「北斎のマグカップ」「モナリザのパーカー」「ゴッホのスノボ」など美術館でグッズを売るための工夫とは?
美術館の展示を見に行くと、展示の最後に販売店が設けられており、展示されていた絵や彫刻の複製や画集のほか、展示品をあしらったクリアファイルやマグネットなど、さまざまなグッズが販売されています。そんなグッズにはどういう意味があり、どのような工夫で売られているのかについて、海外メディアのVoxがムービーで解説しています。
How museum gift shops decide what to sell - YouTube
日本の浮世絵は海外でも非常に人気が高く、特に葛飾北斎はマネやゴッホなどの西洋画家にも大きな影響を与えたことで知られています。
ニューヨークにあるメトロポリタン美術館には、「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」が展示されており……
売店には神奈川沖浪裏をあしらったグッズが大量に販売されています。
財布
ポーチ
マグネット
ワッペン
携帯ボトル
神奈川沖浪裏グッズはオンラインで通信販売もされており、マグカップから腕時計まで実に多種多様。ただし、どのグッズも凝ったデザインではなく、神奈川沖浪裏をプリントしただけというシンプルなものがほとんどです。
メトロポリタン美術館の売り場があるのは出口のすぐ側で、観覧ルートの最後となっています。
「販売店は、博物館を財政的に支援するために存在します。私たちの仕事は、展示されている芸術作品に基づいたアイテムをそろえることです」と語るのは、メトロポリタン美術館内の販売店でデザイン&製品開発部のトップを務めるリンネ・グレフ氏。
人間は何度も同じものに触れると、対象に対する好意度が高まって印象が強くなる「単純接触効果」と呼ばれる心理効果が働きます。この単純接触効果が美術館の販売店でグッズを売るために重要だとグレフ氏は述べました。
販売店で同じ作品がモチーフとなったアイテムを複数見ると、客はそのモチーフが気になってしまい……
ついついマグカップに手をのばしてしまうというわけです。
こうした工夫で伸びる販売店の売上をあなどることはできません。資料によれば、美術館の収益のうち、グッズの売上は5~25%だとのこと。
サンフランシスコ近代美術館では、販売店のグッズだけで610万ドル(約6億3000万円)の売上があり、サンフランシスコ近代美術館の総売上のおよそ7%を占めるそうです。
グッズの売上が美術館の財政には欠かせないため、各美術館はグッズ開発に特に力を入れています。フランスにあるルーブル美術館では、モナリザをかたどったアヒルちゃんやパーカーが販売されているほか……
ゴッホの自画像が大きく描かれたスノーボードも販売されています。
ゴッホの作品は世界各地でも展示会が行われ、その度にゴッホグッズも各美術館で扱われます。
一方で、フィラデルフィア美術館の販売店で店長を務めるクリスティーン・ドゥービニン氏は「美術館は本来芸術作品を見る場所であり、経済的に欠かせないとしてもグッズ販売に依存したくない部分もあります」と語ります。
重要なのは「グッズを売ろうとする」ことよりも「美術館の中でさまざまな絵画や彫刻を見て、ルートの先を進み、店に着いたときに客が何を考えているかに応える」こと。
美術館を見た観客は頭の中で「美術館で見たお気に入りの作品を家に持って帰りたい」と考えています。
マグカップにただ絵をプリントしただけのグッズは、一見するとあまりにもシンプルすぎるように思えますが、実際は美術館を一通り堪能した観客の需要に応えたデザインだといえるわけです。
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