ることに成功します。ネイル氏は「3日間で270万回アクセスされたことを考えると、約3万円は少ない金額に思えます。しかし、アフィリエイトに用いる商品を選ぶのは面白い経験でした」と語っています。
◆エバー・ギブンの離礁
イギリス時間の2021年3月29日午前4時30分に、「コンテナ船が陸を離れた」という情報がネイル氏の元に入りました。しかし、ネイル氏が船舶の位置情報公開サービス「VesselFinder」を確認したところ、エバー・ギブンの位置は変わっていなかったとのこと。そのため、ネイル氏は「Is that ship still stuck?」の情報を「多少?(Sort of?)」に変更しました。
その後、エバー・ギブンの離礁に関するさまざまな情報が公開され、何が正しい情報か分からない状況が続きました。ネイル氏は「興味深い事に、『Is that ship still stuck?』の情報を『専門的な情報源』として信じる人が多くいました」と述べています。
なお。ネイル氏は「Is that ship still stuck?」を公開して最もうれしかった出来事として、アメリカの女優サラ・ジェシカ・パーカー氏にフォローされたことを挙げています。
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