インターネット上のあらゆるサービスを稼働させ続ける運用保守エンジニアをねぎらうハッシュタグ「#hugops」とは?
GoogleやTwitterなどにシステム障害が発生したときに運用保守エンジニアへの文句を並べ立てる人は大勢いますが、復旧したときに運用保守エンジニアをねぎらう人は限られています。こうした現状を打破するために作成された運用保守エンジニアをねぎらうためのハッシュタグ「#hugops」の経緯について、IT系ニュースサイトのProtocolが解説しています。
#hugops hope to spread empathy in tech - Protocol — The people, power and politics of tech
https://www.protocol.com/enterprise/oral-history-hugops
サーバーやネットワークが障害などで停止しないように管理・メンテナンスを行っているのは、運用保守エンジニアと呼ばれる人々です。GoogleやTwitterなどのサービスを毎日使えているのは運用保守エンジニアの活躍に他なりませんが、その活躍が日の目を見ることはほぼないという状況が続いています。
「hugops」はhug(抱擁する)とops(operations:運用する)を組み合わせたかばん語で、Slackなどのサービスに大規模障害が生じた際に必死で業務に取り組んでいる運用保守エンジニアをねぎらうという、エンジニアのみに通じる業界用語の一種です。Slackなどのサービスに障害が発生すると「サービスが落ちたせいで当社はこんなに不利益を受けました」という投稿がSNS上にあふれかえり、サービスを復旧させるべく頑張っている運用保守エンジニアに対する不平不満しか見られないという現状を打破するための合言葉として使われています。
Protocolによると、hugopsの起源はフォーチュン500に名を連ねる企業のシステム運用保守に関するノウハウを共有するカンファレンス「O'Reilly Velocity Conference」にあるとのこと。Velocity Conferenceのコミュニティは、開発(Development)と運用(Operations)を組み合わせた「DevOps」というかばん語を生み出したことでも有名です。DevOpsはソフトウェアを迅速にビルドおよびテストする文化と環境により、確実なリリースを、以前よりも迅速に高い頻繁で可能とする組織体制の構築を目指すための標語として用いられます。
hugopsもDevOpsから派生した単語ですが、派生したきっかけは構成管理ツールChefの共同設立者であるアダム・ジェイコブ氏の茶目っ気にあったとのこと。Velocity Conferenceで出会った運用保守エンジニアをハグして回っていたというジェイコブ氏は、自身が行った基調講演の中で直前に登壇していたFastlyの創業者であるアーサー・バーグマン氏について「彼を見かけたらハグしてあげてね」と語りました。そのおかげでハグが苦手なバーグマン氏はカンファレンス中に出会った人々にわけもわからないまま何度も抱きしめられ、カンファレンスが終了後に理由を知らされるまで目立たないように身を隠していたそうです。
もちろんこれはイタズラの一種でしたが、ジェイコブ氏はこのイタズラについて「非常に特別な仲間意識や本当に密接な親近感がありました」と語ります。こうして親愛の情を示す「Hug(ハグ)」という単語が日頃顧みられることのないOps(運用)と結合し、hugopsというムーブメントになったとProtocolは解説。ソフトウェアやサービス、新機能は誕生するときには盛大に祝われるものの、「継続して利用可能である」という点には誰も感謝を捧げていないと指摘し、Amazonのワーナー・ヴォゲルスCTOやGoogleの開発者関係マネージャーのジェニファー・デイビス氏らの「このような文化は次世代に引き継ぐべきではない」という意見を報じています。
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