「グランド・セフト・オート」をリバースエンジニアリングで再現するプロジェクトが著作権侵害で公開停止

車両を盗んで走り回るなどの犯罪を中心にした内容が特徴の超人気ゲームシリーズ「グランド・セフト・オート(GTA)」シリーズの「3」と「バイスシティ」をリバースエンジニアリングによって再現する再現するプロジェクトが、著作権を直接侵害するようなファイルを含んでいないにもかかわらず、著作権侵害の疑いで公開停止となりました。

Vice City & Grand Theft Auto III's Source Code Has Been Reverse-Engineered
https://kotaku.com/vice-city-grand-theft-auto-iiis-source-code-has-been-1846276050

Take-Two DMCA takes down reverse-engineered GTA source code | Ars Technica
https://arstechnica.com/gaming/2021/02/take-two-dmca-takes-down-reverse-engineered-gta-source-code/

「グランド・セフトー・オート3(GTA3)」と「グランド・セフトー・オート・バイスシティ(GTAVC)」をリバースエンジニアリングによって再現するというオープンソースプロジェクトが、「re3」「reVC」です。自らGTA狂信者を名乗る有志一同が熱意を持って取り組んだという両プロジェクトは、元となったゲームの再現だけでなく、バグの修正や、デバッグメニューとカメラモードの追加、コントローラーの互換機能、ローディングの削減などを追加したという「独自改善版」でした。

re3 and reVC Showcase - YouTube


「re3」「reVC」は著作権侵害を回避するため、画像ファイルや音楽ファイルなどの著作権法によって保護されているコンテンツについては元のゲームからコピーして挿入する必要がありました。しかし、2020年2月20日、GitHub上の同プロジェクトに「著作権保有者からデジタルミレニアム著作権法(DMCA)を侵害している」という通知が届くこととなりました。

dmca/2021-02-19-take-two.md at master · github/dmca · GitHub
https://github.com/github/dmca/blob/master/2021/02/2021-02-19-take-two.md

「コンパイルされたバイナリからソースコードをリバースエンジニアリングする」という試みは、アメリカでは研究や相互運用性検証、特定の公正利用においては合法だという判例が存在します。しかし、GTAのエンドユーザー使用許諾契約書においては「ソフトウェアの全部または一部について、リバースエンジニアリング・逆コンパイル・逆アセンブル・派生物の作成・その他改変を禁じる」という点が明記されている上、BlizzardのBattle.netをリバースエンジニアリングするというプロジェクトに対して削除を命じる判決が2005年に下されたという先例が存在します。

両プロジェクトの代表であるaap氏によると、パブリッシャーのTake-Two Interactive Softwareは同プロジェクトが2020年9月に注目を集めた際にはノーリアクションであった上に、著作権問題に対して積極的な姿勢をみせることで知られる任天堂がマリオ64のリバースエンジニアリングプロジェクトに対して何のアクションを取っていないことも、「ゲームパブリッシャーはこの種のプロジェクトを見逃してくれる」という感覚につながっていたとのこと。

aap氏はGitHubに対して行われたDMCA侵害申請が悪質なイタズラであるという可能性に触れつつ、確認のためにTake-Two Interactive Softwareに連絡を取ると訴訟の引き金になりかねないと述べて「ヤブをつついて蛇を出しかねない状況」だと説明。同氏は2021年1月に「PlayStation Portable専用ゲームである『グランド・セフト・オート・リバティーシティ・ストーリーズ』をリバースエンジニアリングによってPC移植する」というプロジェクト「reLCS」を始動させていましたが、その未来にはいまや暗雲が立ちこめているといえます。